公開日: 2015/11/26 (掲載号:No.146)
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さっと読める! 実務必須の[重要税務判例] 【第4回】「遡及立法事件」~最判平成23年9月22日(民集65巻6号2756頁)~

筆者: 菊田 雅裕

さっと読める!

実務必須の

[重要税務判例]

【第4回】

「遡及立法事件」

~最判平成23年9月22日(民集65巻6号2756頁)~

 

弁護士 菊田 雅裕

 

-本連載の趣旨-

本連載は、税務分野の重要判例の要旨を、できるだけ簡単な形でご紹介するものである。

税務争訟は、請求内容や主張立証等が細かく煩雑となりやすい類型の争訟であり、事件の正確な理解のためには、処分経過の把握や判決文の十分な読み込み等が必要となってくるが、若手税理士をはじめとする多忙な読者諸氏が、日常業務をこなしつつ判例研究の時間を確保することは、容易なことではないであろう。他方、これから税務重要判例を知識として蓄積していこうとする者にとっては、要点の把握すら困難な事件も数多い。

本連載では、解説のポイントを絞り、時には大胆な要約や言い換え等も行って、上記のような読者の方に、重要判例の概要を素早く把握していただこうと考えている。

このような企画趣旨から、本連載における解説は、自ずと必要最低限のものとなり、基礎知識の説明、判例の繊細なニュアンスの紹介、多角的な分析、主要な争点以外の判断事項の紹介等を省略することも多くなると思われるが、ご容赦をいただきたい。

なお、より深い内容については、できるだけ論末において他稿をご紹介するので、そちらをご参照いただきたい。

▷今回の題材

遡及立法事件

最判平成23年9月22日(民集65巻6号2756頁)

《概要》

長期譲渡所得について損失がある場合に損益通算を認めていた規定が廃止された際(租税特別措置法31条の改正)、改正後の規定は、法律の施行日(平成16年4月1日)以降でなく、年初以降の譲渡に適用されることとなった(改正法の附則27条1項)。

今回紹介する判例は、平成16年1月1日から上記法律の施行日までの間に長期譲渡を行ったXが、損益通算を認めないのは納税者に不利な遡及立法であり憲法84条に違反するなどと主張して争った事案である。
結論として、最高裁は、Xの主張を認めなかった。

《関係図》

④平成16年分の所得税の確定申告(損益通算せず)            ⑤更正の請求(損益通算認めるべき)            X              Y税務署長    ②長期譲渡      ⑥更正をすべき理由が   (平成16年       ない旨の通知処分    1月30日)                    ① 平成16年度税制改正大綱                    (長期譲渡所得の損益通算の廃止を予定)           A       ③ ①の内容につき租税特別措置法31条の改正                    (平成16年2月3日国会提出                     同年3月26日成立同月31日公布                     同年4月1日施行                     なお、同年1月1日以降の譲渡に適用)

▷争点

損益通算の廃止の適用を平成16年1月1日からとした改正租税特別措置法の附則の規定は、憲法84条の租税法律主義の趣旨に反するか。

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【第4回】

「遡及立法事件」

~最判平成23年9月22日(民集65巻6号2756頁)~

 

弁護士 菊田 雅裕

 

-本連載の趣旨-

本連載は、税務分野の重要判例の要旨を、できるだけ簡単な形でご紹介するものである。

税務争訟は、請求内容や主張立証等が細かく煩雑となりやすい類型の争訟であり、事件の正確な理解のためには、処分経過の把握や判決文の十分な読み込み等が必要となってくるが、若手税理士をはじめとする多忙な読者諸氏が、日常業務をこなしつつ判例研究の時間を確保することは、容易なことではないであろう。他方、これから税務重要判例を知識として蓄積していこうとする者にとっては、要点の把握すら困難な事件も数多い。

本連載では、解説のポイントを絞り、時には大胆な要約や言い換え等も行って、上記のような読者の方に、重要判例の概要を素早く把握していただこうと考えている。

このような企画趣旨から、本連載における解説は、自ずと必要最低限のものとなり、基礎知識の説明、判例の繊細なニュアンスの紹介、多角的な分析、主要な争点以外の判断事項の紹介等を省略することも多くなると思われるが、ご容赦をいただきたい。

なお、より深い内容については、できるだけ論末において他稿をご紹介するので、そちらをご参照いただきたい。

▷今回の題材

遡及立法事件

最判平成23年9月22日(民集65巻6号2756頁)

《概要》

長期譲渡所得について損失がある場合に損益通算を認めていた規定が廃止された際(租税特別措置法31条の改正)、改正後の規定は、法律の施行日(平成16年4月1日)以降でなく、年初以降の譲渡に適用されることとなった(改正法の附則27条1項)。

今回紹介する判例は、平成16年1月1日から上記法律の施行日までの間に長期譲渡を行ったXが、損益通算を認めないのは納税者に不利な遡及立法であり憲法84条に違反するなどと主張して争った事案である。
結論として、最高裁は、Xの主張を認めなかった。

《関係図》

④平成16年分の所得税の確定申告(損益通算せず)            ⑤更正の請求(損益通算認めるべき)            X              Y税務署長    ②長期譲渡      ⑥更正をすべき理由が   (平成16年       ない旨の通知処分    1月30日)                    ① 平成16年度税制改正大綱                    (長期譲渡所得の損益通算の廃止を予定)           A       ③ ①の内容につき租税特別措置法31条の改正                    (平成16年2月3日国会提出                     同年3月26日成立同月31日公布                     同年4月1日施行                     なお、同年1月1日以降の譲渡に適用)

▷争点

損益通算の廃止の適用を平成16年1月1日からとした改正租税特別措置法の附則の規定は、憲法84条の租税法律主義の趣旨に反するか。

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連載目次

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第1回~第90回

筆者紹介

菊田 雅裕

(きくた・まさひろ)

弁護士
横浜よつば法律税務事務所

【略歴】
・平成13年 東京大学法学部卒業
・平成16年 司法試験合格
・平成18年 弁護士登録
・平成23~25年 福岡国税不服審判所 国税審判官
・平成25~26年 東京国税不服審判所 国税審判官

【著書】
さっと読める!実務必須の重要税務判例70』(清文社、2021年)

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