公開日: 2022/02/17 (掲載号:No.457)
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相続税の実務問答 【第68回】「相続開始前3年以内に住宅取得等資金の贈与を受けていた場合」

筆者: 梶野 研二

相続税の実務問答

【第68回】

「相続開始前3年以内に住宅取得等資金の贈与を受けていた場合」

 

税理士 梶野 研二

 

[問]

私は、令和元年10月に、父から3,000万円の贈与を受け、C市内にマンションを購入し、そこに転居しました。この父からの贈与については、令和2年2月に、住宅取得等資金の贈与の特例(租税特別措置法第70条の2第1項)を適用し、非課税限度額である2,500万円を非課税とし、残りの500万円を贈与税の課税対象とする贈与税の申告を行いました。

令和3年11月に、父が癌のため亡くなってしまいましたので、相続税の申告をしなければなりません。父からの3,000万円の贈与は、父の相続開始前3年以内の贈与ですので、相続税の申告をする際には、課税価格に加算しなければならないのでしょうか。

なお、私は、相続時精算課税の選択はしていません。

[答]

お父様から贈与を受けた3,000万円のうち、住宅取得等資金の贈与の特例を受け、贈与税の課税価格に算入しなかった2,500万円については、相続開始前3年以内に受けた贈与であっても、相続税の課税価格に加算する必要はありません。

したがって、相続税の課税価格に加算する金額は、3,000万円から住宅取得等資金の贈与の特例の適用を受けた2,500万円を控除した残額である500万円となります。

※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。

● ● ● ● ● 説 明 ● ● ● ● ●

1 住宅取得等資金の贈与の特例

贈与を受けた年の1月1日において、20歳以上で、かつ、贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下である者が、父母や祖父母など直系尊属からの贈与により、自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築等の対価に充てるための金銭(この金銭を「住宅取得等資金」といいます)を取得し、贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅取得等資金の全額を充てて住宅用の家屋の新築等をし、同日までにその家屋に居住し又は同日後遅滞なくその家屋に居住することが確実であると見込まれる場合において、一定の要件を満たすときは、贈与を受けた住宅取得等資金のうち非課税限度額までの金額は、贈与税の課税価格に算入されません(措法70の2①)。この特例を「住宅取得等資金の贈与の特例」といいます。

この特例における「非課税限度額」は、住宅用家屋の新築等に係る契約の締結日、その住宅用家屋が省エネ等住宅に該当するかどうか、住宅用家屋の新築等に係る対価等の額に含まれる消費税等の税率により異なります。

この特例措置は、厳しい経済情勢を背景に住宅市場の活性化を図るとともに、若年世代への早期の資産移転及び良質な住宅ストックの形成などをも目的に設けられたもので、自己の居住の用に供する住宅の取得を検討する者にとって、非常に魅力的な特例制度であるといえます。

(※) 住宅取得等資金の贈与の特例は、令和3年12月31日までに贈与を受けた住宅取得資金等について適用されますが、現在、国会で審議中の「所得税法等の一部を改正する法律(案)」において、特例の対象となる受贈者を「20歳以上」の者から「18歳以上」の者とし、非課税限度額等について所定の見直しを行ったうえで、令和5年12月31日まで延長されることとされています。

 

2 相続開始前3年以内の贈与

ところで、被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した者が、当該被相続人の相続開始の日前3年以内に当該被相続人から財産の贈与を受けた場合には、相続税法第19条第1項の規定により当該贈与財産の価額を相続税の課税価格に加算するとともに、当該財産の贈与に対して課された贈与税額は相続税額から控除することとされています。

しかしながら、この住宅取得等資金の贈与の特例に係る贈与者に相続が開始した場合には、この特例により贈与税が非課税とされた住宅取得等資金の金額は、その住宅取得等資金の贈与者の相続開始に係る相続税の課税価格に加算する必要はありません(措法70の2③)。

これは、一定の要件を満たすものとして贈与税の課税対象とはされなかった住宅取得等資金が、贈与者である被相続人の相続開始前3年以内に贈与されたものであることをもって、相続税の課税価格に加算されるとすると、同特例に託された政策目的を達成することを妨げる要因となりかねないためであると考えられます。

 

