租税争訟レポート
【第28回】
「馬券の払戻金の所得区分と外れ馬券の
必要経費該当性(東京高等裁判所判決)」
税理士・公認不正検査士(CFE)
米澤 勝
平成28年4月21日、東京高等裁判所は、原審である東京地方裁判所の判決を破棄、競馬の払戻金に係る所得について、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得であるか否かは、文理に照らし、行為の期間、回数、頻度その他の態様、利益発生の規模、期間その他の状況等の事情を総合考慮して判断するのが相当である」として、所得区分を雑所得、外れ馬券の購入代金を必要経費に含めるという、平成27年3月10日の最高裁判所判決と同様の見解を示す判決を言い渡した。
なお、本高裁判決の原判決については、本連載【第24回】、【第25回】も合わせてご参照いただきたい。
東京高等裁判所平成28年4月21日判決
[原告]
地方公務員である納税者
[被告]
国
処分行政庁:稚内税務署
[争点]
① 競馬所得が、一時所得に該当するか、雑所得に該当するか
② 競馬所得に係る総収入金額から外れ馬券の購入代金を控除できるか否か
[判決]
原判決を取り消し、稚内税務署長による処分を取り消す(納税者勝訴)
【原審】東京地方裁判所平成27年5月14日判決
[判決]
原告の請求を却下(納税者敗訴)
国税不服審判所平成24年6月27日裁決
[裁決]
- 本件競馬所得は一時所得と認めるのが相当
- 本件競馬所得の計算において総収入金額から控除する金額は的中した馬券に係る購入金
【事案の概要】
本件は、馬券の的中による払戻金に係る所得(以下「競馬所得」という)を得ていた控訴人が、平成17年分から平成21年分の所得税に係る申告期限後の確定申告及び平成22年分の所得税に係る申告期限内の確定申告を行い、その際、原告が得た競馬所得は雑所得に該当するとして総所得金額及び納付すべき税額を計算していたところ、所轄税務署長の稚内税務署長から、本件競馬所得は一時所得に該当し、上記各年の一時所得の金額の計算において外れ馬券の購入代金を総収入金額から控除することはできないとして、平成23年3月14日付けで平成17年分から平成21年分の所得税に係る各更正及び各無申告加算税賦課決定を、平成23年3月30日付けで平成22年分の所得税に係る更正及び過少申告加算税賦課決定を、それぞれ受けたことから、これらの各処分(本件各更正処分については総所得金額及び納付すべき税額が確定申告額を超える部分)の取消しを求めた事案である。
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