〈小説〉
『所得課税第三部門にて。』
【第61話】
「貸付金免除と源泉徴収」
公認会計士・税理士 八ッ尾 順一
浅田調査官は、税務調査から戻ると、急いで、中尾統括官のところに行く。
「中尾統括官・・・税務調査に行ってきたのですが・・・」
浅田調査官の額には、汗が噴き出ている。
「ごくろうさん・・・外はまだ・・・暑いだろう」
9月の中旬であるが、窓外の日差しは強そうである。
「あの・・・事業主が・・・従業員に貸し付けていた金員を免除し、それを雑損として必要経費に算入していたのですが・・・」
今日、午前中から所得課税部門の浅田調査官は、レストランを経営している個人事業者の税務調査に行っていたのであるが、総勘定元帳の「雑損」の科目に200万円が計上されていたのである。
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