3 ご質問の場合

お父様の相続開始前3年以内にあなたがお父様から贈与を受けたマンション取得資金3,000万円のうち、2,500万円は、住宅取得等資金として税特別措置法第70条の2第1項の規定を適用し、残りの500万円についてのみ贈与税の課税価格の計算の基礎に算入して贈与税の申告をしたとのことです。そして、あなたは相続時精算課税の選択をしていないとのことですから、この500万円に対する贈与税額の計算に当たっては、贈与税の基礎控除額110万円を控除しているものと考えられます。

そうしますと、

① 住宅取得等資金の贈与の特例を適用した2,500万円につきましては、相続税の課税価格に加算する必要はありません。

② しかしながら、同特例の適用対象とはならなかった500万円については、相続開始前3年以内に被相続人であるお父様から贈与により取得した財産として、相続税の課税価格の計算において加算する必要があります。

なお、この500万円に対する贈与税の計算上、基礎控除額として控除した110万円についても加算の対象となることにご注意ください。つまり、ご質問の場合に相続税の課税価格に加算するのは、基礎控除額110万円を控除した後の390万円ではなく、基礎控除額を控除する前の500万円となります。

〔凡例〕
相法・・・相続税法
相令・・・相続税法施行令
相規・・・相続税法施行規則
相基通・・・相続税法基本通達
所基通・・・所得税基本通達
評基通・・・財産評価基本通達
通法・・・国税通則法
通令・・・国税通則法施行令
措法・・・租税特別措置法
措通・・・租税特別措置法関係通達
共済法・・・中小企業倒産防止共済法
(例)相法27①・・・相続税法27条1項

(了)

「相続税の実務問答」は、毎月第3週に掲載されます。

相続税の実務問答

【第68回】

「相続開始前3年以内に住宅取得等資金の贈与を受けていた場合」

 

税理士 梶野 研二

 

[問]

私は、令和元年10月に、父から3,000万円の贈与を受け、C市内にマンションを購入し、そこに転居しました。この父からの贈与については、令和2年2月に、住宅取得等資金の贈与の特例(租税特別措置法第70条の2第1項)を適用し、非課税限度額である2,500万円を非課税とし、残りの500万円を贈与税の課税対象とする贈与税の申告を行いました。

令和3年11月に、父が癌のため亡くなってしまいましたので、相続税の申告をしなければなりません。父からの3,000万円の贈与は、父の相続開始前3年以内の贈与ですので、相続税の申告をする際には、課税価格に加算しなければならないのでしょうか。

なお、私は、相続時精算課税の選択はしていません。

[答]

お父様から贈与を受けた3,000万円のうち、住宅取得等資金の贈与の特例を受け、贈与税の課税価格に算入しなかった2,500万円については、相続開始前3年以内に受けた贈与であっても、相続税の課税価格に加算する必要はありません。

したがって、相続税の課税価格に加算する金額は、3,000万円から住宅取得等資金の贈与の特例の適用を受けた2,500万円を控除した残額である500万円となります。

※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。

● ● ● ● ● 説 明 ● ● ● ● ●

1 住宅取得等資金の贈与の特例

贈与を受けた年の1月1日において、20歳以上で、かつ、贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下である者が、父母や祖父母など直系尊属からの贈与により、自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築等の対価に充てるための金銭(この金銭を「住宅取得等資金」といいます)を取得し、贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅取得等資金の全額を充てて住宅用の家屋の新築等をし、同日までにその家屋に居住し又は同日後遅滞なくその家屋に居住することが確実であると見込まれる場合において、一定の要件を満たすときは、贈与を受けた住宅取得等資金のうち非課税限度額までの金額は、贈与税の課税価格に算入されません(措法70の2①)。この特例を「住宅取得等資金の贈与の特例」といいます。

この特例における「非課税限度額」は、住宅用家屋の新築等に係る契約の締結日、その住宅用家屋が省エネ等住宅に該当するかどうか、住宅用家屋の新築等に係る対価等の額に含まれる消費税等の税率により異なります。

この特例措置は、厳しい経済情勢を背景に住宅市場の活性化を図るとともに、若年世代への早期の資産移転及び良質な住宅ストックの形成などをも目的に設けられたもので、自己の居住の用に供する住宅の取得を検討する者にとって、非常に魅力的な特例制度であるといえます。

