租税争訟レポート
【第41回】
「太陽光発電設備の減価償却をめぐる問題
(国税不服審判所平成30年3月27日裁決、同6月19日裁決)」
税理士・公認不正検査士(CFE)
米澤 勝
国の再生可能エネルギー転換政策への後押しもあって、一時期、太陽光発電事業への参入がブームとなっていたこともあり、近時の公表裁決事例でも、太陽光発電設備に関係した裁決が多く取り上げられている。
太陽光発電設備を設置してから、電力会社への供給を開始するためには、発電設備を商用電力系統に接続することを意味する「系統連系」が必要であり、一般的には、系統連系が実施された日である売電が可能となった日をもって、「事業の用に供した日」と判断されている。
本稿では、こうした太陽光発電設備の減価償却をめぐる問題について、2つの公表裁決事例を参考に、検討を行いたい。
〈事案その1〉
法人税等の更正処分及び過少申告加算税の
賦課決定処分取消審査請求
国税不服審判所平成30年6月19日裁決
[審査請求人]
一般区域貨物自動車運送事業並びに太陽光発電及び売電に関する事業を目的とする法人
[争点]
〔1〕 本件発電システム本体は、本件事業年度内に事業の用に供したと認められるか否か[争点1]。
〔2〕 本件フェンス等は、本件事業年度内に事業の用に供したと認められるか否か[争点2]。
〔3〕 本件負担金は、本件事業年度における繰延資産に該当するか否か[争点3]。
[判決]
一部取消し
【事案の概要】
本件は、審査請求人が、太陽光発電設備等を取得した事業年度において当該設備等に係る償却費の額を損金の額に算入して法人税等の確定申告をしたところ、原処分庁が、当該設備等は当該事業年度において事業の用に供していないから当該設備等に係る償却費の額を損金の額に算入することはできないなどとして、法人税等の更正処分等をしたのに対し、請求人が、原処分の全部の取消しを求めた事案である。
争点のうち、国税不服審判所は、[争点2]に掲げる太陽光発電設備等を囲むフェンス等については、売電事業が行われる前であっても、事業の用に供していたとして、フェンス等に係る減価償却費の損金算入を認めたため、本稿では、この[争点2]に絞って、審判所の判断の過程を検討したい。
この記事全文をご覧いただくには、プロフェッションネットワークの会員(プレミアム
会員又は一般会員)としてのログインが必要です。
通常、Profession Journalはプレミアム会員専用の閲覧サービスですので、プレミアム
会員のご登録をおすすめします。
プレミアム会員の方は下記ボタンからログインしてください。
プレミアム会員のご登録がお済みでない方は、下記ボタンから「プレミアム会員」を選択の上、お手続きください。