公開日: 2022/11/17 (掲載号:No.495)
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〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第4回】「米国デラウェア州LPSの法人該当性(地判平23.12.14、高判平25.1.24、最判平27.7.17)(その1)」~米国デラウェア州法201条(b)、所得税法2条1項7号等、租税特別措置法41条の4の2、民法33条、36条~

筆者: 金山 知明

〈一角塾〉

図解で読み解く国際租税判例

【第4回】

「米国デラウェア州LPSの法人該当性
(地判平23.12.14、高判平25.1.24、最判平27.7.17)(その1)」

~米国デラウェア州法201条(b)、所得税法2条1項7号等、租税特別措置法41条の4の2、民法33条、36条~

 

税理士・米国公認会計士 金山 知明

 

  • 名古屋地裁:平成23年12月14日判決【税資261-243(順号11833)】(TAINSコード:Z261-11833)
  • 名古屋高裁:平成25年1月24日判決【税資263-12(順号12136)】(TAINSコード:Z263-12136)
  • 最高裁:平成27年7月17日判決【税資265-117(順号12700)】(TAINSコード:Z265-12700)

 

1 事案の概要

(1) 概要

本件の納税者(居住者X)は、信託銀行との信託契約を介して米国デラウェア州法により設立されたリミテッド・パートナーシップ(以下「LPS」)(※1)が行う不動産賃貸事業にリミテッド・パートナーとして参加した。Xは、本件LPSは日本の租税法上の法人には該当しないので、本件LPSが行う不動産賃貸に係る所得はパス・スルー課税(※2)されて、自己の不動産所得になるとして、減価償却費等による不動産所得の損失金額を他の所得と損益通算して所得税の確定申告を行った。

(※1) デラウェア州法第6編第17章(以下「州LPS法」)101条(11)によれば、リミテッド・パートナーシップとは、1名以上のジェネラル・パートナーと、1名以上のリミテッド・パートナーにより組成されるパートナーシップである。なお、ジェネラル・パートナーはLPSの債務について無限責任を負い、リミテッド・パートナーは基本的にはLPSの債務について責任を負わない(州LPS法303条(a)及び403条(b))。

(※2) 日本の税法上「パス・スルー課税」の定義は規定されていないが、一般に、事業体に生じた損益をその事業体の所得として課税することなく、出資者などの構成員に直接生じた所得として課税する(構成員課税)方式をいう。米国の内国歳入法典(以下「IRC」)1366(b)によれば、事業体に生じた損益をあたかも出資者により直接実現されたように出資者に帰属させることとされている。

これに対し課税庁Yが、本件LPSは租税法上の法人に該当し、その法人から受けた所得(損失)は納税者の不動産所得(の損失)には当たらないとして、Xの平成13年分から平成17年分までの損益通算を否認し、更正処分等を行ったため、Xがこれを不服として訴訟を提起した。

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【第4回】

「米国デラウェア州LPSの法人該当性
(地判平23.12.14、高判平25.1.24、最判平27.7.17)(その1)」

~米国デラウェア州法201条(b)、所得税法2条1項7号等、租税特別措置法41条の4の2、民法33条、36条~

 

税理士・米国公認会計士 金山 知明

 

  • 名古屋地裁:平成23年12月14日判決【税資261-243(順号11833)】(TAINSコード:Z261-11833)
  • 名古屋高裁:平成25年1月24日判決【税資263-12(順号12136)】(TAINSコード:Z263-12136)
  • 最高裁:平成27年7月17日判決【税資265-117(順号12700)】(TAINSコード:Z265-12700)

 

1 事案の概要

(1) 概要

本件の納税者(居住者X)は、信託銀行との信託契約を介して米国デラウェア州法により設立されたリミテッド・パートナーシップ(以下「LPS」)(※1)が行う不動産賃貸事業にリミテッド・パートナーとして参加した。Xは、本件LPSは日本の租税法上の法人には該当しないので、本件LPSが行う不動産賃貸に係る所得はパス・スルー課税(※2)されて、自己の不動産所得になるとして、減価償却費等による不動産所得の損失金額を他の所得と損益通算して所得税の確定申告を行った。

(※1) デラウェア州法第6編第17章(以下「州LPS法」)101条(11)によれば、リミテッド・パートナーシップとは、1名以上のジェネラル・パートナーと、1名以上のリミテッド・パートナーにより組成されるパートナーシップである。なお、ジェネラル・パートナーはLPSの債務について無限責任を負い、リミテッド・パートナーは基本的にはLPSの債務について責任を負わない(州LPS法303条(a)及び403条(b))。

(※2) 日本の税法上「パス・スルー課税」の定義は規定されていないが、一般に、事業体に生じた損益をその事業体の所得として課税することなく、出資者などの構成員に直接生じた所得として課税する(構成員課税)方式をいう。米国の内国歳入法典(以下「IRC」)1366(b)によれば、事業体に生じた損益をあたかも出資者により直接実現されたように出資者に帰属させることとされている。

これに対し課税庁Yが、本件LPSは租税法上の法人に該当し、その法人から受けた所得(損失)は納税者の不動産所得(の損失)には当たらないとして、Xの平成13年分から平成17年分までの損益通算を否認し、更正処分等を行ったため、Xがこれを不服として訴訟を提起した。

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連載目次

〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例

◆最新テーマ

▷ファイナイト再保険事件(地判平20.11.27、高判平22.5.27)〔西川浩史〕

◆これまでに取り上げたテーマ

筆者紹介

金山 知明

(かなやま・ともあき)

税理士・米国公認会計士 金山知明税理士事務所所長。近畿税理士会灘支部所属。

1997年 神戸市外国語大学卒業
2007年 税理士登録
2014年 米国公認会計士登録(ワシントン州)
2016年 英国グラスゴー大学ビジネススクール(MBA)修了
2020年 島根県の税理士法人を退職し、個人税理士事務所開業(現在に至る)
2021年 広島大学社会科学研究科博士課程(マネジメント)修了
2022年 神戸国際大学経済学部准教授(現在に至る)

2007年に税理士登録して以来、島根県で国税全般の税務代理経験を積んできました。
2015年~2016年のスコットランド留学中にさらなる研究活動を志し、帰国後2017年から博士課程に進みました。
2022年4月から大学で会計科目を教えながら神戸にて税理士業務を継続しています。
今後も関西を拠点に国際税務に関する実務と大学教員経験を積みつつ、特に海外の税制・税務行政をテーマに、意欲をもって研究を続けていきたいと考えています。

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