〔事例で使える〕中小企業会計指針・会計要領
《賞与引当金》編
【第1回】
「支給見込額基準」
公認会計士・税理士 前原 啓二
本連載の趣旨
「中小企業の会計に関する指針」(以下「中小企業会計指針」とします)は、中小企業が計算書類の作成に当たり拠ることが望ましい会計処理等を示すもので、一定の水準を保ったものとされています。これに比べ簡単な会計処理をすることが適切と考えられる中小企業を対象に「中小企業の会計に関する基本要領」も公表されました。
しかし、これらは簡潔に文章で記載されており、概念的には理解できても、実際にはどのように会計処理するのかがわからないため、仕方なく法人税法の規定による決算処理を続けている中小企業が散見されます。
そこで、本連載では、実際の中小企業で行われている基本的かつ重要な会計処理の事例をテーマごとに選び出し、「中小企業会計指針」等に基づく会計処理の一例について数値例を用いて具体的に示して、実務上のモデルとなるように解説します。また、法人税法規定による処理との差異と税務調整についても紹介します。
テーマについては、「中小企業会計指針」等に基づく会計処理と法人税法規定による処理との差異が顕著なものから順次取り上げます。
連載の第3弾として、賞与引当金を取り上げます。
本連載が、「中小企業会計指針」等のより一層の普及、さらに、中小企業の経営実態の正確な把握や適切な経営管理への発展に、少しでもつながれば幸いです。
《賞与引当金》編のラインナップ
- 【第1回】 支給見込額基準(本稿)
- 【第2回】 支給対象期間基準
- 【第3回】 未払賞与
- 【第4回】 役員賞与引当金
はじめに
個別注記表の重要な会計方針において、賞与引当金の計上基準として、「従業員の賞与支給に備えるため、支給見込額の当期負担分を計上している」という記載を見ることがあります。
今回は、賞与引当金の原則的な計上方法である『支給見込額基準』についてご紹介します。
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