〈小説〉
『所得課税第三部門にて。』
【第68話】
「個人事業者の死亡と従業員退職金」
公認会計士・税理士 八ッ尾 順一
浅田調査官は、受話器を握りながら、頷いている。
「・・・そうですねえ・・・それは必要経費にならないと思いますが・・・」
知り合いの税理士からの質問である。
昨年、甲という税理士が死亡したのであるが、その亡甲の令和4年分所得税について、亡甲税理士事務所の従業員のうち10名分の未払退職金1,200万円を、亡甲の事業所得の金額の計算上必要経費に算入して、準確定申告をしても良いかという問いである。
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