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-No.22-
「始まるいわゆる『出国税』の検討」
中央大学法科大学院教授
東京財団上席研究員
森信 茂樹
10月21日に開催された政府税調基礎問題小委員会で、いわゆる「出国時の譲渡所得課税の特例」が提出された。この段階で提出されたということは、来年度改正で導入に向けた議論が始まるということであろう。
「出国時特例」とは、
巨額の含み益を有する株式を保有したまま、シンガポール、香港などのキャピタルゲイン非課税国に出国し、その後に売却することにより、税負担を回避する租税回避行動に対応するために、出国時に未実現のキャピタルゲイン〔含み益〕を時価評価して課税する特例措置
のことをいう。
背景には、今後行われる相続税や所得税の課税強化を前に、日本の富裕層が日本脱出を図るタックスプランニングが盛んになりつつあり、また、富裕層を対象とした、タックスヘイブン国への脱出をアドバイスする書物やサービスも拡大しているという事情がある。
政府税調資料によると、シンガポール、香港、ニュージーランド、スイスといったキャピタルゲイン非課税国への永住者数は、ここ10年で2倍以上増加している。
ここ2、3年の間に、国外財産調書制度の創設(平成24年度改正)、受贈者の国籍を外国籍化する相続・贈与税回避スキームへの対応(平成25年度改正)などが行われてきたのだが、来年に予定される相続税増税や、引き続く所得税増税は、この流れを加速するものとの認識があるのだろう。
実は筆者は、この税制をこれまで提唱してきた。
例えば、拙稿「税制之理【第75回】今後の議論となるか、出国税」(『税務弘報』13年7月号)や、ダイヤモンドオンラインの「目覚めよ!納税者【第53回】富裕層がシンガポール、香港に脱出─彼らの狙う租税回避をどう防ぐ(13年7月12日)」である。
その理由は、国は自国の居住者に対する全世界所得に対して課税権を持つという先進諸国で確立されたルールをかいくぐることは、国家にとって見過ごすべきではない、という考え方による。税収減になることや、正直者が馬鹿を見るといった納税道義の問題が生じるからである。
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