公開日: 2018/10/04 (掲載号:No.288)
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〔事例で使える〕中小企業会計指針・会計要領《税効果会計》編 【第1回】「税効果会計の適用(1)」

筆者: 前原 啓二

〔事例で使える〕

中小企業会計指針・会計要領
《税効果会計》

【第1回】

「税効果会計の適用(1)」

 

公認会計士・税理士 前原 啓二

 

連載の目次はこちら

本連載の趣旨

「中小企業の会計に関する指針」(以下「中小企業会計指針」とします)は、中小企業が計算書類の作成に当たり拠ることが望ましい会計処理等を示すもので、一定の水準を保ったものとされています。これに比べ簡単な会計処理をすることが適切と考えられる中小企業を対象に「中小企業の会計に関する基本要領」も公表されました。

しかし、これらは簡潔に文章で記載されており、概念的には理解できても、実際にはどのように会計処理するのかがわからないため、仕方なく法人税法の規定による決算処理を続けている中小企業が散見されます。

そこで、本連載では、実際の中小企業で行われている基本的かつ重要な会計処理の事例をテーマごとに選び出し、「中小企業会計指針」等に基づく会計処理の一例について数値例を用いて具体的に示して、実務上のモデルとなるように解説します。

連載の第11弾として、税効果会計を取り上げます。このテーマの「中小企業会計指針」に基づく会計処理は、一時差異に重要性がない場合には繰延税金資産又は繰延税金負債の計上を省略できますが、繰延税金資産の計上には、上場企業等の場合と同様にその回収可能性について厳格かつ慎重な判断が要求されます。

本連載が、「中小企業会計指針」等のより一層の普及、さらに、中小企業の経営実態の正確な把握や適切な経営管理への発展に、少しでもつながれば幸いです。

▷《税効果会計》 編のラインナップ

  • 【第1回】 税効果会計の適用(1)(本稿)
  • 【第2回】 税効果会計の適用(2)
  • 【第3回】 繰延税金資産の回収可能性

 

はじめに

「中小企業会計指針」では、税効果会計の適用を省略できるのは、一時差異に重要性がない場合に限定しています。

今回は、税効果会計を適用する初年度の会計処理をご紹介し、税効果会計を適用する場合と適用しない場合の税引前当期純利益に対する法人税計上額の比率についても例示します。

【設例1】

(1) 当社(3月31日決算、資本金30,000,000円)の×1年3月期(当期)における課税所得は、次のとおりです。

(注1) 買換建物は完成・稼動時から、当該建物の減価償却費の計上に対応させて、積立金(×1年3月期:1,512,000円)を取り崩して益金の額に算入しました。

(注2) 特定資産の買換えの場合の圧縮記帳の特例を積立金方式にて適用しました。

(2) ×0年3月期末における繰延税金資産と繰延税金負債はないものとします。

(3) 実効税率は、{法人税率×(1+地方法人税率+住民税率)+事業税率}÷(1+事業税率)にて算定しますが、×1年3月期及びそれ以降の実効税率は簡便的に35%とします。

(4) 当期末貸借対照表の未払法人税等残高に未払事業税5,000,000円(簡便的に事業税率を10%とします)が含まれています。×0年3月期末における未払事業税はないものとします。

(5) 実効税率={法人税率×(1+地方法人税率+住民税率)+事業税率0.1}÷(1+事業税率0.1)より、×1年3月期の法人税等{=法人税率×(1+地方法人税率+住民税率)+事業税率0.1}は、簡便的に課税所得50,000,000円×35%×(1+0.1)=19,250,000円とします。

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〔事例で使える〕

中小企業会計指針・会計要領
《税効果会計》

【第1回】

「税効果会計の適用(1)」

 

公認会計士・税理士 前原 啓二

 

連載の目次はこちら

本連載の趣旨

「中小企業の会計に関する指針」(以下「中小企業会計指針」とします)は、中小企業が計算書類の作成に当たり拠ることが望ましい会計処理等を示すもので、一定の水準を保ったものとされています。これに比べ簡単な会計処理をすることが適切と考えられる中小企業を対象に「中小企業の会計に関する基本要領」も公表されました。

