〈一角塾〉
図解で読み解く国際租税判例
【第18回】
「りそな外税控除否認事件
(地判平13.12.14、高判平15.5.14、最判平17.12.19)(その1)」
~法人税法69条~
公認会計士・税理士 西川 浩史
1 はじめに
ここでは都市銀行による外国税額控除余裕枠の利用取引に関する訴訟事案(※1)の1つである「りそな外税控除否認事件」について、その概要及び最高裁の見解を説明した上で主たる論点に検討を加えてみることにする。「りそな外税控除否認事件」に関しては様々な論点があり、それらを検討することは国際租税判例を学ぶ上で意義があると理解する。
(※1) 都市銀行による外国税額控除余裕枠の利用取引に関する訴訟事案としては、他に旧住友銀行(現三井住友銀行)事案と旧三和銀行(現三菱UFJ銀行)事案がある。
2 事案の概要及び背景
(1) 事案の概要(※2)
(※2) 山崎昇「課税庁からみた国際的租税回避否認についての研究ノート-3つの最高裁判決から学ぶ国際的租税回避への対応-」税務大学校論叢52号716頁(2006)を参考にしている。
りそな銀行(旧大和銀行:以下「X」という)は、ニュージーランド法人(以下「A社」という)のクック諸島子会社2社(以下「B社」「C社」という)間の金銭消費貸借取引にXのシンガポール支店を介在させ(具体的にはC社から預金を預り、その資金をB社に貸付)、その金利差を収益とした(以下「本件取引」という)が、利息を受け取る際に源泉税が控除されるため現金収支はマイナスとなっていた。しかし、Xは我が国での法人税申告にあたり外国税額控除の余裕額があったため、当該余裕額を利用し納付すべき法人税からこの外国源泉税を税額控除して申告することにより、最終的な現金収支はプラスになっていた。
課税庁(以下「Y」という)は、税務調査後、この外国税額控除を否認して更正処分をした。しかし、Xは当該処分を不服として最終的には税務訴訟を起こした。本事案の争点は、本件取引について、法人税法69条(※3)(外国税額控除の規定)が適用できるか否かである。
(※3) 平成10年法律第24号による改正前のものをいう。以下同じ。なお、平成13年度税制改正にて外国法人税を納付する場合からは「内国法人が通常行われる取引と認められないものとして政令で定める取引に基因して生じた所得に対する外国法人税を納付する場合」が除かれることになり、本事案のような取引から生じた外国法人税には外国税額控除が適用できなくなった。
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