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実務必須の
[重要税務判例]
【第82回】
「税理士による隠ぺい・仮装事件」
~最判平成18年4月20日(民集60巻4号1611頁)~
弁護士 菊田 雅裕
-本連載の趣旨-
本連載は、税務分野の重要判例の要旨を、できるだけ簡単な形でご紹介するものである。
税務争訟は、請求内容や主張立証等が細かく煩雑となりやすい類型の争訟であり、事件の正確な理解のためには、処分経過の把握や判決文の十分な読み込み等が必要となってくるが、若手税理士をはじめとする多忙な読者諸氏が、日常業務をこなしつつ判例研究の時間を確保することは、容易なことではないであろう。他方、これから税務重要判例を知識として蓄積していこうとする者にとっては、要点の把握すら困難な事件も数多い。
本連載では、解説のポイントを絞り、時には大胆な要約や言い換え等も行って、上記のような読者の方に、重要判例の概要を素早く把握していただこうと考えている。
このような企画趣旨から、本連載における解説は、自ずと必要最低限のものとなり、基礎知識の説明、判例の繊細なニュアンスの紹介、多角的な分析、主要な争点以外の判断事項の紹介等を省略することも多くなると思われるが、ご容赦をいただきたい。
なお、より深い内容については、できるだけ論末において他稿をご紹介するので、そちらをご参照いただきたい。
▷今回の題材
税理士による隠ぺい・仮装事件
最判平成18年4月20日(民集60巻4号1611頁)
《概要》
A(税理士)は、税務署の説明より譲渡所得に係る税額を低額に抑えられると述べた上、Xから、所得税の確定申告の委任を受けた。しかし、Aは、税務署に対し、譲渡所得は生じず税額は0円である旨の虚偽の確定申告書を提出の上、Xから受領した納税資金を横領した。
その後、Aによる横領が発覚したため、Xが、租税特別措置法の特例を適用する内容の修正申告をしたところ、Y税務署長が、Xに対し、この修正申告により新たに納付すべきことになった税額分につき、重加算税の賦課決定をした(重加算税賦課決定①)。さらに、Y税務署長は、上記特例の適用も否認する内容の増額更正をし、これにより新たに納付すべきことになった税額分についても、重加算税の賦課決定をした(重加算税賦課決定②)。
そこで、Xは、これらの処分の取消しを求める訴えを提起した。最高裁は、重加算税賦課決定①の適否に関して判断し、重加算税の賦課決定は取り消されるべきものとしたが、過少申告加算税の賦課を免れる正当な理由はないと判断した。
《関係図》
▷争点
1 確定申告の委任を受けた税理士が隠ぺい・仮装行為をした場合、納税者本人に対して重加算税を賦課することはできるか。
2 国税通則法65条4項にいう「正当な理由があると認められる場合」とは、どのような場合か。
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