〈一角塾〉
図解で読み解く国際租税判例
【第24回】
「住友銀行外税控除否認事件
-受益者条項からみたケース別否認類型の検討-
(地判平13.5.18、高判平14.6.14、最判平17.12.19)(その3)」
~法人税法69条ほか~
税理士 畠山 和夫
《(その1)はこちら》
1 はじめに
2 日本の外税控除余裕枠肩代わりスキーム
3 S銀二事件の事実及び背景
(1) S銀二事件の事実の概要
(2) S銀二事件共通の取引条件ポイント
4 主な課税減免規定の適用否認事由に関する争点整理
(1) 否認事由の項目例示
(2) 主な否認事由の争点整理
(3) 7狭義及び8広義(制度濫用理論)の課税減免規定限定解釈に関する賛成反対意見
(4) まとめ
《(その2)はこちら》
5 S銀二事件のケース別の租税条約・外国法令に対する違反性
(1) 外国税額控除と租税条約
(2) ケースⅠ(受益者条項付き租税条約適用:S銀行R事件)
(3) ケースⅡ(受益者条項付き国内法適用:S銀行P事件)
(4) ケースⅢ(受益者条項無し国内法適用:S銀行R事件)
6 外税控除否認の論理構成
(1) 租税条約の受益者条項を租税回避否認規定として直接適用する構成(直接適用論)
① 日本国憲法、国内法と条約の関係
(ⅰ) 日本国憲法と条約の関係(芦辺信喜『憲法 第7版』岩波書店(2019)13頁より筆者要約)
憲法98条1項の列挙から条約が除外されていることが問題となるが、これは条約が憲法に優位することを意味するわけではない。条約は、公布されると原則としてただちに国内法としての効力を持つが、その効力は通説によれば、憲法と法律の中間にあるものと解されている。
(ⅱ) 租税条約の国内法として直接適用の可否(川端康之「租税条約上の租税回避否認」税大ジャーナル第15号7頁を筆者要約)
a.国内法と租税条約上の租税回避否認規定の関係に関する学説の対立
直接適用可能説:条約上の租税回避否認規定を納税者の行為に直接適用し得る。
国内立法必要説:条約上の租税回避否認規定を適用するには国内法令が必要。
b.直接適用の要件
条約に租税回避否認規定が定められているとしても、そのような規定は直接適用することが可能であるとは限らず、今日の有力な考え方によれば、それを国内的効果を生じさせるために直接適用するには、直接適用可能な他の条約文言と同様、明確かつ完全なものでなければならないと解される。
② 我が国の従来の対応
租税条約の受益者条項は、従来から(1)「租税回避否認規定」ではなく「課税権配分規定」と目されてきたこと、(2)租税条約の我が国への適用については「直接適用可能説」ではなく「国内立法必要説」が通説とされてきたこと、から個別否認規定を持たない我が国では租税条約上の受益者条項違反を租税回避行為として否認することは困難だとされてきた。しかし、川端・前掲「租税条約上の租税回避否認」をベースに、受益者条項の直接適用の可能性を検討したい。
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