谷口教授と学ぶ
税法基本判例
【第59回】
「「譲渡所得課税の趣旨」法理の限定的な「復権・本領発揮」」
-タキゲン事件・最判令和2年3月24日訟月66巻12号1925頁-
大阪学院大学法学部教授
谷口 勢津夫
Ⅰ はじめに
第55回から前回まで4回にわたって判例法理としての「譲渡所得課税の趣旨」法理(学説では増加益清算課税説)に着目し、同法理の枠内における(譲渡所得の本質的意義(理論[包括的所得概念論]的意義)に基づく)譲渡所得課税❶と(譲渡所得の実定法的意義に基づく)譲渡所得課税❷との「競い合い」(「趣旨内競い合い」)の観点から、譲渡所得課税に関する判例を検討してきたが、その検討を通じて、譲渡所得をめぐる課税問題の司法的解決において同法理が基軸に据えられてきたことを確認した(前々回Ⅳ、前回Ⅳ参照)。
同時に、その検討を通じて、「譲渡所得課税の趣旨」法理は、適用場面によって、「趣旨内競い合い」における位置づけないし意味を異にし、同法理の適用の仕方に紆余曲折がみられることも明らかになった。筆者はそのことを、同法理の枠内における「趣旨内競い合い」の観点から、「遅れ挽回」(第55回)、「独走」(第56回)、「『牽引力』の減退と復活・遮断(『どんでん返し』)」(第57回)、「離脱」(第58回)等の言葉で、表現してきた。
ただ、今回取り上げるタキゲン事件・最判令和2年3月24日訟月66巻12号1925頁(以下「令和2年最判」という)は、「譲渡所得課税の趣旨」法理を、これを創設した最判昭和43年10月31日訟月14巻12号1442頁(以下「昭和43年最判」という。第55回参照)と同じく、みなし譲渡課税の場面で適用し、その場面に限って同法理の「復権・本領発揮」を実現したように思われる。
今回は、令和2年最判における「譲渡所得課税の趣旨」法理の「復権・本領発揮」の意味を検討することにする。まず、令和2年最判の判断内容からみておくことにしよう。
なお、令和2年最判については、既に第6回において、租税通達の「解釈」の問題を検討した。今回も、その問題に関する裁判所の判断にも言及はするが、その問題は検討の主たる対象としないことを予めお断りしておく。
Ⅱ 令和2年最判の判断内容
令和2年最判では、個人が法人に対して行った取引相場のない株式の譲渡に係る所得税法59条1項所定の「その時における価額」の意義が争われたが、同最判は、まず、譲渡所得に対する課税について、「譲渡所得課税の趣旨」法理に従って下記のとおり判示した(下線筆者)。
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