公開日: 2019/02/07 (掲載号:No.305)
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租税争訟レポート 【第41回】「太陽光発電設備の減価償却をめぐる問題(国税不服審判所平成30年3月27日裁決、同6月19日裁決)」

筆者: 米澤 勝

租税争訟レポート

【第41回】

「太陽光発電設備の減価償却をめぐる問題

(国税不服審判所平成30年3月27日裁決、同6月19日裁決)」

 

税理士・公認不正検査士(CFE)
米澤 勝

 

国の再生可能エネルギー転換政策への後押しもあって、一時期、太陽光発電事業への参入がブームとなっていたこともあり、近時の公表裁決事例でも、太陽光発電設備に関係した裁決が多く取り上げられている。

太陽光発電設備を設置してから、電力会社への供給を開始するためには、発電設備を商用電力系統に接続することを意味する「系統連系」が必要であり、一般的には、系統連系が実施された日である売電が可能となった日をもって、「事業の用に供した日」と判断されている。

本稿では、こうした太陽光発電設備の減価償却をめぐる問題について、2つの公表裁決事例を参考に、検討を行いたい。

〈事案その1〉

法人税等の更正処分及び過少申告加算税の
賦課決定処分取消審査請求

国税不服審判所平成30年6月19日裁決

[審査請求人]

一般区域貨物自動車運送事業並びに太陽光発電及び売電に関する事業を目的とする法人

[争点]

〔1〕 本件発電システム本体は、本件事業年度内に事業の用に供したと認められるか否か[争点1]

〔2〕 本件フェンス等は、本件事業年度内に事業の用に供したと認められるか否か[争点2]

〔3〕 本件負担金は、本件事業年度における繰延資産に該当するか否か[争点3]

[判決]

一部取消し

 

【事案の概要】

本件は、審査請求人が、太陽光発電設備等を取得した事業年度において当該設備等に係る償却費の額を損金の額に算入して法人税等の確定申告をしたところ、原処分庁が、当該設備等は当該事業年度において事業の用に供していないから当該設備等に係る償却費の額を損金の額に算入することはできないなどとして、法人税等の更正処分等をしたのに対し、請求人が、原処分の全部の取消しを求めた事案である。

争点のうち、国税不服審判所は、[争点2]に掲げる太陽光発電設備等を囲むフェンス等については、売電事業が行われる前であっても、事業の用に供していたとして、フェンス等に係る減価償却費の損金算入を認めたため、本稿では、この[争点2]に絞って、審判所の判断の過程を検討したい。

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租税争訟レポート

【第41回】

「太陽光発電設備の減価償却をめぐる問題

(国税不服審判所平成30年3月27日裁決、同6月19日裁決)」

 

税理士・公認不正検査士(CFE)
米澤 勝

 

国の再生可能エネルギー転換政策への後押しもあって、一時期、太陽光発電事業への参入がブームとなっていたこともあり、近時の公表裁決事例でも、太陽光発電設備に関係した裁決が多く取り上げられている。

太陽光発電設備を設置してから、電力会社への供給を開始するためには、発電設備を商用電力系統に接続することを意味する「系統連系」が必要であり、一般的には、系統連系が実施された日である売電が可能となった日をもって、「事業の用に供した日」と判断されている。

本稿では、こうした太陽光発電設備の減価償却をめぐる問題について、2つの公表裁決事例を参考に、検討を行いたい。

〈事案その1〉

法人税等の更正処分及び過少申告加算税の
賦課決定処分取消審査請求

国税不服審判所平成30年6月19日裁決

[審査請求人]

一般区域貨物自動車運送事業並びに太陽光発電及び売電に関する事業を目的とする法人

[争点]

〔1〕 本件発電システム本体は、本件事業年度内に事業の用に供したと認められるか否か[争点1]

〔2〕 本件フェンス等は、本件事業年度内に事業の用に供したと認められるか否か[争点2]

〔3〕 本件負担金は、本件事業年度における繰延資産に該当するか否か[争点3]

[判決]

一部取消し

 

【事案の概要】

本件は、審査請求人が、太陽光発電設備等を取得した事業年度において当該設備等に係る償却費の額を損金の額に算入して法人税等の確定申告をしたところ、原処分庁が、当該設備等は当該事業年度において事業の用に供していないから当該設備等に係る償却費の額を損金の額に算入することはできないなどとして、法人税等の更正処分等をしたのに対し、請求人が、原処分の全部の取消しを求めた事案である。

争点のうち、国税不服審判所は、[争点2]に掲げる太陽光発電設備等を囲むフェンス等については、売電事業が行われる前であっても、事業の用に供していたとして、フェンス等に係る減価償却費の損金算入を認めたため、本稿では、この[争点2]に絞って、審判所の判断の過程を検討したい。

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連載目次

租税争訟レポート

第1回~第60回

筆者紹介

米澤 勝

(よねざわ・まさる)

税理士・公認不正検査士(CFE)

1997年12月 税理士試験合格
1998年2月 富士通サポートアンドサービス株式会社(現社名:株式会社富士通エフサス)入社。経理部配属(税務、債権管理担当)
1998年6月 税理士登録(東京税理士会)
2007年4月 経理部からビジネスマネジメント本部へ異動。内部統制担当
2010年1月 株式会社富士通エフサス退職。税理士として開業(現在に至る)

【著書】

・『新版 架空循環取引─法務・会計・税務の実務対応』共著(清文社・2019)

・『企業はなぜ、会計不正に手を染めたのか-「会計不正調査報告書」を読む-』(清文社・2014)

・「企業内不正発覚後の税務」『税務弘報』(中央経済社)2011年9月号から2012年4月号まで連載(全6回)

【寄稿】

・(インタビュー)「会計監査クライシスfile.4 不正は指摘できない」『企業会計』(2016年4月号、中央経済社)

・「不正をめぐる会計処理の考え方と実務ポイント」『旬刊経理情報』(2015年4月10日号、中央経済社)

【セミナー・講演等】

一般社団法人日本公認不正検査士協会主催
「会計不正の早期発見
――不正事例における発覚の経緯から考察する効果的な対策」2016年10月

公益財団法人日本監査役協会主催
情報連絡会「不正会計の早期発見手法――監査役の視点から」2016年6月

株式会社プロフェッションネットワーク主催
「企業の会計不正を斬る!――最新事例から学ぶ,その手口と防止策」2015年11月

 

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