谷口教授と学ぶ
税法基本判例
【第17回】
「外国組織体の法人該当性判断枠組み」
-米国デラウェア州LPS法人該当性事件・最判平成27年7月17日民集69巻5号1253頁-
大阪学院大学法学部教授
谷口 勢津夫
Ⅰ はじめに
前回は、課税要件事実の認定を、未経過固定資産税等相当額清算金の性質決定について検討したが、今回は、外国法に準拠して設立された組織体(以下「外国組織体」という)の性質決定について検討することにする。我が国の実定所得課税制度は、納税義務者を個人と法人とに二分し、それぞれに帰属する所得に課税する建前を採用しているが(拙著『税法基本講義〔第7版〕』(弘文堂・2021年)【219】参照)、そのため、外国組織体の性質決定の問題は、外国組織体の法人該当性に関する判断枠組み(以下「外国組織体の法人該当性判断枠組み」という)の中で検討されることになる。
外国組織体の法人該当性判断枠組みは、我が国の所得税法及び法人税法の解釈適用の一環として、税法がどのような法人概念を定めているかを解釈によって明らかにした上で、その明らかにした法人概念(規範)に該当する事実(課税要件事実)を外国組織体について認定する、という判断過程を包括するものである。本連載では、前掲拙著の叙述の順に従って、それぞれの箇所で取り上げている「税法基本判例」を順次検討していくことを基本方針としていることからすると、本来なら、今回は、上記の判断枠組みの後半で扱う外国組織体の性質決定に関する判例を取り上げることにすべきところ、その判例は、前掲拙著の第3版(2012年)及び第4版(2014年)では【60】(私法関係準拠主義)で取り上げていたのに対して、本判決の後に改訂した第5版(2016年)からは本判決を上記の判断枠組み全体からみて、まず(そして主として)、借用概念論を扱う【52】で取り上げることにしたので、今回は、本判決をⅡで借用概念論との関係で検討し、Ⅲで課税要件事実の認定との関係で、しかも私法関係準拠主義にも触れながら、検討することにする。
外国組織体の法人該当性判断枠組みについては、米国デラウェア州法に準拠して設立されたリミテッド・ハートナーシップ(LPS)の法人該当性をめぐる訴訟事件等を契機にして、外国組織体の設立準拠法を我が国の税法の解釈適用においてどのように考慮するかという形で、議論が展開されてきたが、その議論は、租税法律主義の支配する税法の世界においては珍しく、裁判例・学説ともに、「百家争鳴」の様相を呈していたといってよかろう(差し当たり、裁判例の整理については拙稿「判批」判評676号(判時2253号)2頁、学説も含めた整理については長戸貴之「判批」法協133巻10号(2016年)1685頁、1689-1697頁、衣斐瑞穂「判解」最判解民事篇平成27年度(下)349頁、356-359頁参照)。
そもそも、上記の議論の発端は、外国組織体をその準拠法によって性質決定することを認めてしまうと、準拠法の指定に係る国際私法上の当事者自治の原則の下では、我が国の税法の適用を回避する結果(租税回避)を招来することになる、という点にあったように思われるが(この点については岩品信明(司会)=川田剛=須藤一郎「座談会 デラウェア州LPS判決を受けて」税弘63巻12号(2015年)74頁、92頁[川田発言]等参照)、その議論が、租税回避の分野に限定してではなく一般的に展開され、しかも外国組織体の性質決定という課税要件事実の認定のレベルにとどまらず、税法特有の解釈論である借用概念論にまで波及し、借用元の私法には外国組織体の設立準拠法たる外国私法も含まれるかという問題も加わった形で、展開されるようになり、その結果、著しく錯綜した様相を呈するようになっていたように思われる(そのような議論に影響を与えたと思われる先駆的研究業績として、小柳誠「租税法と準拠法―課税要件事実の認定場面における契約準拠法の考察―」税大論叢39号(2002年)75頁参照)。
前記の米国デラウェア州法LPS法人該当性事件に関する最判平成27年7月17日民集69巻5号1253頁(以下「本判決」という)は、そのような錯綜した議論状況に一応「終止符」を打ったものといえるが、今回は、そのような議論に前掲拙著の前述のような改訂を通じて若干コミットしてきた者として、本判決の検討を通じて、外国組織体の法人該当性判断枠組みに関する筆者の理解を総括しておくことにしたい。
