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被災したクライアント企業への
実務支援のポイント
〔法務面のアドバイス〕
【第1回】
「災害に関する主な法律」
弁護士 岨中 良太
わが国では災害時において、非常時の対応を行うために、様々な法律が制定されている。
法務面のアドバイスにおける【第1回】は、それらのうち主要なものについて、その概要を紹介したい。
1 災害対策基本法
災害対策基本法は、我が国の災害対策関係法律の一般法である。
災害対策基本法は、防災に関する責務の明確化、総合的防災行政・計画的防災行政の整備、災害対策の推進、激甚災害に対処する財政援助等、災害緊急事態に対する措置等の災害対策に関する基本的事項を定めている。
▷「罹災証明書」とは
災害対策基本法90条の2が規定する証明書であり、住家の被害その他市町村長が定める種類の被害の状況を調査し、当該災害による被害の程度が証明される。
罹災証明書においては、住家の被害が「全壊」「大規模半壊」「半壊」「一部損壊」「床上浸水」「床下浸水」等に区分され、それぞれの被害に応じて各種の公的支援を受けることができる。
また、中小企業者等に関しては、罹災証明書を提出することにより災害に関する公的機関及び民間の融資等を受けることができる。
罹災証明書と似た書類として「被災証明書」があるが、被災証明書は被災した事実そのものを証明するものであり、被害の程度まで証明するものではなく、発行していない自治体も存在する。
2 激甚災害法(激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律)
激甚災害法は、激甚災害が発生した場合に地方公共団体及び被災者に対する復興支援のために国が通常を超える特別の財政援助や助成措置を行うことを定めている。
国によって激甚災害に指定されると、特別措置として、道路、河川、被災者住宅等の復旧・建設事業や農地等の復旧事業への財政援助、中小企業者等に対する融資等が行われることになる。
3 特定非常災害特別措置法(特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律)
特定非常災害特別措置法は、特定非常災害が発生した場合に比較的定型的に立法措置が必要となることが予想される特別措置について、あらかじめ制度化している。
国によって特定非常災害に指定されると、避難等のために運転免許証の更新等ができない被災者が特別措置により救済される。
具体的には、次に掲げるもののうち、政令によって指定された措置が適用されることになる。
① 行政上の権利利益に係る満了日の延長
② 期限内に履行されなかった義務に関する免責
③ 債務超過を理由とする法人の破産手続開始の決定の特例
④ 民事調停法による調停の申立ての手数料の特例
⑤ 建築基準法による応急仮設住宅の存続期間の特例
⑥ 景観法による応急仮設住宅の存続期間の特例
4 大規模災害復興法(大規模災害からの復興に関する法律)
大規模災害復興法は、特定大規模災害が発生した場合に国と地方公共団体とが適切な役割分担の下に被災地域における生活の再建及び経済の復興を図ることを基本理念として制定された。
国によって特定大規模災害に指定されると、内閣総理大臣を本部長とする復興対策本部を置くことができるほか、政府に復興基本方針の策定を義務付け、道路か先頭の災害復旧事業について国が地方公共団体を代行することができることになる。
5 「激甚災害」「特定非常災害」「特定大規模災害」の違い
上記で紹介した「激甚災害」「特定非常災害」「特定大規模災害」は、いずれも発生した災害について国が指定する点は共通しているが、指定の目的はそれぞれが根拠とする法律の目的により異なっているため、定義や指定基準は次のとおり異なる。
「激甚災害」指定の目的は、復興支援のために国が通常を超える財政援助や助成措置を行うというものであり、①全国的に大きな被害をもたらした場合(本激)と②局地的に多額の復旧費用が必要となった場合(局激)とがある。いずれも災害復旧事業費による指定基準が設けられている。
「特定非常災害」指定の目的は、避難等のために行政手続等をとることができない被災者を救済するというものであり、「著しく異常かつ激甚な非常災害」と定義されている。具体的には①死者・行方不明者、負傷者、避難者等の多数発生、②住宅の倒壊等の多数発生、③交通やライフラインの広範囲にわたる途絶、④地域全体の日常業務や業務環境の破壊、といった要因が総合的に勘案される。
「特定大規模災害」指定の目的は、自治体単独で対応できない大規模な災害からの復興に関する組織、復興計画の作成・実施に国が関与するというものであり、「著しく異常かつ激甚な非常災害」であり、「緊急災害対策本部が設置されたもの」と定義されている。緊急災害対策本部は極めてまれに見る災害が発生し、政府が一体となって災害応急対策を推進する必要がある場合に設置される。
(了)
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