租税争訟レポート
【第74回】
「所得税等の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分取消請求事件~裁判上の和解に基づき支払いを受けた金員の非課税所得該当性
(国税不服審判所令和4年12月13日裁決)」
税理士・公認不正検査士(CFE)
米澤 勝
【裁決の概要】
国税不服審判所令和4年12月13日裁決(広裁(所)令4-6)
所得税等の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分取消請求事件
TAINSコード:F0-1-1581
[審査請求人]
A社を解雇された従業員
[原処分]
所得税等更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分
[争点]
(1) 本件金員は、所得税法第9条第1項第17号(現行法では第18号)に規定する非課税所得に該当するか否か〔争点1〕。
(2) 本件更正請求には、国税通則法第23条第1項第3号の規定に該当する事由があるか否か〔争点2〕。
[裁決]
棄却
【事案の概要】
審査請求人(以下「請求人」という)は、平成29年3月1日、A社に雇用されたが、同年8月16日付の解雇予告通知書により、同年9月15日付でA社を解雇(本件解雇)された。
請求人は、平成29年11月23日、A社を被告として、裁判所に対し、本件解雇が無効であるとして雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認請求(地位確認請求)、賃金支払請求及び本件解雇によって請求人が精神的苦痛を被ったことを理由に慰謝料として不法行為に基づく損害賠償請求に係る訴訟(第一審訴訟)を提起した。
第一審裁判所は、令和元年5月23日、地位確認請求及び賃金支払等請求を認容し、損害賠償等請求を棄却する旨の判決(第一審判決)をした。
A社は、令和元年5月28日、控訴審裁判所に対し、第一審判決で地位確認請求及び賃金支払等請求を認容した部分の取消し等を求めて、控訴した(控訴審訴訟)。
控訴審訴訟において、令和元年10月4日、裁判上の和解が成立し、同日付和解調書が作成された。和解調書の和解条項の要旨は、下記のとおりである。
- A社は、請求人に対し、本件解雇の意思表示を撤回する。
- A社及び請求人は、令和元年10月4日、A社と請求人との間の労働契約を合意解除する。
- A社は、請求人に対し、これまでの未払賃金を含めた解決金として、10,000,000円の支払義務があることを認める。
- 請求人はその余の請求を放棄する。
- A社及び請求人は、A社と請求人との間には、本件和解条項に定めるもののほかに、何らの債権債務がないことを相互に確認する。
A社は、請求人に係る令和元年分の給与所得について、源泉徴収票を作成し、請求人に交付した。源泉徴収票の給与の支払金額には、令和元年分の未払賃金の額に、A社が負担したとする未払賃金に係る源泉徴収税額及び社会保険料の合計金額を賞与として加算した金額が記入されている。
原処分庁は、令和3年10月20日付で、原処分庁所属の職員の調査に基づき、請求人の令和元年分の所得税等について、解決金10,000,000円から、本件解雇の日の翌日から労働契約解除の日までの間の未払賃金の額5,541,532円を控除した残額4,458,468円のうち、その一部の額(本件一部額)が当該未払賃金に係る年6分の割合による遅延損害金としての金員であり、本件金員と本件一部額との差額(本件差額)が本件解雇を巡る紛争を解決するための性質を有する金員であるとして、本件一部額が雑所得に、本件差額が一時所得に該当するとして、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を行った。
本件は、請求人が勤務先であったA社から裁判上の和解に基づき支払を受けた金員について、原処分庁が、当該金員のうち未払賃金相当額以外の金員につき、未払賃金に対する遅延損害金に相当する金員は雑所得に、残余の金員は一時所得に該当するとして所得税等の更正処分等を行ったのに対し、請求人が、未払賃金相当額以外の金員は非課税所得である旨主張して、その一部の取消しを求めた事案である。
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