〈小説〉
『所得課税第三部門にて。』
【第72話】
「民法242条と税金」
公認会計士・税理士 八ッ尾 順一
「・・・中尾統括官・・・民法の付合を知っていますか?」
浅田調査官は、ポケット六法を開きながら、尋ねる。
所得課税第三部門は、昼休みで、昼食を終えた2人しかいない。
爪楊枝をくわえていた中尾統括官は、一瞬、キョトンとする。
「・・・ふごう・・・」
中尾統括官は、呟く。
「民法242条の付合ですよ」
浅田調査官は、ポケット六法を開いて、民法242条を読む。
不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない。
(下線:筆者)
「その条文か・・・その付合なら知っている」
中尾統括官は、浅田調査官の顔を見る。
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