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実務必須の
[重要税務判例]
【第19回】
「10年退職金事件」
~最判昭和58年12月6日(集民140号589頁)~
弁護士 菊田 雅裕
-本連載の趣旨-
本連載は、税務分野の重要判例の要旨を、できるだけ簡単な形でご紹介するものである。
税務争訟は、請求内容や主張立証等が細かく煩雑となりやすい類型の争訟であり、事件の正確な理解のためには、処分経過の把握や判決文の十分な読み込み等が必要となってくるが、若手税理士をはじめとする多忙な読者諸氏が、日常業務をこなしつつ判例研究の時間を確保することは、容易なことではないであろう。他方、これから税務重要判例を知識として蓄積していこうとする者にとっては、要点の把握すら困難な事件も数多い。
本連載では、解説のポイントを絞り、時には大胆な要約や言い換え等も行って、上記のような読者の方に、重要判例の概要を素早く把握していただこうと考えている。
このような企画趣旨から、本連載における解説は、自ずと必要最低限のものとなり、基礎知識の説明、判例の繊細なニュアンスの紹介、多角的な分析、主要な争点以外の判断事項の紹介等を省略することも多くなると思われるが、ご容赦をいただきたい。
なお、より深い内容については、できるだけ論末において他稿をご紹介するので、そちらをご参照いただきたい。
▷今回の題材
10年退職金事件
(最判昭和58年12月6日(集民140号589頁))
《概要》
X社は、従業員らと協議の上、勤続満10年定年制(勤続満10年をもって定年とし、退職金も支給する。その後も改めての採用があり得る)を採用・実施した。これに基づき、従業員らは、定年に達したものとしていったんX社を退職し、X社は、従業員らに対し退職金名義の金員(本件退職金)を支給した上、これを従業員らの退職所得として、源泉徴収納付に係る所得税を納付した。なお、従業員らの大部分は、この後も従前どおりの形態でX社に勤務しており、社会保険の切替等もなされなかった。
これを受けて、Y税務署長が、X社に対し、本件退職金は給与所得に該当するとして、源泉徴収納付義務告知処分を行ったので、X社は、これを不服として争った。
一審・二審は、X社の主張を認め、本件退職金は退職所得に該当すると判断したが、最高裁は、原審では審理が尽くされていないとして、原審を破棄し、二審に差し戻した。
《関係図》
▷争点
本件退職金は退職所得に該当するか。
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