Ⅱ 税法上の法人概念の解釈と借用概念論
1 本判決と借用概念論
まず、本判決と借用概念論との関係については、例えば、「法人概念について、最高裁が借用概念論を離れたのか(つまり固有概念(租税法独自の概念)として捉えているのか)、それともなお借用概念論に依っているのかは、必ずしも明らかではないところです。」(㋐)、「借用概念論に対する本件最判の態度は微妙である。」(㋑)というような見方から、「本判決は、借用概念論の枠組みから自らを解放した」(㋒)、「本判決は、基本的には租税法独自の観点から『法人』概念の解釈に関する判断をしたと考えられる。」(㋓)、「借用概念論の不採用」(㋔)というような見方まで様々な見方がされてきたが、いずれにせよ、多くの論者は本判決を借用概念論の枠内に位置づけることに消極的あるいは否定的な立場に立っているといってよかろう(㋐は平川雄士「判批」租税研究793号(2015年)286頁、294頁、㋑は仲谷栄一郎=礒山海「判批」国際税務36巻1号(2016年)98頁、103頁、㋒は長戸・前掲「判批」1704頁、㋓は宮塚久=北村導人「判批」旬刊経理情報1426号(2015年)40頁、42頁、㋔は藤曲武美「判批」税弘64巻2号(2016年)173頁、179頁)。
これに対して、筆者は本判決を借用概念論しかも統一説の枠内に位置づけてきた(最初にそのような立場を示したのは前掲拙著の第5版(2016年)【52】においてであるが、ほぼ同時期のものとして拙著『税法創造論』(清文社・2022年)161頁[初出・2016年]参照。また、「租税法独自の観点から法人概念を導いているようだが、・・・・・・、実質的には統一説に立っているもの」と解する加藤友佳「判批」ジュリ1496号(2016頁)111頁、114頁のほか、秋元秀仁「判批」国際税務36巻3号(2016年)20頁、27頁も参照)。このような位置づけについて以下で敷衍しておこう。
本判決は、「本件各LPSが行う本件各不動産賃貸事業により生じた所得が本件各LPS又は本件出資者らのいずれに帰属するか」という争点を判断する前提として、外国組織体の法人該当性の問題を、「本件各LPSが所得税法2条1項7号及び法人税法2条4号(以下「所得税法2条1項7号等」という。)に共通の概念として定められている外国法人として我が国の租税法上の法人に該当するか否か」(下線筆者)という観点から、所得税法2条1項7号等に定める「外国法人」概念の解釈適用問題として設定し、その上で次のとおり判示した(下線筆者。以下「判旨❶」という)。
我が国の租税法は組織体のうちその構成員とは別個に租税債務を負担させることが相当であると認められるものを納税義務者としてその所得に課税するものとしているところ、ある組織体が法人として納税義務者に該当するか否かの問題は我が国の課税権が及ぶ範囲を決する問題であることや、所得税法2条1項7号等が法人に係る諸外国の立法政策の相違を踏まえた上で外国法人につき「内国法人以外の法人」とのみ定義するにとどめていることなどを併せ考慮すると、我が国の租税法は、外国法に基づいて設立された組織体のうち内国法人に相当するものとしてその構成員とは別個に租税債務を負担させることが相当であると認められるものを外国法人と定め、これを内国法人等とともに自然人以外の納税義務者の一類型としているものと解される。このような組織体の納税義務に係る制度の仕組みに照らすと、外国法に基づいて設立された組織体が所得税法2条1項7号等に定める外国法人に該当するか否かは、当該組織体が日本法上の法人との対比において我が国の租税法上の納税義務者としての適格性を基礎付ける属性を備えているか否かとの観点から判断することが予定されているものということができる。そして、我が国においては、ある組織体が権利義務の帰属主体とされることが法人の最も本質的な属性であり、そのような属性を有することは我が国の租税法において法人が独立して事業を行い得るものとしてその構成員とは別個に納税義務者とされていることの主たる根拠であると考えられる上、納税義務者とされる者の範囲は客観的に明確な基準により決せられるべきであること等を考慮すると、外国法に基づいて設立された組織体が所得税法2条1項7号等に定める外国法人に該当するか否かについては、上記の属性の有無に即して、当該組織体が権利義務の帰属主体とされているか否かを基準として判断することが相当であると解される。
