公開日: 2021/06/17 (掲載号:No.424)
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相続税の実務問答 【第60回】「相続開始の年に被相続人から贈与を受けた場合の贈与税の申告(相続又は遺贈により財産を取得する場合)」

筆者: 梶野 研二

相続税の実務問答

【第60回】

「相続開始の年に被相続人から贈与を受けた場合の贈与税の申告(相続又は遺贈により財産を取得する場合)」

 

税理士 梶野 研二

 

[問]

私は、令和3年2月に父から300万円の現金の贈与を受けました。ところが、その父が4月に急逝してしまいました。

父の相続人は母と私の2人です。父の遺産は、自宅のほかH市にあるアパート、T社の株式及び銀行預金などで、母と私とで2分の1ずつ取得することとなりました。2月に私が父から受けた300万円の贈与は、父の相続開始前3年以内の贈与なので相続税の課税対象に含めなければならないとのことですが、この300万円の贈与について贈与税の申告をする必要があるのでしょうか。

なお、私は、これまで父からの贈与について、相続時精算課税の選択をしていません。

[答]

被相続人から相続開始の年に財産の贈与を受けた場合、その贈与を受けた人が、その被相続人からの相続又は遺贈により財産を取得した場合には、その贈与により取得した財産の価額は、相続税の課税価格に加算され、贈与税の課税価格には算入されません。

したがって、今年の4月にお亡くなりになられたお父様からその遺産の2分の1を相続することとなったあなたが今年の2月にお父様から贈与を受けた現金300万円については、贈与税の申告をする必要はありません。

※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。

● ● ● ● ● 説 明 ● ● ● ● ●

1 贈与税の申告義務と相続税における相続開始前3年以内の贈与加算の関係

贈与により財産を取得した者は、その年中に贈与により取得した価額の合計額から贈与税の基礎控除額を控除し、贈与税の税率を適用した結果贈与税が算出される場合(在外財産に対する贈与税額の控除(相法21の8)が適用される場合にはその控除後の金額)には、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日の間に贈与税の申告書を納税地の税務署長に提出しなければなりません(相法28①)。

ところで、被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した者が、当該被相続人の相続開始の日前3年以内に当該被相続人から財産の贈与を受けた場合には、相続税法第19条第1項の規定により当該贈与財産の価額は、相続税の課税価格に加算されるとともに、当該財産の贈与に対して課された贈与税額は相続税額から控除することとされています。

一方、相続又は遺贈により財産を取得した者が相続開始の年に当該相続に係る被相続人から贈与により取得した財産の価額で相続税法第19条の規定により相続税の課税価格に加算されるものは、贈与税の課税価格に算入しないこととされています(相法21の2④)。

被相続人からの生前贈与については贈与税の課税価格に算入しない旨の上記の相続税法第21条の2第4項の規定(以下「贈与税の非課税規定」といいます)のポイントは次のとおりです。

(1) この贈与税の非課税規定が適用されるのは、被相続人の相続開始の年に被相続人から贈与を受けた場合です。したがって、例えば、相続開始の年の前年に被相続人から贈与を受けており、その贈与に係る贈与税の申告が必要であったにもかかわらず申告がされていなかった場合は、当該贈与を受けた財産の価額を相続税の課税価格に加算した相続税の申告をするときであっても、その価額は贈与税の課税価格に含まれますので、その価額が贈与税の基礎控除額を超えるならば贈与税の申告が必要になります。この贈与について贈与税の申告がされていなかったことにより、贈与税の期限後申告又は修正申告を行い、又は決定処分若しくは更正処分があった場合には、無申告加算税及び延滞税の負担が生じることとなります。

(2) この贈与税の非課税規定は、相続又は遺贈により財産を取得した人について適用されます。したがって、相続開始の年において当該相続に係る被相続人から贈与を受けていたとしても、その人が、被相続人から相続又は遺贈により財産を取得しない場合には、この贈与を受けた財産の価額は相続税の課税価格に加算されず、贈与税の課税価格に含まれることとなりますので、その年に受けたその他の贈与財産の価額と合わせて贈与税の基礎控除額を超えることとなるときには贈与税の申告が必要になります。

(3) 相続又は遺贈により財産を取得した場合において、相続税法第19条第1項の規定により被相続人から生前に贈与を受けた財産の価額を加算しても、相続税の課税価格の合計額が基礎控除額に満たないことなどから納付すべき相続税額が算出されないことがあります。このような場合であっても、この贈与税の非課税規定が適用されます。

(※) 贈与税の課税制度は、①暦年課税方式と②相続時精算課税方式の2つの制度があります。今回の設例は、そのうちの暦年課税方式を前提としたものです。相続時精算課税制度における特定贈与者であった被相続人から贈与を受けた財産(相続時精算課税が適用される財産)の価額については、相続税法第19条の規定は適用されませんが、相続税法第21条の15第1項及び同法第21条の16第1項の規定により相続税の課税対象とされます。

