公開日: 2017/06/08 (掲載号:No.221)
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さっと読める! 実務必須の[重要税務判例] 【第27回】「賃料増額請求事件」~最判昭和53年2月24日(民集32巻1号43頁)~

筆者: 菊田 雅裕

さっと読める!

実務必須の

[重要税務判例]

【第27回】

「賃料増額請求事件」

~最判昭和53年2月24日(民集32巻1号43頁)~

 

弁護士 菊田 雅裕

 

-本連載の趣旨-

本連載は、税務分野の重要判例の要旨を、できるだけ簡単な形でご紹介するものである。

税務争訟は、請求内容や主張立証等が細かく煩雑となりやすい類型の争訟であり、事件の正確な理解のためには、処分経過の把握や判決文の十分な読み込み等が必要となってくるが、若手税理士をはじめとする多忙な読者諸氏が、日常業務をこなしつつ判例研究の時間を確保することは、容易なことではないであろう。他方、これから税務重要判例を知識として蓄積していこうとする者にとっては、要点の把握すら困難な事件も数多い。

本連載では、解説のポイントを絞り、時には大胆な要約や言い換え等も行って、上記のような読者の方に、重要判例の概要を素早く把握していただこうと考えている。

このような企画趣旨から、本連載における解説は、自ずと必要最低限のものとなり、基礎知識の説明、判例の繊細なニュアンスの紹介、多角的な分析、主要な争点以外の判断事項の紹介等を省略することも多くなると思われるが、ご容赦をいただきたい。

なお、より深い内容については、できるだけ論末において他稿をご紹介するので、そちらをご参照いただきたい。

▷今回の題材

賃料増額請求事件

(最判昭和53年2月24日(民集32巻1号43頁))

《概要》

今回紹介する判例は、以下のような事案である。

Xは、Aに土地を貸していたが、昭和30年、Aに対し、賃料を増額する旨の意思表示をし、昭和32年、賃料増額請求訴訟を提起した(なお、訴訟提起の前日に、Aの賃料不払に基づき賃貸借契約を解除した)。Xは、一審・二審とも勝訴した。Xの勝訴判決には、仮執行宣言が付されていた。

Aは上告したが、上告審係属中の昭和37年及び39年に、滞納賃料・賃料相当損害金をいったんXに支払っていた(昭和37年・39年とも、賃料の増額を踏まえても、1年分の額を大きく超える額)。その後、Aの上告が棄却され、X勝訴の判決が確定した。

Y税務署長は、Xが昭和37年及び39年に支払を受けた金員は、その各年分の不動産所得に当たるとして、Xに対し更正処分を行った。そこでXが同処分の取消しを求めて出訴したのが本件である。

最高裁は、XがAから収受した賃料相当額は、昭和37年及び39年それぞれの不動産所得に当たり、それぞれの年分の収入金額に算入すべきであるとして、更正処分は適法であると判断した。

 

《関係図》

               ⑧ ⑥の各支払金は昭和37年・39年分の                 不動産所得に当たるとして更正処分             X                   Y税務署長                ① 昭和30年、賃料を増額する旨の意思表示               ② 昭和32年、Aとの賃貸借契約を賃料不払解除               ③ ②の翌日、賃料増額請求訴訟提起               ④ 昭和35年、一審で勝訴(仮執行宣言付)               ⑤ 昭和37年、二審でも概ね同内容で勝訴  ⑥ 係争中に、未払いと   なっていた滞納賃料・   賃料相当額を支払う   (昭和37年、39年)               ⑦ 昭和40年、X勝訴の判決が確定(Aの上告が棄却)              A

▷争点

XがAから収受した賃料相当額は、どの年分の収入金額とみるべきか。

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[重要税務判例]

【第27回】

「賃料増額請求事件」

~最判昭和53年2月24日(民集32巻1号43頁)~

 

弁護士 菊田 雅裕

 

-本連載の趣旨-

本連載は、税務分野の重要判例の要旨を、できるだけ簡単な形でご紹介するものである。

税務争訟は、請求内容や主張立証等が細かく煩雑となりやすい類型の争訟であり、事件の正確な理解のためには、処分経過の把握や判決文の十分な読み込み等が必要となってくるが、若手税理士をはじめとする多忙な読者諸氏が、日常業務をこなしつつ判例研究の時間を確保することは、容易なことではないであろう。他方、これから税務重要判例を知識として蓄積していこうとする者にとっては、要点の把握すら困難な事件も数多い。

本連載では、解説のポイントを絞り、時には大胆な要約や言い換え等も行って、上記のような読者の方に、重要判例の概要を素早く把握していただこうと考えている。

このような企画趣旨から、本連載における解説は、自ずと必要最低限のものとなり、基礎知識の説明、判例の繊細なニュアンスの紹介、多角的な分析、主要な争点以外の判断事項の紹介等を省略することも多くなると思われるが、ご容赦をいただきたい。

なお、より深い内容については、できるだけ論末において他稿をご紹介するので、そちらをご参照いただきたい。

▷今回の題材

賃料増額請求事件

(最判昭和53年2月24日(民集32巻1号43頁))

《概要》

今回紹介する判例は、以下のような事案である。

Xは、Aに土地を貸していたが、昭和30年、Aに対し、賃料を増額する旨の意思表示をし、昭和32年、賃料増額請求訴訟を提起した(なお、訴訟提起の前日に、Aの賃料不払に基づき賃貸借契約を解除した)。Xは、一審・二審とも勝訴した。Xの勝訴判決には、仮執行宣言が付されていた。

Aは上告したが、上告審係属中の昭和37年及び39年に、滞納賃料・賃料相当損害金をいったんXに支払っていた(昭和37年・39年とも、賃料の増額を踏まえても、1年分の額を大きく超える額)。その後、Aの上告が棄却され、X勝訴の判決が確定した。

Y税務署長は、Xが昭和37年及び39年に支払を受けた金員は、その各年分の不動産所得に当たるとして、Xに対し更正処分を行った。そこでXが同処分の取消しを求めて出訴したのが本件である。

最高裁は、XがAから収受した賃料相当額は、昭和37年及び39年それぞれの不動産所得に当たり、それぞれの年分の収入金額に算入すべきであるとして、更正処分は適法であると判断した。

 

《関係図》

               ⑧ ⑥の各支払金は昭和37年・39年分の                 不動産所得に当たるとして更正処分             X                   Y税務署長                ① 昭和30年、賃料を増額する旨の意思表示               ② 昭和32年、Aとの賃貸借契約を賃料不払解除               ③ ②の翌日、賃料増額請求訴訟提起               ④ 昭和35年、一審で勝訴(仮執行宣言付)               ⑤ 昭和37年、二審でも概ね同内容で勝訴  ⑥ 係争中に、未払いと   なっていた滞納賃料・   賃料相当額を支払う   (昭和37年、39年)               ⑦ 昭和40年、X勝訴の判決が確定(Aの上告が棄却)              A

▷争点

XがAから収受した賃料相当額は、どの年分の収入金額とみるべきか。

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連載目次

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第1回~第90回

筆者紹介

菊田 雅裕

(きくた・まさひろ)

弁護士
横浜よつば法律税務事務所

【略歴】
・平成13年 東京大学法学部卒業
・平成16年 司法試験合格
・平成18年 弁護士登録
・平成23~25年 福岡国税不服審判所 国税審判官
・平成25~26年 東京国税不服審判所 国税審判官

【著書】
さっと読める!実務必須の重要税務判例70』(清文社、2021年)

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