「税理士損害賠償請求」
頻出事例に見る
原因・予防策のポイント
【事例61(所得税)】
所得税の確定申告において、パソコンの不具合により電子申告が期限後になってしまい、65万円の青色申告特別控除が受けられなくなってしまった事例
税理士 齋藤 和助
《事例の概要》
平成X9年分の所得税確定申告において、申告期限最終日にまとめて電子申告を行おうとしたところ、パソコンの不具合により電子申告できず、結果として期限後申告になってしまった。
これにより期限内であれば受けられた65万円の青色申告特別控除が10万円となってしまい、差額の55万円に係る所得税等につき過大納付が発生し、賠償請求を受けた。
《賠償請求の経緯》
- 平成X9年12月
関与開始。平成X9年分の所得税確定申告の受託。 - 平成Y0年2月
平成X9年分の確定申告資料が届く。 - 平成Y0年3月
税額計算の完了。申告書のドラフトと税額を送付して了解を得る。 - 平成Y0年3月
申告期限最終日。受託した全員分をまとめて送信を試みるも、パソコンの不具合により電子申告できず。 - 平成Y0年3月
期限後申告の完了。依頼者に上記事実を伝え、損害賠償請求を受ける。
《基礎知識》
◆青色申告特別控除(措法25の2)
(1) 65万円控除
青色申告者に対しては、青色申告の特典として所得金額から最高65万円控除できる青色申告特別控除がある(※)。この65万円の控除を受けるためには、以下の要件を満たしている必要がある。
(※) 平成30年度税制改正により、平成32年分(2020年分)以後の所得税及び平成33年度分(2021年度分)以後の個人所得税から、控除額が55万円に引き下げられる(電子申告等一定の条件を充たす場合には65万円)。
① 不動産所得又は事業所得を生ずべき事業を営んでいること
② これらの所得に係る取引を正規の簿記の原則により記帳していること
③ ②の記帳に基づいて作成した貸借対照表及び損益計算書を確定申告書に添付し、この控除の適用を受ける金額を記載して、法定申告期限内に提出すること
なお、平成23年以降、65万円の青色申告特別控除について当初申告の確定申告書に記載した金額を上限とする措置が廃止されたため、確定申告書に記載されている不動産所得の金額又は事業所得の金額が、修正申告又は更正(再更正を含む)により異動することとなったため当該確定申告書に記載されている青色申告特別控除額にも異動が生ずることとなった場合には、その異動後の控除額によりこれらの所得の金額を計算する。
(2) 10万円控除
上記要件を満たしていなくても、青色申告者は、不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額から最高10万円の特別控除が受けられる。この10万円の青色申告特別控除は、確定申告書への記載を要件とするものではないから、青色申告者がその控除をしないところで確定申告書を提出している場合であっても、修正申告、更正等によりその控除を受けることができる。
また、確定申告書に記載されている不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額が、修正申告又は更正等により異動することとなったため青色申告特別控除額にも異動が生ずることとなった場合には、その異動後の控除額によりこれらの所得の金額を計算する。
《税理士の落とし穴》
申告期限最終日にまとめて伝送するつもりであったため、パソコンの不具合により、期限内に電子申告をすることができなくなってしまった。
《税理士の責任》
依頼者は65万円の青色申告特別控除の要件を満たしており、期限内申告さえすれば65万円控除が受けられた。
しかし、税理士のパソコンがフリーズしてしまい、期限内に申告ができなかったため、10万円の特別控除になってしまった。これにより、差額の55万円所得が増えることとなり、所得をベースに金額が決まる所得税、住民税、事業税等につき過大納付が発生し、賠償請求を受けた。
期限内に申告書を提出していれば65万円控除は受けられたことから、税理士に責任がある。
《予防策》
[ポイント①]
余裕をもった申告書提出を心がける
今回のケースは、税理士が完成の都度、電子申告を行っていれば、防ぐことができた事故である。申告期限最終日に不測の事態が起こることも想定して、余裕をもった申告書提出を心がけたい。
[ポイント②]
責任の所在を明らかにしておく
所得税の確定申告においては、期限間際にならないと資料を提出しない依頼者もあり、どうしても申告期限ぎりぎりになることが多い。資料の提出が遅く、その責任が依頼者にもある場合には、事前に期限後申告になった場合のリスクを説明し、期限を決めて、責任の所在を明らかにしておくことも必要である。
[ポイント③]
加算税は税賠保険の免責
期限後申告になると上記65万円の青色申告特別控除が適用できないだけでなく、無申告加算税や延滞税等の加算税もかかることになる。加算税や延滞税等は税賠保険の免責条項に該当し、保険での補填はできないので十分注意が必要である。
(了)
「「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント」は、毎月第4週に掲載されます。