以上の判示(判旨❶)のうち(ⅰ)1つ目の文章では、所得税法2条1項7号等に定める「外国法人」は「内国法人に相当するものとして」解されており、また、(ⅱ)2つ目の文章では、「外国法人」該当性は「日本法上の法人との対比において」判断されることが予定されていると述べられており、さらに、(ⅲ)3つ目の文章では、「権利義務の帰属主体」という私法上広く承認されている「法人の最も本質的な属性」が「外国法人」該当性の判断基準として示されていることからすると、以上の3つの文章を整合的に理解するには、本判決が「内国法人」にいう「法人」の概念を「日本法上の法人」という意味で私法からの借用概念として捉え、しかも借用概念の解釈に関する統一説の立場に立つことを前提にして、外国組織体の「外国法人」該当性に関する判旨❶を判示したものと解するのが相当である。「外国法人」に関する所得税法2条1項7号等の定め(「内国法人以外の法人」)につき下記の「素直な読み方」をすれば、上記のような理解が論理的かつ自然であろう。しかもその理解が前提とするところには、学説上も(課税・裁判)実務上も異論はなかろう。
所得税法2条1項7号等が「外国法人」を「内国法人以外の法人」と定めている以上、「外国法人」該当性については、「順序として、外国の組織体が我が国における租税法上の『法人』に該当するかどうかが先ず決まり、その後に、その法人につき内国法人には該当しない法人という順序で消去法的に決定されると捉えるのが素直な読み方である。」(伊藤公哉「判批」大阪経大論集66巻6号(2016年)227頁、233頁)にもかかわらず、「本判決では、『法人』(内国法人と外国法人の両者を含む概念)の積極的な定義付けを行うことなく、また内国法人の法人該当性についてはとくに触れず、外国法人の法人該当性についてのみピンポイントに焦点を当てた基準を示している。」(同頁)と解するのは、上で述べた筆者の理解の仕方とは異なり、「素直な読み方」ではないように思われる(兼平裕子「判批」愛媛法学会雑誌42巻2号(2016年)127頁、134-135頁の説く「外国法人の定義の曖昧さ」についても同様の問題を指摘することができよう)。
なお、判旨❶のうち(ⅰ)1つ目の文章の冒頭の「我が国の租税法は組織体のうちその構成員とは別個に租税債務を負担させることが相当であると認められるものを納税義務者としてその所得に課税するものとしている」という説示(ⓐ)と(ⅱ)2つ目の文章の「外国法に基づいて設立された組織体が所得税法2条1項7号等に定める外国法人に該当するか否かは、当該組織体が・・・・・・我が国の租税法上の納税義務者としての適格性を基礎付ける属性を備えているか否かとの観点から判断することが予定されている」という説示(ⓑ)とを併せ読むと、本判決は借用概念論に依拠せず「租税法独自の観点から」法人概念を解釈したと解することもできるかもしれない(長戸・前掲「判批」1695頁、宮塚久ほか「判批」西村あさひ法律事務所ビジネス・タックス・ロー・ニューズレター2015年8月号1頁、3頁等参照)。
しかし、上記の説示(ⓐ)は、後続の説示と「ところ、」で接続されていることからすると、せいぜい、前記Ⅰの冒頭で述べた外国組織体の法人該当性判断枠組みの設定を宣明するためのいわば「枕詞」的な説示にすぎず、以下の判断を内容的に方向づけ指導する規範的な意味をもつものではないと解される。また、上記の説示(ⓑ)は、「・・・・・・」部分が「日本法上の法人との対比において」とされていることからすると、全体としてみると、前述のとおり、税法上の法人概念を「日本法上の法人」という意味で私法からの借用概念として捉えていると解される。
最後に、民法上の「外国法人」(本件当時36条、現行35条)との関係についても多くの論者が議論してきた(差し当たり中里実「課税管轄権からの離脱をはかる行為について」フィナンシャル・レビュー94号(2009年)4頁、14-18頁参照)ので若干付言しておくと、判旨❶によれば、本判決が所得税法2条1項7号等に定める「外国法人」の概念を、民法上の「外国法人」の借用概念として捉えていないことは明らかである。本判決はあくまでも「内国法人」及び「外国法人」に共通する「法人」概念を民法から借用していると解されるのである。
2 本判決における借用概念論の射程
