「税理士損害賠償請求」
頻出事例に見る
原因・予防策のポイント
【事例128(法人税)】
保育園事業を開始するに当たり、一般社団法人の非営利型で設立すれば法人税等が課税されないところ、営利型で設立したため、法人税等が課税されてしまった事例
税理士 齋藤 和助
《事例の概要》
令和V年に一般社団法人の非営利型で保育園事業の設立相談を受けた際、非営利型で設立すれば法人税等が課税されないところ、保育園事業は収益事業に該当するものと誤認し、非営利型で設立しても法人税等は課税されると誤った説明をしたため、営利型で設立することになってしまった。これにより、設立初年度である令和W年3月期から誤りに気付く令和Z年3月期までの法人税等につき、過大納付が発生し、損害賠償請求を受けた。
《賠償請求の経緯》
- 令和V年10月
一般社団法人の非営利型での設立相談を受けた際、保育園事業は収益事業に該当するため、非営利型で設立しても法人税等は課税されると誤った説明をする。 - 令和V年12月
税理士のグループ内行政書士が営利型の定款を作成して認証を受ける。 - 令和W年1月
一般社団法人の営利型で法人設立。
法人設立関係届出書を税理士が提出。 - 令和W年5月
令和W年3月期の法人税につき保育園事業を収益計上して申告。以後令和Z年3月期まで同様に申告。 - 令和Z年6月
依頼者が同業者から保育園事業は収益事業には該当しない旨の指摘を受け、税理士が再確認し、上記ミスが発覚。今まで支払った法人税等につき損害賠償請求を受ける。
《基礎知識》
◆一般社団法人
一般社団法人とは「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」に基づき設立される法人であり、構成員として社員を必要とする。社員は出資者ではなく、単なる決議機関であり、一般社団法人に属する財産が社員に配当されることや、払戻しされることは想定されていない。ただし、目的には制限がなく、一般法人のように営利事業を行うこともできる。一般社団法人には営利型と非営利型があり、非営利型にはさらに完全非営利型と共益型の2種類がある。
◆営利型法人
営利型の一般社団法人は普通法人に該当し、全ての所得に対して法人税が課税され、適用される法人税率も一般法人と同様である。
◆非営利型法人(法2九の二)
非営利型の一般社団法人には、特定の者に利益を与えない完全非営利型と、会員共通の利益を図る活動を行う共益型の2種類があり、限定列挙された34種類の事業のみ法人税が課税される。
◆完全非営利型法人(法令3)
完全非営利型法人は、次の要件の全てを満たした法人をいう。
① 剰余金の分配を行わないことを定款に定めていること。
② 解散したときは、残余財産を国・地方公共団体や一定の公益的な団体に帰属することを定款に定めていること。
③ 上記①②の定款の定めに違反する行為(上記①②及び下記④の要件に該当していた期間において、特定の個人又は団体に特別の利益を与えることを含む)を行うことを決定し、又は行ったことがないこと。
④ 各理事について、理事とその理事の親族等である理事の合計数が、理事の総数の3分の1以下であること。
◆収益事業の範囲(法令5)
収益事業とは次に掲げる34種類の事業(その性質上その事業に付随して行われる行為を含む)とする。
物品販売業、不動産販売業、金銭貸付業、物品貸付業、不動産貸付業、製造業、 通信業、運送業、倉庫業、請負業、印刷業、出版業、写真業、席貸業、旅館業、料理飲食店業、周旋業、代理業、 仲立業、問屋業、鉱業、土石採取業、浴場業、理容業、美容業、興行業、遊技所業、遊覧所業、医療保健業、技芸教授業、駐車場業、信用保証業、無体財産権提供業、労働者派遣業
《税理士の落とし穴》
一般社団法人の非営利型での設立を望んでいたにもかかわらず、保育園事業を収益事業だと思い込んでいたため、営利型での設立に誘導してしまった。
《税理士の責任》
依頼者は令和V年に保育園事業を開始するに当たり、一般社団法人の非営利型で法人を設立したい旨の相談を行った。その際、税理士は、保育園事業は収益事業に該当するものと誤認し、非営利型で設立しても法人税等は課税されると誤った説明をしたため、営利型で設立することになってしまった。これにより、設立初年度である令和W年3月期から保育園事業を収益事業と認識して法人税等を申告していた。そして令和Z年6月に依頼者が同業者から保育園事業は収益事業に該当しない旨の指摘を受け、これを税理士に相談し、改めて調べてみたところ、収益事業に該当せず、非営利型で設立すれば法人税等の負担がなかったことが発覚した。
一般社団法人設立の相談を受けた時点で、保育園事業の内容を確認し、非営利型で設立していれば法人税等の負担は発生しなかったことから、税理士に責任がある。
《予防策》
[ポイント①]
思い込みに注意する
税理士の勝手な思い込みから、適用関係を十分に確認せず、結果として事故になっているものが多い。本事例も、保育園事業は収益事業に該当するとの思い込みから事故が発生している。勝手な思い込みはせず、常に条文等に当たるよう心がけたい。
[ポイント②]
法人設立は慎重に
本事例のように、一般社団法人等の設立を依頼された場合には、定款の内容如何によって、営利型、非営利型が決まってしまうため、行政書士等の専門家を交えて依頼者の希望や事業内容等の詳細をヒアリングするようにしたい。
(了)
「「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント」は、毎月第4週に掲載されます。