(※) 住宅取得等資金の贈与の特例は、令和3年12月31日までに贈与を受けた住宅取得資金等について適用されますが、現在、国会で審議中の「所得税法等の一部を改正する法律(案)」において、特例の対象となる受贈者を「20歳以上」の者から「18歳以上」の者とし、非課税限度額等について所定の見直しを行ったうえで、令和5年12月31日まで延長されることとされています。

 

2 相続開始前3年以内の贈与

ところで、被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した者が、当該被相続人の相続開始の日前3年以内に当該被相続人から財産の贈与を受けた場合には、相続税法第19条第1項の規定により当該贈与財産の価額を相続税の課税価格に加算するとともに、当該財産の贈与に対して課された贈与税額は相続税額から控除することとされています。

しかしながら、この住宅取得等資金の贈与の特例に係る贈与者に相続が開始した場合には、この特例により贈与税が非課税とされた住宅取得等資金の金額は、その住宅取得等資金の贈与者の相続開始に係る相続税の課税価格に加算する必要はありません(措法70の2③)。

これは、一定の要件を満たすものとして贈与税の課税対象とはされなかった住宅取得等資金が、贈与者である被相続人の相続開始前3年以内に贈与されたものであることをもって、相続税の課税価格に加算されるとすると、同特例に託された政策目的を達成することを妨げる要因となりかねないためであると考えられます。

 

3 ご質問の場合

お父様の相続開始前3年以内にあなたがお父様から贈与を受けたマンション取得資金3,000万円のうち、2,500万円は、住宅取得等資金として税特別措置法第70条の2第1項の規定を適用し、残りの500万円についてのみ贈与税の課税価格の計算の基礎に算入して贈与税の申告をしたとのことです。そして、あなたは相続時精算課税の選択をしていないとのことですから、この500万円に対する贈与税額の計算に当たっては、贈与税の基礎控除額110万円を控除しているものと考えられます。

そうしますと、

① 住宅取得等資金の贈与の特例を適用した2,500万円につきましては、相続税の課税価格に加算する必要はありません。

② しかしながら、同特例の適用対象とはならなかった500万円については、相続開始前3年以内に被相続人であるお父様から贈与により取得した財産として、相続税の課税価格の計算において加算する必要があります。

なお、この500万円に対する贈与税の計算上、基礎控除額として控除した110万円についても加算の対象となることにご注意ください。つまり、ご質問の場合に相続税の課税価格に加算するのは、基礎控除額110万円を控除した後の390万円ではなく、基礎控除額を控除する前の500万円となります。

〔凡例〕
相法・・・相続税法
相令・・・相続税法施行令
相規・・・相続税法施行規則
相基通・・・相続税法基本通達
所基通・・・所得税基本通達
評基通・・・財産評価基本通達
通法・・・国税通則法
通令・・・国税通則法施行令
措法・・・租税特別措置法
措通・・・租税特別措置法関係通達
共済法・・・中小企業倒産防止共済法
(例)相法27①・・・相続税法27条1項

(了)

「相続税の実務問答」は、毎月第3週に掲載されます。

連載目次

相続税の実務問答

第1回~第90回

第91回~

筆者紹介

梶野 研二

(かじの・けんじ)

税理士

国税庁課税部資産評価企画官付企画専門官、同資産課税課課長補佐、東京地方裁判所裁判所調査官、国税不服審判所本部国税審判官、東京国税局課税第一部資産評価官、玉川税務署長、国税庁課税部財産評価手法研究官を経て、平成25年6月税理士登録。
現在、相続税を中心に税理士業務を行っている。

【主な著書】
・『令和7年12月改訂 プロフェッショナル 相続税・贈与税・財産評価の実務』(清文社)
・『ケース別 相続土地の評価減』(新日本法規)
・『判例・裁決例にみる 非公開株式評価の実務』(共著 新日本法規出版)
・『株式・公社債評価の実務(平成23年版)』(編著 大蔵財務協会)
・『土地評価の実務(平成22年版)』(編著 大蔵財務協会)
・『贈与税の申告の実務-相続時精算課税を中心として』(編著 大蔵財務協会)
・『農地の相続税・贈与税』(編著 大蔵財務協会)
・『新版 公益法人の税務』(共著 財団法人公益法人協会)
等

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