事例でわかる[事業承継対策]
解決へのヒント
【第72回】
「複数の価格で行う外部株主からの株式集約」
太陽グラントソントン税理士法人
(事業承継対策研究会)
パートナー 税理士 梶本 岳
相談内容
私は、Y社の代表取締役を務めるCです。当社は、私を含む取締役4名と古参の従業員3名が、創業者(A氏の父)からY社株式を低廉な価格で譲り受ける形で非同族承継を行っており、7名で総株主の議決権の55%を保有しています。
先日の定時株主総会終了後、創業家株主のA氏から株式の買い取り要請を受けました。A氏は当社の筆頭株主ですが、会社経営には関与しておらず、総株主の議決権の25%しか株式を保有していません。役員・従業員が協力して55%の議決権を保有している私たち経営陣から見ると、A氏は少数株主であり、株式を買い取るとしても少数株主に見合った比較的低廉な対価しか支払いたくないと考えています。
当社は純資産が10億円、発行済株式総数10,000株(一株当たり純資産価額100,000円、配当還元価額1,000円)の会社ですので、A氏の純資産価額による持分は2億5,000万円になります。自己株式として取得することを想定しているため、A氏から「税引後の手残りを1億円にするために、2億円程度で買い取ってほしい」との要望を受けています。
顧問税理士に確認したところ、当社には議決権の30%以上を保有する「同族株主」がいないため、15%以上の議決権を有するA氏から自己株式を取得する場合は、純資産価額や類似業種比準価額を用いた原則的な評価方法により算定した価格で取引しないと、想定外の課税がなされてしまう可能性があるそうです。
また、個人間売買であれば税務上の評価額と売買金額の差額が贈与となるため、低廉な価格で取得してもA氏に課税関係が生じることはないようですが、各取締役の議決権割合が15%以上になると買主側に課税関係が生じてしまうため、取締役が株式を取得することは避けてほしい、とのアドバイスでした。
当社としては、最大限譲歩した場合でも1億5,000万円までしかお支払いできないと考えていますが、A氏からの要請に応じて2億5,000万円で自己株式を取得するしか方法がないのでしょうか。
〈図1〉Y社の株主構成
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