以上の理解によれば、本判決は外国組織体の法人該当性を、日本の私法を基準とする借用概念論(統一説)の枠内で、判断したことになるが、ここで検討しておかなければならないと考えるのは、本判決が日本の私法を基準として借用概念論を措定した理由、換言すれば、借用概念論において外国組織体の設立準拠法たる外国私法を考慮する余地を認めなかった理由である(なお、本判決前の研究であるが、今村隆「外国事業体の『法人』該当性」税大ジャーナル24号(2014年)1頁、12頁は「租税法の公法としての性格」から原則として同様の結論を述べている)。
その理由は、判旨❶の1つ目の文章で説示されている、「ある組織体が法人として納税義務者に該当するか否かの問題は我が国の課税権が及ぶ範囲を決する問題であることや、所得税法2条1項7号等が法人に係る諸外国の立法政策の相違を踏まえた上で外国法人につき『内国法人以外の法人』とのみ定義するにとどめていることなど」にあるように思われるが、更に深掘りすれば、根本的には、この説示の基礎にある次のような考え方、すなわち、我が国の課税権の及ぶ範囲及びその範囲を納税義務者という課税要件に関して具体的に画定するための外国法人の概念は、専ら「日本法」及び「日本法上の法人」によって決せられるべきであり、外国組織体の設立準拠法としての外国私法によって左右されてはならないというような考え方が、その理由であるように思われる(なお、この点について、吉村政穂「判批」税弘63巻12号(2015年)100頁、104頁は「わが国の課税権のあり方にとって重大な問題であることを指摘し、これにより、外国法による法人格付与に係る決定に従属するのを回避する意図を(立法府が)有していたという推論を示唆したものと考えられる。」と述べている。また、落合秀行「外国事業体の税務上の取扱いに関する考察」税大論叢73号(2012年)87頁、125頁は「租税法における法人概念」を「我が国の公序に関わる概念」として「外国法上の概念は借用することなく、常に、我が国の私法における意義のみ借用すると考えられる。」と述べている)。
前記の考え方は、課税権(その多義性については第1回Ⅱ2参照)が「国家主権の中核に属する」(最判平成21年10月29日民集63巻8号1881頁)国家権力であることを考慮すると、原理的には、「国家権力が他のいかなる力にも制約されない最高独立であること」(高橋和之ほか編『法律学小辞典〔第5版〕』(有斐閣・2016年)621頁)という意味での国家主権の最高独立性(憲法前文3節参照)から導き出されるものであると考えられる。
借用概念論については、既にその伝統的・本来的な射程と形式的外縁とを区別し概念借用枠組みの「独り歩き」の問題性を指摘したが(第12回Ⅲ・Ⅳ参照)、本判決は、そこでの議論とはレベルを異にするものの、国家主権の最高独立性という原理的基準によって、借用概念論の射程を日本の私法を基準とする統一説の枠内に限定したものと評価することができよう(前掲拙著【52】参照)。
Ⅲ 外国組織体の性質決定(課税要件事実の認定)
ところで、本判決は、判旨❶に「その一方で」で続けて、次のとおり判示している(下線筆者。以下「判旨❷」という)。
その一方で、諸外国の多くにおいても、その制度の内容の詳細には相違があるにせよ、一定の範囲の組織体にその構成員とは別個の人格を承認し、これを権利義務の帰属主体とするという我が国の法人制度と同様の機能を有する制度が存在することや、国際的な法制の調和の要請等を踏まえると、外国法に基づいて設立された組織体につき、設立根拠法令の規定の文言や法制の仕組みから、日本法上の法人に相当する法的地位が付与されていること又は付与されていないことが疑義のない程度に明白である場合には、そのことをもって当該組織体が所得税法2条1項7号等に定める外国法人に該当する旨又は該当しない旨の判断をすることが相当であると解される。
この判示(判旨❷)は、一見すると、外国組織体の法人該当性を「外国法」を基準にして判断することを認めているかのようである。そうすると、前記Ⅱで判旨❶について検討してきたところと矛盾する内容の判示であるということになりそうであるが、しかし、そのように理解すべきではない。判旨❷は、外国組織体の法人該当性判断枠組みのうち外国組織体の性質決定という課税要件事実の認定についてその基準を示したものと解すべきである。
