〈一角塾〉
図解で読み解く国際租税判例
【第31回】
「武田薬品工業事件-無形資産の形成による移転価格税制の影響-(大裁平25.3.18)(その3)」
~租税特別措置法66条の4第1項、第2項~
税理士 中野 亘
《(その1)はこちら》
1 移転価格税制における無形資産の取扱い
2 基礎事実
◎ 独立企業間価格
① 独立企業間価格の算定方法
② 残余利益の配分計算
《(その2)はこちら》
3 争点
◎ 臨床試験費用のうち請求人が負担した費用の取扱いについて
① 無形資産の法的所有関係について
② 意思決定、費用負担及びリスク管理の主体について
4 判断
(1) 認定事実
医薬が満たすべき条件は大変な数に上り、製薬会社がテストした化合物のうち医薬品として世に出るのは、ごく僅かな数である。実際の医薬品の研究開発は、細胞レベル・動物レベルの実験などで有効性・毒性などを確認し、医薬の候補化合物を見つける「前臨床段階」と、その化合物を実際に人に投与して治療効果・安全性などを確認する「臨床段階」の2つの段階に大きく分かれる。そして、医薬品業界では伝統的に、前臨床段階を行う部署を「研究」、臨床試験を担当する部署を「開発」と呼び分けている。
米国等において医薬品の販売を開始するためには、FDA等に対して新薬治験申請(IND等)をした上で、米国等においてフェーズⅠないしフェーズⅢの臨床試験が実施され、その実施結果等を受けてFDA等に対して新薬の販売承認申請(NDA等)を行い、その審査を経て、FDA等による販売の承認を得ることが必要である(なお、当該医薬品の販売が開始された後も、フェーズⅣの臨床試験を実施する必要がある)。欧米と日本では、明らかに遺伝子において民族的違いがあり、薬の体内での代謝において民族的レベルでの違いがあることが知られているため、日本の臨床試験データは米国では活用することができず、現地での臨床試験が必要とされていた。なお、ランソプラゾールは、TAP社による米国等におけるプレバシッドの名称による販売の開始に先立ち、・・・複数の国ですでに販売されており、日本国内においても、請求人によって平成4年からタケプロンの名称で販売されていた。
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