〔事例で使える〕
中小企業会計指針・会計要領
《金銭債務-社債》編
【第1回】
「金銭債務-社債」
公認会計士・税理士 前原 啓二
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本連載の趣旨
「中小企業の会計に関する指針」(以下「中小企業会計指針」とします)は、中小企業が計算書類の作成に当たり拠ることが望ましい会計処理等を示すもので、一定の水準を保ったものとされています。これに比べ簡単な会計処理をすることが適切と考えられる中小企業を対象に「中小企業の会計に関する基本要領」も公表されました。
しかし、これらは簡潔に文章で記載されており、概念的には理解できても、実際にはどのように会計処理するのかがわからないため、仕方なく法人税法の規定による決算処理を続けている中小企業が散見されます。
そこで、本連載では、実際の中小企業で行われている基本的かつ重要な会計処理の事例をテーマごとに選び出し、「中小企業会計指針」等に基づく会計処理の一例について数値例を用いて具体的に示して、実務上のモデルとなるように解説します。
連載の第10弾として、『金銭債務』の中から『社債』を取り上げます。具体的には、「払込みを受けた金額が債務額と異なる社債」の貸借対照表価額について説明します。
本連載が、「中小企業会計指針」等のより一層の普及、さらに、中小企業の経営実態の正確な把握や適切な経営管理への発展に、少しでもつながれば幸いです。
はじめに
「中小企業会計指針」において、金銭債務には債務額を付すこととされます。ただし、今回ご紹介する「払込みを受けた金額が債務額と異なる社債」については、別途処理方法が示され、払込みを受けた金額と債務額の差額については、旧商法の時代のように社債発行差金と呼ばれた繰延資産として処理するのではなく、払込みを受けた金額にて社債計上した後、償却原価法により社債計上額に加減していきます。参考までに、社債発行費の会計処理にも言及します。【設例】
A社(12月31日決算)は、×1年1月1日に資金調達するため下記の社債を発行しました。
・額面総額:100,000,000円、発行価格:額面100円につき95円、額面満期償還日:X5年12月31日、クーポン利子率:年利2%、利払日:毎年12月末日(年1回)
・社債発行費(社債発行に係る金融機関の取扱手数料、社債券の印刷費等):1,200,000円(×1年1月1日に支出)
A社は、社債発行費を支出時の費用とする会計方針を継続して採用しています。
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