既に述べたように、本判決は「内国法人」及び「外国法人」に共通する「法人」概念を「日本法上の法人」という意味で私法からの借用概念として捉え、しかも借用概念の解釈に関する統一説の立場に立つことを前提にして、外国組織体の法人該当性判断枠組みを示したものと解されるが、その前提において示した「法人」概念に関する借用概念論(統一説)的解釈によって定立した規範(以下「法人該当性判断規範」という)は、「日本法上の法人」すなわち「権利義務の帰属主体」という「法人の最も本質的な属性」を有する組織体が税法上の「法人」概念に該当する、というものであると解される。そうすると、法人該当性判断規範においては、「日本法上の法人」が要件事実ということになる。
判旨❷は、「日本法上の法人」という課税要件事実の認定に当たっては、「設立根拠法令の規定の文言や法制の仕組みから、日本法上の法人に相当する法的地位が付与されていること又は付与されていないことが疑義のない程度に明白である」という事実を間接事実として考慮する、という事実認定基準(性質決定基準)を示したものと解される。つまり、間接事実の認定のレベルでは「外国法」を考慮することを認めたものと解されるのである。
判旨❷がこのような事実認定基準を示したのは、「諸外国の多くにおいても、その制度の内容の詳細には相違があるにせよ、一定の範囲の組織体にその構成員とは別個の人格を承認し、これを権利義務の帰属主体とするという我が国の法人制度と同様の機能を有する制度が存在することや、国際的な法制の調和の要請等」を踏まえたからであるが、ここには、国際的経済活動や国際課税の実際に対する本判決の配慮が認められる。
ただ、本判決は、前記の事実認定基準を示すだけでなく、次のとおり判示して(下線筆者。以下「判旨❸」という)、もう1つ別の事実認定基準も示している。
以上に鑑みると、外国法に基づいて設立された組織体が所得税法2条1項7号等に定める外国法人に該当するか否かを判断するに当たっては、まず、より客観的かつ一義的な判定が可能である後者の観点として、①当該組織体に係る設立根拠法令の規定の文言や法制の仕組みから、当該組織体が当該外国の法令において日本法上の法人に相当する法的地位を付与されていること又は付与されていないことが疑義のない程度に明白であるか否かを検討することとなり、これができない場合には、次に、当該組織体の属性に係る前者の観点として、②当該組織体が権利義務の帰属主体であると認められるか否かを検討して判断すべきものであり、具体的には、当該組織体の設立根拠法令の規定の内容や趣旨等から、当該組織体が自ら法律行為の当事者となることができ、かつ、その法律効果が当該組織体に帰属すると認められるか否かという点を検討することとなるものと解される。
この判示(判旨❸)では、「①」と「②」という2つの事実認定基準(以下「事実認定基準①」と「事実認定基準②」という)が示されているが、事実認定基準①は判旨❷で示された観点(「後者の観点」)から導き出されたものであり、事実認定基準②は判旨❶で示された観点(「前者の観点」)から導き出されたものであると解される。
いずれの基準も、法人該当性判断規範に該当する事実(「日本法上の法人」すなわち「権利義務の帰属主体」であることという課税要件事実)を外国組織体について認定するための基準であるが、事実認定基準②の前半部分すなわち「当該組織体が権利義務の帰属主体であると認められるか否かを検討して判断すべきものであり」という部分は、課税要件事実を直接認定する場合について説示したものと解される。ただ、課税要件事実を外国組織体について直接認定することは困難を伴うことから、本判決は、事実認定基準②の「具体的には」以下の部分では、事実認定基準①に準じて、「外国法」すなわち「当該組織体の設立根拠法令の規定の内容や趣旨等」から間接的に課税要件事実を推認することを認めたものと解される(岡村忠生「判批」ジュリ1486号(2015年)10頁、11頁は、正当にも、「本判決は、同法[=デラウェア州改正統一有限責任組合法]の規定とその作用を、事実の問題として捉え、『権利義務の帰属主体とされているか否か』という自ら設定した基準に当てはめたと考えられる。」(下線筆者)と述べている)。