しかし、これらは簡潔に文章で記載されており、概念的には理解できても、実際にはどのように会計処理するのかがわからないため、仕方なく法人税法の規定による決算処理を続けている中小企業が散見されます。

そこで、本連載では、実際の中小企業で行われている基本的かつ重要な会計処理の事例をテーマごとに選び出し、「中小企業会計指針」等に基づく会計処理の一例について数値例を用いて具体的に示して、実務上のモデルとなるように解説します。

連載の第11弾として、税効果会計を取り上げます。このテーマの「中小企業会計指針」に基づく会計処理は、一時差異に重要性がない場合には繰延税金資産又は繰延税金負債の計上を省略できますが、繰延税金資産の計上には、上場企業等の場合と同様にその回収可能性について厳格かつ慎重な判断が要求されます。

本連載が、「中小企業会計指針」等のより一層の普及、さらに、中小企業の経営実態の正確な把握や適切な経営管理への発展に、少しでもつながれば幸いです。

▷《税効果会計》 編のラインナップ

  • 【第1回】 税効果会計の適用(1)(本稿)
  • 【第2回】 税効果会計の適用(2)
  • 【第3回】 繰延税金資産の回収可能性

 

はじめに

「中小企業会計指針」では、税効果会計の適用を省略できるのは、一時差異に重要性がない場合に限定しています。

今回は、税効果会計を適用する初年度の会計処理をご紹介し、税効果会計を適用する場合と適用しない場合の税引前当期純利益に対する法人税計上額の比率についても例示します。

【設例1】

(1) 当社(3月31日決算、資本金30,000,000円)の×1年3月期(当期)における課税所得は、次のとおりです。

(注1) 買換建物は完成・稼動時から、当該建物の減価償却費の計上に対応させて、積立金(×1年3月期:1,512,000円)を取り崩して益金の額に算入しました。

(注2) 特定資産の買換えの場合の圧縮記帳の特例を積立金方式にて適用しました。

(2) ×0年3月期末における繰延税金資産と繰延税金負債はないものとします。

(3) 実効税率は、{法人税率×(1+地方法人税率+住民税率)+事業税率}÷(1+事業税率)にて算定しますが、×1年3月期及びそれ以降の実効税率は簡便的に35%とします。

(4) 当期末貸借対照表の未払法人税等残高に未払事業税5,000,000円(簡便的に事業税率を10%とします)が含まれています。×0年3月期末における未払事業税はないものとします。

(5) 実効税率={法人税率×(1+地方法人税率+住民税率)+事業税率0.1}÷(1+事業税率0.1)より、×1年3月期の法人税等{=法人税率×(1+地方法人税率+住民税率)+事業税率0.1}は、簡便的に課税所得50,000,000円×35%×(1+0.1)=19,250,000円とします。

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連載目次

〔事例で使える〕

中小企業会計指針・会計要領

《金銭債権-手形債権・電子記録債権》 編(全2回)

《金銭債務-社債》 編(全1回)

《繰延資産・資産除去債務-敷金》 編(全2回)

筆者紹介

前原 啓二

(まえはら・けいじ)

公認会計士・税理士

昭和60年 慶應義塾大学商学部卒業
昭和62年 監査法人中央会計事務所(後の中央青山監査法人)入社
平成 3 年 公認会計士登録
平成 5 年 クーパース・アンド・ライブランド(現プライスウォーターハウスクーパース)ロンドン事務所勤務
平成12年 前原会計事務所開設、米国公認会計士試験合格

現在、前原会計事務所代表
関西学院大学大学院経営戦略研究科客員教授
兵庫県社会福祉協議会経営相談室専門相談員

【著書等】
・『居住者の国外財産調書制度と外国税額控除』(清文社)
・『事例とチェックリストでよくわかる外国税額控除の申告実務』(清文社)
・『「中小企業の会計に関する指針」ガイドブック(平成20年版)』(共著)(清文社)
・『国際会計基準なるほどQ&A』(共著)(中央経済社)
・「関連会社・取引先支援をめぐる税務の問題―人的役務の提供」『月刊税理』2011年8月号(164項‐170項)(ぎょうせい)

 

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