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実務必須の
[重要税務判例]
【第48回】
「相栄産業事件」
~最判平成4年10月29日(集民166号525頁)~
弁護士 菊田 雅裕
-本連載の趣旨-
本連載は、税務分野の重要判例の要旨を、できるだけ簡単な形でご紹介するものである。
税務争訟は、請求内容や主張立証等が細かく煩雑となりやすい類型の争訟であり、事件の正確な理解のためには、処分経過の把握や判決文の十分な読み込み等が必要となってくるが、若手税理士をはじめとする多忙な読者諸氏が、日常業務をこなしつつ判例研究の時間を確保することは、容易なことではないであろう。他方、これから税務重要判例を知識として蓄積していこうとする者にとっては、要点の把握すら困難な事件も数多い。
本連載では、解説のポイントを絞り、時には大胆な要約や言い換え等も行って、上記のような読者の方に、重要判例の概要を素早く把握していただこうと考えている。
このような企画趣旨から、本連載における解説は、自ずと必要最低限のものとなり、基礎知識の説明、判例の繊細なニュアンスの紹介、多角的な分析、主要な争点以外の判断事項の紹介等を省略することも多くなると思われるが、ご容赦をいただきたい。
なお、より深い内容については、できるだけ論末において他稿をご紹介するので、そちらをご参照いただきたい。
▷今回の題材
相栄産業事件
(最判平成4年10月29日(集民166号525頁))
《概要》
X社は、電力会社A社との間で電力需給契約を締結し、A社から電気の供給を受けていた。ところが、計量装置の設定誤りにより、12年にわたって、A社がX社から過大に電気料金を徴収していたことが判明した。その間、X社は、誤った電気料金をもとに電気税を納付し、また、支払った電気料金等を損金に算入して法人税の申告と納付を行ってきた。
A社は、X社に返戻すべき金額が利息を含め2億円になると見込まれること、古い年分の資料が保存されておらず、具体的な金額の確定や返戻までには相当長期間を要すること、一部の電気税の還付には市議会の承認も必要であって煩瑣であるのでX社に放棄してほしいことなどを説明し、X社の了承を得た。そして、X社とA社は、それらを前提に、過払額は1億5,000万円であるとする合意をし、A社はこれをX社に支払った。
以上を踏まえ、X社は、過大徴収がなされていた期間の確定申告のうち、時効期間の経過した分を除き、過大徴収がなされた各事業年度について、過払分を損金の額から減額して修正申告した。これに対し、Y税務署長は、返戻金1億5,000万円全額を、過払額についての合意をした事業年度の益金に計上すべきだとして、更正処分をした。そこで、X社は、処分の取消しを求めて提訴した。
最高裁は、X社の主張を認めなかった。
《関係図》
▷争点
数年にわたり過大に支払われた電気料金等の返戻による収益は、過大徴収がなされた各事業年度に帰属するか、それとも過払額の合意をした事業年度に帰属するか。
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