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被災したクライアント企業への
実務支援のポイント
〔労務面のアドバイス〕
【第3回】
「日頃の防災対策で被害の軽減を」
特定社会保険労務士・中小企業診断士
小宮山 敏恵
災害を避けることはできないが、災害から被る被害は、対処の仕方によって軽減することはできる。過去に起きた震災の教訓を生かし、企業が一丸となって、日頃から防災対策に取り組んでいただきたい。
緊急時において、人の思考力・判断力は平常時に比べて格段に低下する。そのため、事前の対策・準備は重要である。
『防災意識の高い企業が、万一の時、経営を守る』ということを理解しておきたい。
(1) 「防災マニュアル」の作成・整備
企業の防災マニュアルは、天災等が起こった時を想定し、見やすく、わかりやすく、使いやすいものを作成するとともに、適宜見直しを行うことで、常時役立つものにしておくことが必要である。
主に下記の点について記載する必要がある。
① 災害時の組織体制の決定
組織は通常の経営組織と異なり、企業のトップが意思決定をし、組織的に役割分担を決め、担当者を配置する。
② 緊急連絡網の作成、災害伝言ダイヤル、災害掲示板等の作成
緊急事態が発生した場合は、情報伝達が非常に重要である。デマや不確実な情報が氾濫して混乱が起こる可能性がある。正確な情報を迅速に収集し、社内に伝達していくことで、パニックを防止することができる。
③ 情報収集と提供の仕方
- 社員の安否・建物・設備・物品の被害状況・関係企業・取引先の被害状況等
- 自社内の支店・営業所、取引先、消防、警察、市区町村役場、交通機関、近隣医療機関、ガス、水道、電気等の連絡先も一覧表にして記載する。
その他、東京都が作成した「東京防災」を参考にされたい。
「「東京防災」の作成について」
(2) 防災グッズ・防災備蓄品の保管・定期点検
- 防災グッズ(ヘルメットや懐中電灯等、避難リュックサック)、防災備蓄品(食料・生活用品・その他非常用備品)について、常時保管し、定期的に点検する。
- 品名・数量・保管場所・責任者等がわかるよう、チェックリストを作成しておく。
- 特に、防災備蓄品等の保存状態、食品の消費期限等には十分注意し、定期的に点検し、整備する。
(3) 職場内における落下物・転倒物の防止対策を実施する。
(4) 危険物や消火用設備等の安全確認を行う。
(5) 非常口や避難経路の点検を行う。
(6) 重要データのバックアップ対策、非常電源の確保等、情報通信システムの保全対策を実施する。
(7) 防災訓練や消火器の使い方等の講習
- 非常時に慌てず、迅速かつ的確に行動がとれるように、消火器の使用方法に関する定期講習、防災訓練や防災教育を実施し、日頃の心構えを社員へ徹底しておく。
-「同業他社等との防災協定」の検討も-
阪神・淡路大震災(1995.1.17)が起きた時、印刷工場が被災した神戸新聞は、京都新聞に印刷を依頼しトラック輸送も京都新聞が助力、発行を続けた。
時事通信社と共同通信社も首都直下型地震が発生した際、新聞・放送へのニュースを大阪から協力して配信する協定が結ばれている。
災害時に起こりうる自社の損害を想定し、同業他社等との防災協定を締結することも検討しておきたい。
(了)
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