特定贈与者である被相続人からの贈与により相続時精算課税適用者が財産を取得した場合において、当該特定贈与者がその贈与をした年の中途において死亡したときは、その贈与により取得した財産の価額については、相続税法第21条の2第4項の規定は適用されませんが、贈与税の申告は提出する必要はありません(相法28④)。詳しくは、別の回で説明します。

 

2 ご質問の場合

あなたは、令和3年2月にお父様から300万円の贈与を受けましたので、この贈与について(このほかに令和3年中に贈与を受けた財産があれば、その価額も合計したところで)、令和4年2月1日から3月15日までの間に贈与税の申告を行い、算出された贈与税を納付しなければならないはずでした。

しかしながら、お父様が令和3年4月にお亡くなりになり、あなたはその相続によりお父様の財産を相続することとなりました。

したがって、あなたが、お父様の相続開始前3年以内の令和3年2月にお父様から贈与された300万円は、相続税法第19条第1項の規定により相続税の課税価格に加算されますが、相続開始の年である令和3年中に受けた贈与ですから、相続税法第21条の2第4項の規定により、贈与税の申告は必要ありません(もちろん、お父様からの贈与のほかに贈与税の基礎控除額を超える贈与を受けている場合には、その贈与については、贈与税の申告が必要です)。

〔追記:2021/7/7〕
上記赤文字部分について、本稿公開時は「第28条」となっていましたが、正しくは「第21条の2」の誤りです。

お詫びの上、訂正させていただきます。

〔凡例〕
相法・・・相続税法
相令・・・相続税法施行令
相規・・・相続税法施行規則
相基通・・・相続税法基本通達
所基通・・・所得税基本通達
評基通・・・財産評価基本通達
通法・・・国税通則法
通令・・・国税通則法施行令
措法・・・租税特別措置法
措通・・・租税特別措置法関係通達
(例)相法27①・・・相続税法27条1項

(了)

「相続税の実務問答」は、毎月第3週に掲載されます。

相続税の実務問答

【第60回】

「相続開始の年に被相続人から贈与を受けた場合の贈与税の申告(相続又は遺贈により財産を取得する場合)」

 

税理士 梶野 研二

 

[問]

私は、令和3年2月に父から300万円の現金の贈与を受けました。ところが、その父が4月に急逝してしまいました。

父の相続人は母と私の2人です。父の遺産は、自宅のほかH市にあるアパート、T社の株式及び銀行預金などで、母と私とで2分の1ずつ取得することとなりました。2月に私が父から受けた300万円の贈与は、父の相続開始前3年以内の贈与なので相続税の課税対象に含めなければならないとのことですが、この300万円の贈与について贈与税の申告をする必要があるのでしょうか。

なお、私は、これまで父からの贈与について、相続時精算課税の選択をしていません。

[答]

被相続人から相続開始の年に財産の贈与を受けた場合、その贈与を受けた人が、その被相続人からの相続又は遺贈により財産を取得した場合には、その贈与により取得した財産の価額は、相続税の課税価格に加算され、贈与税の課税価格には算入されません。

したがって、今年の4月にお亡くなりになられたお父様からその遺産の2分の1を相続することとなったあなたが今年の2月にお父様から贈与を受けた現金300万円については、贈与税の申告をする必要はありません。

※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。

● ● ● ● ● 説 明 ● ● ● ● ●

1 贈与税の申告義務と相続税における相続開始前3年以内の贈与加算の関係

贈与により財産を取得した者は、その年中に贈与により取得した価額の合計額から贈与税の基礎控除額を控除し、贈与税の税率を適用した結果贈与税が算出される場合(在外財産に対する贈与税額の控除(相法21の8)が適用される場合にはその控除後の金額)には、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日の間に贈与税の申告書を納税地の税務署長に提出しなければなりません(相法28①)。

ところで、被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した者が、当該被相続人の相続開始の日前3年以内に当該被相続人から財産の贈与を受けた場合には、相続税法第19条第1項の規定により当該贈与財産の価額は、相続税の課税価格に加算されるとともに、当該財産の贈与に対して課された贈与税額は相続税額から控除することとされています。

一方、相続又は遺贈により財産を取得した者が相続開始の年に当該相続に係る被相続人から贈与により取得した財産の価額で相続税法第19条の規定により相続税の課税価格に加算されるものは、贈与税の課税価格に算入しないこととされています(相法21の2④)。

被相続人からの生前贈与については贈与税の課税価格に算入しない旨の上記の相続税法第21条の2第4項の規定(以下「贈与税の非課税規定」といいます)のポイントは次のとおりです。

