[8] 中小企業経営資源集約化税制の創設
令和3年度税制改正では、M&A実施後に発生する中小企業の特有のリスク(簿外債務、偶発債務等)に備える観点から、M&Aに関する経営力向上計画の認定を受けた中小企業者が、株式譲渡によってM&Aを実施する場合(取得価額が10億円以下の場合に限る)において、株式等の取得価額の70%以下の金額を中小企業事業再編投資損失準備金として積み立てたときは、その積立金額を損金算入できるという中小企業経営資源集約化税制を創設している(計画の認定期限:令和6年3月31日)。この準備金は、据置期間終了後、原則として、5年間で均等額を取り崩して益金算入されることになる。
連結納税制度においても中小企業経営資源集約化税制が創設されており、各連結法人ごとに、以下の取扱いとなる(新措法68の44、新措令39の73)。
〔対象者〕
連結親法人又は連結親法人による連結完全支配関係にある連結子法人で、中小連結法人(適用除外事業者に該当するものを除く)に該当するもののうち、中小企業等経営強化法の改正法の施行の日(令和3年8月2日)から令和6年3月31日までの間に中小企業経営強化法の経営力向上計画の認定を受けたもの
〔適用要件〕
- その経営力向上計画に従って他の法人の株式等の取得(購入による取得に限る)をし、
- これをその取得の日を含む連結事業年度終了日まで引き続き有している場合(その株式等の取得価額が10億円を超える場合を除く)において、
- その株式等の価格の低落による損失に備えるため、
- その株式等の取得価額の70%以下の金額を中小企業事業再編投資損失準備金として積み立てること(その連結法人の当該連結事業年度に係る決算の確定日までに剰余金の処分により積立金として積み立てる方法により中小企業事業再編投資損失準備金として積み立てた場合を含む)
【仕訳例】
中小企業事業再編投資損失(損金):7億円/中小企業事業再編投資損失準備金:7億円
※1.その株式の取得価額が10億円を超える場合は、全額損金算入できない。
〔税制措置〕
その積み立てた金額(中小企業事業再編投資損失)をその連結事業年度において損金算入できる。
〔取崩し(益金算入)〕
- その株式等の全部又は一部を有しなくなった場合やその株式等の帳簿価額を減額した場合は、それに対応する準備金を取り崩して益金算入。
- その積み立てた連結事業年度終了日の翌日から5年を経過した日を含む連結事業年度から5年間で均等額を取り崩して益金算入。
【仕訳例】
中小企業事業再編投資損失準備金:1.4億円/準備金取崩益(益金):1.4億円
なお、連結親法人又はその連結子法人のうち、次に掲げる連結法人については、この措置は適用されない(新措法68の44④)。
① 連結親法人の解散の日を含む連結事業年度における当該連結親法人
② 連結子法人の解散の日を含む連結事業年度におけるその解散した連結子法人
③ 清算中の連結子法人