公開日: 2017/01/26 (掲載号:No.203)
文字サイズ

山本守之の法人税“一刀両断” 【第31回】「従業員が仕入先からリベートを受け取っていた事件の考え方」

筆者: 山本 守之

山本守之

法人税 “一刀両断”

【第31回】

「従業員が仕入先からリベートを受け取っていた事件の考え方」

 

税理士 山本 守之

 

1 損害賠償請求権の益金算入時期

(1) 考え方の区分

法人が他人の不法行為によって損害を受けた場合には、その損害の発生と同時に損害賠償請求権を取得しますが、その法人の課税所得の計算上、不法行為に係る損失の損金算入時期及び損害賠償請求権の益金算入時期については様々な学説があります。

不法行為等によって法人に損害が生じても、損害賠償金の収益計上時期によっては、損金と益金が相殺されてしまいます。これらに関する学説は、損失確定説、同時両建説、異時両建説、損益個別確定説があります。しかし、これらのうちキャンパスの中での論議を除くと、同時両建説と異時両建説が問題として取り上げられることが多いようです。

【同時両建説】
損失の額を損金の額に計上するとともに、その見返りとして同時に取得した損害賠償請求権を益金の額に算入して損益の相殺処理を行い、後日、損害賠償請求権が行使できなくなった時に損害賠償請求権相当額を損金の額に算入するというものである。

【異時両建説】
被害法人(者)の損失と損害賠償請求権は、両者の相互関連性を切り離し、それぞれ(損失と損害賠償請求権)が各個独立に確定した時点で損失又は収益の額に計上すべきであるという見解である。

このうち「同時両建説」は、「損害の発生とこれを補てんすべき損害賠償という2つの事象を法律的に結びつけるところから出てくるもので、民事上の法的基準を重視する立場からすれば、一見しごく当然のことのようである。」(渡辺淑夫『法人税解釈の実務』)という見解があります。

これに対して「異時両建説」は「損害の発生による損失は損失としてその発生時点で計上し、損害賠償金収入はこれと切り離してその支払いを受けるべきことが確定した時点で収益計上すれば足りるとするものである。」(前掲書)という見解があります。

この記事全文をご覧いただくには、プロフェッションネットワークの会員(プレミアム
会員又は一般会員)としてのログインが必要です。
通常、Profession Journalはプレミアム会員専用の閲覧サービスですので、プレミアム
会員のご登録をおすすめします。
プレミアム会員の方は下記ボタンからログインしてください。

プレミアム会員のご登録がお済みでない方は、下記ボタンから「プレミアム会員」を選択の上、お手続きください。

山本守之

法人税 “一刀両断”

【第31回】

「従業員が仕入先からリベートを受け取っていた事件の考え方」

 

税理士 山本 守之

 

1 損害賠償請求権の益金算入時期

(1) 考え方の区分

法人が他人の不法行為によって損害を受けた場合には、その損害の発生と同時に損害賠償請求権を取得しますが、その法人の課税所得の計算上、不法行為に係る損失の損金算入時期及び損害賠償請求権の益金算入時期については様々な学説があります。

不法行為等によって法人に損害が生じても、損害賠償金の収益計上時期によっては、損金と益金が相殺されてしまいます。これらに関する学説は、損失確定説、同時両建説、異時両建説、損益個別確定説があります。しかし、これらのうちキャンパスの中での論議を除くと、同時両建説と異時両建説が問題として取り上げられることが多いようです。

【同時両建説】
損失の額を損金の額に計上するとともに、その見返りとして同時に取得した損害賠償請求権を益金の額に算入して損益の相殺処理を行い、後日、損害賠償請求権が行使できなくなった時に損害賠償請求権相当額を損金の額に算入するというものである。

【異時両建説】
被害法人(者)の損失と損害賠償請求権は、両者の相互関連性を切り離し、それぞれ(損失と損害賠償請求権)が各個独立に確定した時点で損失又は収益の額に計上すべきであるという見解である。

このうち「同時両建説」は、「損害の発生とこれを補てんすべき損害賠償という2つの事象を法律的に結びつけるところから出てくるもので、民事上の法的基準を重視する立場からすれば、一見しごく当然のことのようである。」(渡辺淑夫『法人税解釈の実務』)という見解があります。

これに対して「異時両建説」は「損害の発生による損失は損失としてその発生時点で計上し、損害賠償金収入はこれと切り離してその支払いを受けるべきことが確定した時点で収益計上すれば足りるとするものである。」(前掲書)という見解があります。

この記事全文をご覧いただくには、プロフェッションネットワークの会員(プレミアム
会員又は一般会員)としてのログインが必要です。
通常、Profession Journalはプレミアム会員専用の閲覧サービスですので、プレミアム
会員のご登録をおすすめします。
プレミアム会員の方は下記ボタンからログインしてください。

プレミアム会員のご登録がお済みでない方は、下記ボタンから「プレミアム会員」を選択の上、お手続きください。

連載目次

山本守之の法人税“一刀両断”

筆者紹介

山本 守之

(やまもと・もりゆき)

税理士。現在、日本税務会計学会顧問、租税訴訟学会副会長(研究・提言担当)、税務会計研究学会理事、日本租税理論学会理事を務め、全国各地において講演活動を行うとともに、千葉商科大学大学院(政策研究科、博士課程)でプロジェクト・アドバイザー(専門分野の高度な学術研究、高度な実務経験を持つ有識者)として租税政策論の教鞭をとっている。研究のためOECD、EU、海外諸国の財務省、国税庁等を約30年にわたり歴訪。2020年11月29日、逝去。

【著書】
・『時事税談-人間の感性から税をみつめる』(清文社)
・『役員給与税制の問題点-規定・判例・執行面からの検討』(中央経済社)
・『検証 税法上の不確定概念 (新版)』(中央経済社)
・『裁決事例(全部取消)による役員給与・寄附金・交際費・貸倒れ・資本的支出と修繕費』(財経詳報社)
・『法人税申告の実務全書』監修(日本実業出版社)
・『法人税の理論と実務』(中央経済社)
・『体系法人税法』(税務経理協会)
・『税金力-時代とともに「税」を読む』(中央経済社)
・『租税法の基礎理論』(税務経理協会)
他、多数
 

関連書籍

現代税法入門塾

石村耕治 編

入門税法

公益社団法人 全国経理教育協会 編

図解 租税法ノート

八ッ尾順一 著

徹底解説 課税上のグレーゾーン

辻・本郷税理士法人 監修 辻・本郷税理士法人 関西審理室 編 税理士 山本秀樹 著

事例で解説 法人税の損金経理

税理士 安部和彦 著

不正・誤謬を見抜く実証手続と監査実務

EY新日本有限責任監査法人 編

わたしは税金

公認会計士・税理士 鈴木基史 著

税法基本判例 Ⅰ

谷口勢津夫 著

企業法務で知っておくべき税務上の問題点100

弁護士・税理士 米倉裕樹 著 弁護士・税理士 中村和洋 著 弁護士・税理士 平松亜矢子 著 弁護士 元氏成保 著 弁護士・税理士 下尾裕 著 弁護士・税理士 永井秀人 著

法人税申告書と決算書の作成手順

税理士 杉田宗久 共著 税理士 岡野敏明 共著

仮装経理の実務対応

税理士 鈴木清孝 著

不正会計リスクにどう立ち向かうか!

公認会計士・公認不正検査士 宇澤亜弓 著

記事検索

メルマガ

メールマガジン購読をご希望の方は以下に登録してください。

#
#