公開日: 2022/08/04 (掲載号:No.480)
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monthly TAX views -No.115-「「国の借金は国民の資産」というのは本当だろうか」

筆者: 森信 茂樹

monthly TAX views

-No.115-

「「国の借金は国民の資産」というのは本当だろうか」

 

東京財団政策研究所研究主幹
森信 茂樹

 

本年6月、経団連のシンクタンクである21世紀政策研究所は、「中間層復活に向けた経済財政運営の大転換」と題する、主に以下の内容の報告書を公表した。

わが国経済低迷の根本原因が需要不足にある。それが消費や貯蓄の不足を招き、中間層の衰退を引き起こしている。これはわが国の財政政策がプライマリーバランス黒字化目標にとらわれた財政運営をしてきたことにある。そこでこれを改め、わが国のGDPギャップ(38兆円)を埋めるべく、イノベーションの創設やインフラ整備のための長期計画に基づいて2030年に向けて100兆円の財政を活用した投資が必要だ。国が投資を拡大するためには、国の債務を増加しなければならないが、「債務と同額が国民の資産になるので財政は破綻しない。」仮にインフレが生じれば、政府はインフレが行き過ぎないように財政支出を抑制しなければならない。

「国の借金は国民の資産」という考え方は、明らかにMMT(現代通貨理論)に基づいており、それに対する筆者の考え方は本連載のNo,111で示したとおりであるが、ここでは本当に「国の借金は国民の資産」なのだろうかという点に注目して議論してみたい。

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「「国の借金は国民の資産」というのは本当だろうか」

 

東京財団政策研究所研究主幹
森信 茂樹

 

本年6月、経団連のシンクタンクである21世紀政策研究所は、「中間層復活に向けた経済財政運営の大転換」と題する、主に以下の内容の報告書を公表した。

わが国経済低迷の根本原因が需要不足にある。それが消費や貯蓄の不足を招き、中間層の衰退を引き起こしている。これはわが国の財政政策がプライマリーバランス黒字化目標にとらわれた財政運営をしてきたことにある。そこでこれを改め、わが国のGDPギャップ(38兆円)を埋めるべく、イノベーションの創設やインフラ整備のための長期計画に基づいて2030年に向けて100兆円の財政を活用した投資が必要だ。国が投資を拡大するためには、国の債務を増加しなければならないが、「債務と同額が国民の資産になるので財政は破綻しない。」仮にインフレが生じれば、政府はインフレが行き過ぎないように財政支出を抑制しなければならない。

「国の借金は国民の資産」という考え方は、明らかにMMT(現代通貨理論)に基づいており、それに対する筆者の考え方は本連載のNo,111で示したとおりであるが、ここでは本当に「国の借金は国民の資産」なのだろうかという点に注目して議論してみたい。

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連載目次

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筆者紹介

森信 茂樹

(もりのぶ・しげき)

東京財団政策研究所 研究主幹 「税・社会保障改革ユニット」ユニットリーダー
ジャパン・タックス・インスティチュート 所長
法学博士

1973年京都大学法学部卒業後大蔵省入省、主税局総務課長、大阪大学法学研究科教授、東京税関長、財務総合政策研究所長を最後に2006年退官。2004年プリンストン大学で教鞭をとる。コロンビアロースクール客員研究員。2020年3月まで中央大学法科大学院 特任教授。

【著書】
・『デジタル経済と税-AI時代の富をめぐる攻防』(日本経済新聞出版社)
・『税で日本はよみがえる―成長力を高める改革』(日本経済新聞出版社)
・『消費税、常識のウソ』(朝日新聞出版)
・『日本の税制 ─ 何が問題か』(岩波書店)
・『給付つき税額控除 ─ 日本型児童税額控除の提言』(中央経済社)

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