公開日: 2016/03/24 (掲載号:No.162)
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山本守之の法人税“一刀両断” 【第21回】「土地と共に取得してから1年以内に取り壊した建物」

筆者: 山本 守之

山本守之

法人税 “一刀両断”

【第21回】

「土地と共に取得してから1年以内に取り壊した建物」

 

税理士 山本 守之

 

〔事 例〕

A社は都内に数件の旅館、ホテルを経営していますが、昨年6月に甲駅から徒歩3分の所にある中古の木造旅館用建物とその敷地を取得しました。

取得した段階では、売主は旅館として経営しており、相当数の顧客がありました。A社としては取得後も旅館として経営し続けるつもりでしたが、昨年12月頃より顧客の足がパタリと止まってしまいました。

その事情を調べてみたところ、近くに鉄筋コンクリート造りのビジネスホテルが新築開業し、顧客をとられてしまったのです。

(注) 売主はこのような事情を知っていて売却したのでしょうか。A社はこのような事情を知らなかったのです。

A社は、早速取締役会を開催し、このまま経営すれば赤字が累積することになるので本年3月に木造の建物を取り壊し、新たに鉄筋コンクリート造りのビジネスホテルを建築することとし、旧木造建築の帳簿価額1,300万円を除却損として計上しました。

 

〔税務調査とその結果〕

A社は本年5月に税務調査を受け、建物除却損1,300万円は否認され、土地の取得価額に計上するように指導を受けました。

この場合に調査官が適用したのは、次のような通達(法人税基本通達7-3-6)でした。

(土地とともに取得した建物等の取壊費等)

7-3-6 法人が建物等の存する土地(借地権を含む。以下7-3-6において同じ。)を建物等とともに取得した場合又は自己の有する土地の上に存する借地人の建物等を取得した場合において、その取得後おおむね1年以内に当該建物等の取壊しに着手する等、当初からその建物等を取り壊して土地を利用する目的であることが明らかであると認められるときは、当該建物等の取壊しの時における帳簿価額及び取壊費用の合計額(廃材等の処分によって得た金額がある場合は、当該金額を控除した金額)は、当該土地の取得価額に算入する。

この通達に関する解説(「法人税基本通達逐条解説」(国税庁課税部法人課税課課長補佐、税務研究会出版局))では次のように述べています。

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山本守之

法人税 “一刀両断”

【第21回】

「土地と共に取得してから1年以内に取り壊した建物」

 

税理士 山本 守之

 

〔事 例〕

A社は都内に数件の旅館、ホテルを経営していますが、昨年6月に甲駅から徒歩3分の所にある中古の木造旅館用建物とその敷地を取得しました。

取得した段階では、売主は旅館として経営しており、相当数の顧客がありました。A社としては取得後も旅館として経営し続けるつもりでしたが、昨年12月頃より顧客の足がパタリと止まってしまいました。

その事情を調べてみたところ、近くに鉄筋コンクリート造りのビジネスホテルが新築開業し、顧客をとられてしまったのです。

(注) 売主はこのような事情を知っていて売却したのでしょうか。A社はこのような事情を知らなかったのです。

A社は、早速取締役会を開催し、このまま経営すれば赤字が累積することになるので本年3月に木造の建物を取り壊し、新たに鉄筋コンクリート造りのビジネスホテルを建築することとし、旧木造建築の帳簿価額1,300万円を除却損として計上しました。

 

〔税務調査とその結果〕

A社は本年5月に税務調査を受け、建物除却損1,300万円は否認され、土地の取得価額に計上するように指導を受けました。

この場合に調査官が適用したのは、次のような通達(法人税基本通達7-3-6)でした。

(土地とともに取得した建物等の取壊費等)

7-3-6 法人が建物等の存する土地(借地権を含む。以下7-3-6において同じ。)を建物等とともに取得した場合又は自己の有する土地の上に存する借地人の建物等を取得した場合において、その取得後おおむね1年以内に当該建物等の取壊しに着手する等、当初からその建物等を取り壊して土地を利用する目的であることが明らかであると認められるときは、当該建物等の取壊しの時における帳簿価額及び取壊費用の合計額(廃材等の処分によって得た金額がある場合は、当該金額を控除した金額)は、当該土地の取得価額に算入する。

この通達に関する解説(「法人税基本通達逐条解説」(国税庁課税部法人課税課課長補佐、税務研究会出版局))では次のように述べています。

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連載目次

山本守之の法人税“一刀両断”

筆者紹介

山本 守之

(やまもと・もりゆき)

税理士。現在、日本税務会計学会顧問、租税訴訟学会副会長(研究・提言担当)、税務会計研究学会理事、日本租税理論学会理事を務め、全国各地において講演活動を行うとともに、千葉商科大学大学院(政策研究科、博士課程)でプロジェクト・アドバイザー(専門分野の高度な学術研究、高度な実務経験を持つ有識者)として租税政策論の教鞭をとっている。研究のためOECD、EU、海外諸国の財務省、国税庁等を約30年にわたり歴訪。2020年11月29日、逝去。

【著書】
・『時事税談-人間の感性から税をみつめる』(清文社)
・『役員給与税制の問題点-規定・判例・執行面からの検討』(中央経済社)
・『検証 税法上の不確定概念 (新版)』(中央経済社)
・『裁決事例(全部取消)による役員給与・寄附金・交際費・貸倒れ・資本的支出と修繕費』(財経詳報社)
・『法人税申告の実務全書』監修(日本実業出版社)
・『法人税の理論と実務』(中央経済社)
・『体系法人税法』(税務経理協会)
・『税金力-時代とともに「税」を読む』(中央経済社)
・『租税法の基礎理論』(税務経理協会)
他、多数
 

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