〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載46〕 自己株式と現物給与などに関する消費税の課税関係
筆者:飯田 聡一郎
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〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載46〕
自己株式と現物給与などに関する
消費税の課税関係
税理士 飯田 聡一郎
1 自己株式として取得される株式の譲渡者側の取扱い
(1) 通達における取扱いの確認
有価証券を譲渡した場合は、消費税法上は非課税売上に該当する。しかし、有価証券の譲渡であっても、株主が保有する他社株を、その株式の発行法人に譲渡する場合は、資産の譲渡等に該当しないこととされている。
消費税法基本通達5-2-9(自己株式の取扱い)
法人が自己株式を取得する場合(証券市場での買入れによる取得を除く。)における株主から当該法人への株式の引渡し及び法人が自己株式を処分する場合における他の者への株式の引渡しは、いずれも資産の譲渡等に該当しない。
上記通達のとおり、発行法人が自己株式として取得した場合の株主の譲渡、あるいは株式発行法人が自己株式を処分した場合については、資産の譲渡等と考えないことになる。
なお、上場株式について、公開買付けの場合は自己株式の取得であることが明らかであり、上記通達に該当するが、証券市場での買入れについては、譲渡した法人がその株式の買い手が株式発行法人であるかどうかはわからないため、株式発行法人である上場会社が、公開買付け以外の市場取引で自己株式を取得した場合は、その株式を譲渡した法人については単に、有価証券の譲渡と割り切って考えることになる。
(2) 資産の譲渡等に該当しない理由
なぜ、自己株式として取得される場合の取引、自己株式の処分として行われる取引が資産の譲渡等に該当しないのかについて検討を加える必要がある。
自己株式の取得という行為は、かつて発行した株式について払戻しをする行為と考えられる。また自己株式の処分は、新株発行と同様の行為と考えることができる。そして、資本の払戻し、あるいは新株の発行については、株式発行法人にとっては、資産の譲渡等とは考えていない。
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連載目次
〔税の街.jp「議論の広場」編集会議〕 第1回~第50回
- 「株式会社の解散と法人税申告の実務」(連載1~4)
- (連載5)「従業員から役員になった場合の退職金計算の問題点【その1】」(濱田康宏)
- (連載6)「管理部門を分割した場合における事業性」(村木慎吾)
- (連載7)「株主の立場から理解する抱合株式に係る資本金等の額の計算」(内藤忠大)
- (連載8)「会社分割における不動産取得税の非課税規定」(岡野訓)
- (連載9)「個人が太陽光発電装置を取得した場合についての所得税の取扱いについて」(大塚直子)
- (連載10)「外国子会社合算税制(タックス・ヘイブン対策税制)の適用の有無」(郭曙光)
- (連載11)「現物配当に係る会計上・税法上の取扱い」(朝長明日香)
- (連載12)「配当優先の限界」(掛川雅仁)
- (連載13)「従業員から役員になった場合の退職金計算の問題点【その2】」(濱田康宏)
- (連載14)「税額控除の対象となる試験研究費の範囲と税務調整」(鈴木達也)
- (連載15)「事業承継税制と認定(贈与)承継会社の合併」(内藤忠大)
- (連載16)「連結納税と青色申告」(大塚直子)
- (連載17)「会社分割によりデリバティブ契約を移転する場合の税務処理」(有田賢臣)
- (連載18)「海外子会社から受け取る役員退職金の取扱い」(郭曙光)
- (連載19)「債務超過の適格分割型分割を行った場合の資本金等の額と利益積立金額の計算」(掛川雅仁)
- (連載20)「施行日をまたぐ役務提供に関する消費税率の問題」(飯田聡一郎)
- (連載21)「合併に伴い合併法人の役員報酬を増額した場合の取扱い」(朝長明日香)
- (連載22)「会社分割によりヘッジ対象資産・ヘッジ手段を移転する場合の税務処理」(朝長英樹,有田賢臣)
- (連載23)「無対価分割の会社法と税務」(竹内陽一)
- (連載24)「判決により取扱いが変更となった通達改正に係る事案の更正の請求」(小林磨寿美)
- (連載25)「海外赴任中のストックオプションの権利行使と株式譲渡について」(神谷紀子)
- (連載26)「適格分割型分割の計算事例─資本金等の額<0の場合など、各要素がマイナスとなる場合─」(竹内陽一)
