〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載39〕
事業承継税制新債務控除と猶予税額
税理士 岡野 訓
1 相続税の猶予税額の計算方法
平成25年度税制改正において、非上場株式等についての相続税の納税猶予制度を利用するにあたり、相続税の課税価格から控除すべき被相続人の債務及び葬式費用がある場合には、納税猶予税額の計算上、その被相続人の債務及び葬式費用については、特例非上場株式等以外の財産の価額から控除することとされた。
従前の制度では、被相続人の債務及び葬式費用は、まず納税猶予制度の対象となる非上場株式等から先に控除することとされていたため、その分、納税猶予税額が少なく計算されていた。
新制度は、平成27年1月1日以後の相続又は遺贈(以下、単に「平成27年以後の相続等」)について適用される。
ここでは、今回の改正による納税猶予税額への影響を具体的な数字を使って検証してみたい。
2 納税猶予分の相続税額
納税猶予分の相続税額は、次の(1)の金額から(2)の金額を控除した残額とされている(措法70の7の2②五、措令40の8⑬~⑯)。
(1) 特定価額を経営承継相続人等に係る相続税の課税価格とみなして、相続税法第13条から第19条まで、第21条の15第1項及び第2項並びに第21条の16第1項及び第2項の規定を適用して計算した当該経営承継相続人等の相続税の額(注)
(注) 特定価額以外の取得財産に係る相続税額から控除しきれない税額控除額があるときは、その控除しきれなかった税額控除額を控除した金額とされる(措令40の8⑬括弧書き)。
(2) 特定価額の20%に相当する金額を経営承継相続人等に係る相続税の課税価格とみなして、相続税法第15条から第19条まで、第21条の15第1項及び第2項並びに第21条の16第1項及び第2項の規定を適用して計算した当該経営承継相続人等の相続税の額
(1)の金額とは、要するに、経営承継相続人等以外の取得財産はそのままに、会社の後継者である経営承継相続人等が、特例対象となる非上場株式等だけを相続したものとして計算された経営承継相続人等の相続税額のことである。
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