こうして検討してくると、判旨❸が示した事実認定基準(①及び②)は、私法関係準拠主義(前掲拙著【60】)に基づく事実認定の基準とみることができる。私法関係準拠主義は、経済的成果に係る「ナマの事実」を私法上の法律関係によって把握することを要請する税法の根本規律・構造的規律であるが、そこでいう「私法」は日本の私法である以上、外国私法を設立準拠法とする外国組織体の法人該当性の判断に当たっては、当該外国組織体に関する「法律が法人格を有すると規定する以前の、いわば生の法人格」(仲谷栄一郎=藤田耕司「海外事業体の課税上の扱い」金子宏編『租税法の発展』(有斐閣・2010年)639頁、641-642頁)を日本の私法からみて把握し認定すべきことになるのである。
以上の理解に基づき、判旨❸が示した外国組織体の性質決定(課税要件事実の認定)の手法ないし手順を述べておくと、事実認定基準①と事実認定基準②とを比較すると、前者による方が「より客観的かつ一義的な判定が可能である」ことから、「まず」(判旨❸)、事実認定基準①を第一次的基準として事実認定を行い、「次に」(判旨❸)、事実認定基準②を第二次的基準として事実認定を行う、ということになろう。
事実認定基準①と事実認定基準②については、両者の意義・性格が「形式基準」と「実質基準」(仲谷=礒山・前掲「判批」104頁、109頁、藤曲・前掲「判批」179頁、180頁、高橋美津子「判批」月刊税務事例48巻10号(2016年)63頁、65頁)、「形式テスト」と「実質テスト」(酒井克彦「判批」判評696号(判時2314号)7頁、11頁)、「形式的なアプローチ」と「実質的なアプローチ」(岩品=川田=須藤・前掲「座談会」81-82頁[岩品発言])、「形式的な審査」と「実質的な審査」(伊藤・前掲「判批」235頁、236頁)等の様々な表現で述べられているが、いずれも、事実認定基準①を「より客観的かつ一義的な判定」を可能にする「簡便な判断手法」(吉村・前掲「判批」104頁)ないし「スクリーニング的な判断要素」(衣斐・前掲「判解」360頁)として位置づけることに異論はなかろう。
Ⅳ おわりに
以上、今回は、外国組織体の法人該当性判断枠組みについて、本判決に則して検討してきた。
「判断枠組み」という言葉は、これが用いられる場面によって異なる意味をもつことがあるが、判例における「判断枠組み」は、法的三段論法に従った判断の過程で用いられる基準、すなわち、法解釈によって定立する規範と事実認定の基準を含むものでなければならない。これを外国組織体の法人該当性判断枠組みについてみると、本判決は、判旨❶で、税法上の「法人」概念に関する、日本の私法を基準とする借用概念論(統一説)的解釈によって規範(法人該当性判断規範)を定立し、判旨❷及び判旨❸で、外国私法に係る事実を間接事実として考慮する事実認定基準(判旨❷と❸の①)及び外国私法に係る事実から要件事実を間接的に推認する事実認定基準(判旨❸の②)を示したものと解される。
筆者は外国組織体の法人該当性判断枠組みに関する理解を以上のとおり総括するものであるが、その判断枠組みをめぐる「百家争鳴」的議論状況はなお本判決の理解に痕跡を残しているように思われる。例えば、本判決の調査官解説は下記のとおり述べているが(衣斐・前掲「判解」359頁)、外国組織体の法人該当性判断枠組みにおいては、法人該当性判断規範のレベルで日本の私法を基準にすることと、事実認定基準のレベルで外国の私法を考慮することとは区別して論ずるべきであるにもかかわらず、そのような区別をしないまま本判決を解説しようとしていると解されるところに、「百家争鳴」的議論状況の痕跡がみられるように思われる。その意味で、本判決がそのような錯綜した議論状況に最終的かつ明確な「終止符」を打ったとはなおいえないであろう。
本判決は、外国事業体が我が国の租税法上の法人に該当するか否かの判断方法につき、まず、①外国事業体が当該外国の法令において日本法上の法人に相当する地位を付与されていること又は付与されていないことが疑義のない程度に明白であるか否かを検討し(以下「判断方法1」という。)、それができない場合に、②外国事業体が権利義務の帰属主体であるか否かを検討して(以下「判断方法2」という。)判断すべきものと判示するところ、上記2に述べた外国私法基準説又は内国私法基準説の一方のみを採用するものではなく、両者の見解を踏まえた上でいわばこれを統合した判断方法を定立したものということが可能である。
(了)
この連載の公開日程は、下記の連載目次をご覧ください。
























