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実務必須の
[重要税務判例]
【第53回】
「給与回収のための強制執行と源泉徴収義務事件」
~最判平成23年3月22日(民集65巻2号735頁)~
弁護士 菊田 雅裕
-本連載の趣旨-
本連載は、税務分野の重要判例の要旨を、できるだけ簡単な形でご紹介するものである。
税務争訟は、請求内容や主張立証等が細かく煩雑となりやすい類型の争訟であり、事件の正確な理解のためには、処分経過の把握や判決文の十分な読み込み等が必要となってくるが、若手税理士をはじめとする多忙な読者諸氏が、日常業務をこなしつつ判例研究の時間を確保することは、容易なことではないであろう。他方、これから税務重要判例を知識として蓄積していこうとする者にとっては、要点の把握すら困難な事件も数多い。
本連載では、解説のポイントを絞り、時には大胆な要約や言い換え等も行って、上記のような読者の方に、重要判例の概要を素早く把握していただこうと考えている。
このような企画趣旨から、本連載における解説は、自ずと必要最低限のものとなり、基礎知識の説明、判例の繊細なニュアンスの紹介、多角的な分析、主要な争点以外の判断事項の紹介等を省略することも多くなると思われるが、ご容赦をいただきたい。
なお、より深い内容については、できるだけ論末において他稿をご紹介するので、そちらをご参照いただきたい。
▷今回の題材
給与回収のための強制執行と源泉徴収義務事件
最判平成23年3月22日(民集65巻2号735頁)
《概要》
X社は従業員Yを懲戒解雇したが、Yはその無効と未払賃金の支払を求めてX社を提訴し、勝訴判決を得た(未払賃金については、源泉所得税を控除しない金額の支払を命じる内容だった)。Yは、これに基づき、X社の事務所内の現金を目的とする動産執行を行ったので、X社は、担当の執行官に対し、未払賃金全額に相当する弁済の提供をした。
その後、Z税務署長は、これに関し、X社に対して源泉所得税についての納税の告知をした。X社はこれに応じて源泉所得税を納付した上、Yに対し、源泉所得税相当額を返還するよう求めたのが本件である。
《関係図》
▷争点
給与等の支払をする者は、その支払を命じる判決に基づく強制執行によりその回収を受ける場合でも、源泉徴収義務を負うか。
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