(1) この贈与税の非課税規定が適用されるのは、被相続人の相続開始の年に被相続人から贈与を受けた場合です。したがって、例えば、相続開始の年の前年に被相続人から贈与を受けており、その贈与に係る贈与税の申告が必要であったにもかかわらず申告がされていなかった場合は、当該贈与を受けた財産の価額を相続税の課税価格に加算した相続税の申告をするときであっても、その価額は贈与税の課税価格に含まれますので、その価額が贈与税の基礎控除額を超えるならば贈与税の申告が必要になります。この贈与について贈与税の申告がされていなかったことにより、贈与税の期限後申告又は修正申告を行い、又は決定処分若しくは更正処分があった場合には、無申告加算税及び延滞税の負担が生じることとなります。

(2) この贈与税の非課税規定は、相続又は遺贈により財産を取得した人について適用されます。したがって、相続開始の年において当該相続に係る被相続人から贈与を受けていたとしても、その人が、被相続人から相続又は遺贈により財産を取得しない場合には、この贈与を受けた財産の価額は相続税の課税価格に加算されず、贈与税の課税価格に含まれることとなりますので、その年に受けたその他の贈与財産の価額と合わせて贈与税の基礎控除額を超えることとなるときには贈与税の申告が必要になります。

(3) 相続又は遺贈により財産を取得した場合において、相続税法第19条第1項の規定により被相続人から生前に贈与を受けた財産の価額を加算しても、相続税の課税価格の合計額が基礎控除額に満たないことなどから納付すべき相続税額が算出されないことがあります。このような場合であっても、この贈与税の非課税規定が適用されます。

(※) 贈与税の課税制度は、①暦年課税方式と②相続時精算課税方式の2つの制度があります。今回の設例は、そのうちの暦年課税方式を前提としたものです。相続時精算課税制度における特定贈与者であった被相続人から贈与を受けた財産(相続時精算課税が適用される財産)の価額については、相続税法第19条の規定は適用されませんが、相続税法第21条の15第1項及び同法第21条の16第1項の規定により相続税の課税対象とされます。

特定贈与者である被相続人からの贈与により相続時精算課税適用者が財産を取得した場合において、当該特定贈与者がその贈与をした年の中途において死亡したときは、その贈与により取得した財産の価額については、相続税法第21条の2第4項の規定は適用されませんが、贈与税の申告は提出する必要はありません(相法28④)。詳しくは、別の回で説明します。

 

2 ご質問の場合

あなたは、令和3年2月にお父様から300万円の贈与を受けましたので、この贈与について(このほかに令和3年中に贈与を受けた財産があれば、その価額も合計したところで)、令和4年2月1日から3月15日までの間に贈与税の申告を行い、算出された贈与税を納付しなければならないはずでした。

しかしながら、お父様が令和3年4月にお亡くなりになり、あなたはその相続によりお父様の財産を相続することとなりました。

したがって、あなたが、お父様の相続開始前3年以内の令和3年2月にお父様から贈与された300万円は、相続税法第19条第1項の規定により相続税の課税価格に加算されますが、相続開始の年である令和3年中に受けた贈与ですから、相続税法第21条の2第4項の規定により、贈与税の申告は必要ありません(もちろん、お父様からの贈与のほかに贈与税の基礎控除額を超える贈与を受けている場合には、その贈与については、贈与税の申告が必要です)。

〔追記:2021/7/7〕
上記赤文字部分について、本稿公開時は「第28条」となっていましたが、正しくは「第21条の2」の誤りです。

お詫びの上、訂正させていただきます。

〔凡例〕
相法・・・相続税法
相令・・・相続税法施行令
相規・・・相続税法施行規則
相基通・・・相続税法基本通達
所基通・・・所得税基本通達
評基通・・・財産評価基本通達
通法・・・国税通則法
通令・・・国税通則法施行令
措法・・・租税特別措置法
措通・・・租税特別措置法関係通達
(例)相法27①・・・相続税法27条1項

(了)

「相続税の実務問答」は、毎月第3週に掲載されます。

連載目次

相続税の実務問答

第1回~第90回

第91回~

筆者紹介

梶野 研二

(かじの・けんじ)

税理士

国税庁課税部資産評価企画官付企画専門官、同資産課税課課長補佐、東京地方裁判所裁判所調査官、国税不服審判所本部国税審判官、東京国税局課税第一部資産評価官、玉川税務署長、国税庁課税部財産評価手法研究官を経て、平成25年6月税理士登録。
現在、相続税を中心に税理士業務を行っている。

【主な著書】
・『令和7年12月改訂 プロフェッショナル 相続税・贈与税・財産評価の実務』(清文社)
・『ケース別 相続土地の評価減』(新日本法規)
・『判例・裁決例にみる 非公開株式評価の実務』(共著 新日本法規出版)
・『株式・公社債評価の実務(平成23年版)』(編著 大蔵財務協会)
・『土地評価の実務(平成22年版)』(編著 大蔵財務協会)
・『贈与税の申告の実務-相続時精算課税を中心として』(編著 大蔵財務協会)
・『農地の相続税・贈与税』(編著 大蔵財務協会)
・『新版 公益法人の税務』(共著 財団法人公益法人協会)
等

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