公開日: 2016/09/21 (掲載号:No.186)
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山本守之の法人税“一刀両断” 【第27回】「課税要件法定主義を考える」

筆者: 山本 守之

山本守之

法人税 “一刀両断”

【第27回】

「課税要件法定主義を考える」

 

税理士 山本 守之

 

第1節 課税要件と交際費等

1 交際費の課税の趣旨

交際費課税の趣旨は、この制度が創設された当時と現在とでは大いに異なっているが、その判決例を検討してみると、依然として創設当時の古い考え方が残っているのが気にかかります。

例えば、平成15年9月9日の東京高裁における「萬有製薬事件」における判決文では、交際費課税の趣旨を次のように述べています。

 交際費は、人間の種々の欲望を満たす支出であるため、それが非課税であれば、無駄に多額に支出され、企業の資本蓄積が阻害されるおそれがあること

 営利の追求のあまり不当な支出によって、公正な取引が阻害され、ひいては価格形成に歪み等が生じること

 交際費で受益する者のみが免税で利益を得ることに対する国民一般の不公平感を防止する必要があること

確かに、この制度の創設時(昭和29年)には冗費、濫費を抑制して資本を蓄積させようという趣旨であったことは事実です。

判決文のは、いわゆる代替課税として説明されていたものです。

例えば、売上割戻しを金銭又は事業用資産で行った場合、相手方収益に計上されて課税が確保されているから支出した側では交際費等としません。これに対して事業用資産以外の資産の交付では相手方において課税が確保されているとは限らず、飲食の接待等についてはその経済的利益が課税されないから、支出する側で交際費課税をするというものでした。

例えば、昭和45年当時の税の専門誌には、次のような解説がありました。

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山本守之

法人税 “一刀両断”

【第27回】

「課税要件法定主義を考える」

 

税理士 山本 守之

 

第1節 課税要件と交際費等

1 交際費の課税の趣旨

交際費課税の趣旨は、この制度が創設された当時と現在とでは大いに異なっているが、その判決例を検討してみると、依然として創設当時の古い考え方が残っているのが気にかかります。

例えば、平成15年9月9日の東京高裁における「萬有製薬事件」における判決文では、交際費課税の趣旨を次のように述べています。

 交際費は、人間の種々の欲望を満たす支出であるため、それが非課税であれば、無駄に多額に支出され、企業の資本蓄積が阻害されるおそれがあること

 営利の追求のあまり不当な支出によって、公正な取引が阻害され、ひいては価格形成に歪み等が生じること

 交際費で受益する者のみが免税で利益を得ることに対する国民一般の不公平感を防止する必要があること

確かに、この制度の創設時(昭和29年)には冗費、濫費を抑制して資本を蓄積させようという趣旨であったことは事実です。

判決文のは、いわゆる代替課税として説明されていたものです。

例えば、売上割戻しを金銭又は事業用資産で行った場合、相手方収益に計上されて課税が確保されているから支出した側では交際費等としません。これに対して事業用資産以外の資産の交付では相手方において課税が確保されているとは限らず、飲食の接待等についてはその経済的利益が課税されないから、支出する側で交際費課税をするというものでした。

例えば、昭和45年当時の税の専門誌には、次のような解説がありました。

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連載目次

山本守之の法人税“一刀両断”

筆者紹介

山本 守之

(やまもと・もりゆき)

税理士。現在、日本税務会計学会顧問、租税訴訟学会副会長(研究・提言担当)、税務会計研究学会理事、日本租税理論学会理事を務め、全国各地において講演活動を行うとともに、千葉商科大学大学院(政策研究科、博士課程)でプロジェクト・アドバイザー(専門分野の高度な学術研究、高度な実務経験を持つ有識者)として租税政策論の教鞭をとっている。研究のためOECD、EU、海外諸国の財務省、国税庁等を約30年にわたり歴訪。2020年11月29日、逝去。

【著書】
・『時事税談-人間の感性から税をみつめる』(清文社)
・『役員給与税制の問題点-規定・判例・執行面からの検討』(中央経済社)
・『検証 税法上の不確定概念 (新版)』(中央経済社)
・『裁決事例(全部取消)による役員給与・寄附金・交際費・貸倒れ・資本的支出と修繕費』(財経詳報社)
・『法人税申告の実務全書』監修(日本実業出版社)
・『法人税の理論と実務』(中央経済社)
・『体系法人税法』(税務経理協会)
・『税金力-時代とともに「税」を読む』(中央経済社)
・『租税法の基礎理論』(税務経理協会)
他、多数
 

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