山本守之の法人税“一刀両断” 【第28回】「売り上げの計上時期はどうなっているか」
筆者:山本 守之
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山本守之の
法人税 “一刀両断”
【第28回】
「売り上げの計上時期はどうなっているか」
税理士 山本 守之
1 収益の認識基準
各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入すべき金額は、具体的には商品や製品の販売、有価証券や固定資産の譲渡、受取利息や受取配当等、資産の賃貸料収入などがその大宗を占めます。
これらをどの時点で益金の額として認識するかについて、実定法上は「当該事業年度の収益の額とする」と規定しているだけです。
もっとも、法人税法の全文改正(昭和42年)の際には、「当該事業年度に実現した収益の額とする」という表現をすることについて検討がなされたとのことです。
しかし、「実現」というのは、法令上の用語ではなく企業会計上の用語であり、しかも、この実現の内容をめぐって、会計学者の間でも議論があるだけでなく、実現そのものも販売基準を主体として成立するもので、交換等や契約上の収益(特に貸金利息)に対する認識基準としては明確でないため、まぎらわしさを避ける意味で「実現」という言葉が削られたといわれます。
いずれにしても、実定法は帰属を表現するものとしては「の」の一字があるに過ぎないのです。
「の」の一字によって、収益をどのような帰属として認識するかは、もっぱら解釈によるほかないですが、「当該事業年度に帰属する収益の額」と解すべきことは疑いありません。
収益計上時期を実定法で示しているのが、「の」の一字だけで、これを解釈する方法がないとすれば、その解釈を会計に委ねる他はないので、それでは「一般に公正妥当と認められる会計処理」の基準に求める他ないのです。ただ、実務としては、それを会計に委ねるほど会計が発達していないのが問題です。
わが国の企業会計においては、収益の認識を実現主義によっており、この実現主義は、発生主義による収益の認識をより明確にするためであるとされています。
この点について、「税法と企業会計原則との調整に関する意見書」では、次のように述べています。
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連載目次
山本守之の法人税“一刀両断”
▷2018年(第43回~54回)
▷2017年(第31回~42回)
▷2016年(第18回~30回)
- 【第18回】 実効税率はどのような経過で引き下げられたか
- 【第19回】 消費税の軽減税率を検証する
- 【第20回】 寄附金の課税要件を考える
- 【第21回】 土地と共に取得してから1年以内に取り壊した建物
- 【第22回】 訴訟のわかれ道~認知症と損益通算
- 【第23回】 税執行における洒落
- 【第24回】 租税法の解釈①-租税法律主義とその問題点-
- 【第25回】 租税法の解釈②-通達の読み方とその問題点(貸倒損失を事例として)-
- 【第26回】 租税法の解釈③-税務形式基準と事実認定-
- 【第27回】 課税要件法定主義を考える
- 【第28回】 売り上げの計上時期はどうなっているか
- 【第29回】 取引別にみた収益の認識基準①
- 【第30回】 取引別にみた収益の認識基準②
▷2015年(第7回~17回)
筆者紹介
山本 守之
(やまもと・もりゆき)
税理士。現在、日本税務会計学会顧問、租税訴訟学会副会長(研究・提言担当)、税務会計研究学会理事、日本租税理論学会理事を務め、全国各地において講演活動を行うとともに、千葉商科大学大学院(政策研究科、博士課程)でプロジェクト・アドバイザー(専門分野の高度な学術研究、高度な実務経験を持つ有識者)として租税政策論の教鞭をとっている。研究のためOECD、EU、海外諸国の財務省、国税庁等を約30年にわたり歴訪。2020年11月29日、逝去。
【著書】
・『時事税談-人間の感性から税をみつめる』(清文社)
・『役員給与税制の問題点-規定・判例・執行面からの検討』(中央経済社)
・『検証 税法上の不確定概念 (新版)』(中央経済社)
・『裁決事例(全部取消)による役員給与・寄附金・交際費・貸倒れ・資本的支出と修繕費』(財経詳報社)
・『法人税申告の実務全書』監修(日本実業出版社)
・『法人税の理論と実務』(中央経済社)
・『体系法人税法』(税務経理協会)
・『税金力-時代とともに「税」を読む』(中央経済社)
・『租税法の基礎理論』(税務経理協会)
他、多数
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