- (連載27)「小規模宅地等の減額特例に関する平成25年度改正について ─区分所有建物に居住していた場合の取扱い─」(小林磨寿美)
- (連載28)「普通法人から公益法人等への移行時における別表5(1)利益積立金額の記載方法について」(濱田康宏)
- (連載29)「債務超過の適格分割型分割を行った場合の資本金等の額と利益積立金額の計算(その2)」(掛川雅仁)
- (連載30)「防水工事費用の損金算入時期」(朝長明日香)
- (連載31)「合併に係る個人株主の課税関係」(内藤忠大)
- (連載32)「分社後の事業譲渡スキームに関する税務・会計処理」(武田雅比人)
- (連載33)「平成25年度税制改正における事業承継税制の改正について」(長谷川敏也)
- (連載34)「会社分割により退職給付債務を移転する場合の税務処理」(有田賢臣)
- (連載35)「措置法40条申請の承認取消しと贈与者の死亡」(鈴木達也)
- (連載36)「株式の種類を変更した場合の種類資本金額の取扱い」(朝長明日香)
- (連載37)「会社分割において金銭等を交付する場合の取扱い」(竹内陽一)
- (連載38)「民事再生法において資産評定がある場合とない場合」(長岡栄二)
- (連載39)「事業承継税制新債務控除と猶予税額」(岡野訓)
- (連載40)「外国子会社への出向者の帰国後の現地所得税を内国法人が負担した場合の取扱い」(郭曙光)
- (連載41)「雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除制度(所得拡大促進税制)の疑問点(前編)」(長谷川敏也)
- (連載42)「雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除制度(所得拡大促進税制)の疑問点(後編)」(長谷川敏也)
- (連載43)「共同再編・複数再編における適格判定」(有田賢臣)
- (連載44)「事業承継税制における上場株式1銘柄3%以上保有規制と株主のグルーピング」(竹内陽一)
- (連載45)「会社分割の会計処理~株主資本の内訳を中心として」(安原徹)
- (連載46)「自己株式と現物給与などに関する消費税の課税関係」(飯田聡一郎)
- (連載47)「社会医療法人の収益事業課税の範囲」(濱田康宏)
- (連載48)「一棟の建物についての小規模宅地等減額特例の改正と区分所有建物についての適用上の疑問点~平成25年措置法通達改正対応~」(小林磨寿美)
- (連載49)「平成26年度税制改正の概要と留意点」(竹内陽一)
- (連載50)「コーポレート・ガバナンスの強化に係る会社法制の見直し」(安原徹)
〔税の街.jp「議論の広場」編集会議〕 第51回~
- (連載51)「会社分割等における債権者保護制度の見直し」(北詰健太郎,森明日香)
- (連載52)「外国子会社合算税制に係る外国税額控除制度における無税国に所在する特定外国子会社等に係る益金算入額の取扱い」(郭 曙光)
- (連載53)「生産性向上設備投資促進税制を利用する上での注意点(前編)」(有田賢臣)
- (連載54)「生産性向上設備投資促進税制を利用する上での注意点(後編)」(有田賢臣)
- (連載55)「所得拡大促進税制の経過措置(平成26年度税制改正)-3月決算法人の場合-」(竹内陽一)
- (連載56)「平成26年1月1日以後の相続に係る「2世帯住宅」の特定居住用宅地等の適用要件と事例解釈」(竹内陽一)
- (連載57)「改正医療法を踏まえた医療法人の持分に係る贈与税及び相続税の納税猶予制度の要件確認」(佐々木克典)
- (連載58)「所得拡大促進税制の平成26年度改正事項と別表6(20)新様式の変更点」(竹内陽一)
- (連載60)「雇用促進税制と所得拡大促進税制の適用比較」(竹内陽一)
- (連載61)「国税庁文書回答事例「連結親法人が連結承認取消後に決算期変更を行った場合の事業年度について」の解説」(鈴木達也)
筆者紹介
飯田 聡一郎
(いいだ そういちろう)
TSK税理士法人 代表社員・東京事務所所長
税理士平成7年 税理士登録
平成20年~ 東京税理士会四谷支部 会員相談室 相談員【著書】
『新会社法の実務Q&A』共著(清文社・2005年)
『徹底解明 会社法の法務・会計・税務』共著(清文社・2006年)
『実践 LLPの法務・会計・税務-設立・運営・解散-』共著(新日本法規出版・2007年)
『税理士のための相続をめぐる民法と税法の理解』共著(ぎょうせい・2009年)
『最近の難解税制のポイントと実務の落とし穴』共著(清文社・2010年)
『中小企業の税務の仕事』(中央経済社・2011年)
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