山本守之の
法人税 “一刀両断”
【第31回】
「従業員が仕入先からリベートを受け取っていた事件の考え方」
税理士 山本 守之
1 損害賠償請求権の益金算入時期
(1) 考え方の区分
法人が他人の不法行為によって損害を受けた場合には、その損害の発生と同時に損害賠償請求権を取得しますが、その法人の課税所得の計算上、不法行為に係る損失の損金算入時期及び損害賠償請求権の益金算入時期については様々な学説があります。
不法行為等によって法人に損害が生じても、損害賠償金の収益計上時期によっては、損金と益金が相殺されてしまいます。これらに関する学説は、①損失確定説、②同時両建説、③異時両建説、④損益個別確定説があります。しかし、これらのうちキャンパスの中での論議を除くと、同時両建説と異時両建説が問題として取り上げられることが多いようです。
【同時両建説】
損失の額を損金の額に計上するとともに、その見返りとして同時に取得した損害賠償請求権を益金の額に算入して損益の相殺処理を行い、後日、損害賠償請求権が行使できなくなった時に損害賠償請求権相当額を損金の額に算入するというものである。
【異時両建説】
被害法人(者)の損失と損害賠償請求権は、両者の相互関連性を切り離し、それぞれ(損失と損害賠償請求権)が各個独立に確定した時点で損失又は収益の額に計上すべきであるという見解である。
このうち「同時両建説」は、「損害の発生とこれを補てんすべき損害賠償という2つの事象を法律的に結びつけるところから出てくるもので、民事上の法的基準を重視する立場からすれば、一見しごく当然のことのようである。」(渡辺淑夫『法人税解釈の実務』)という見解があります。
これに対して「異時両建説」は「損害の発生による損失は損失としてその発生時点で計上し、損害賠償金収入はこれと切り離してその支払いを受けるべきことが確定した時点で収益計上すれば足りるとするものである。」(前掲書)という見解があります。
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