山本守之の
法人税 “一刀両断”
【第29回】
「取引別にみた収益の認識基準①」
税理士 山本 守之
1 棚卸資産の販売
(1) 原則基準
企業活動の中心となる商品又は製品等の棚卸資産の販売収益の額は、その引渡しのあった日の属する事業年度の益金の額に算入されます(法基通2-2-1)。
このような取扱いを置いたのは、昭和38年12月の「整備答甲」で、収益の認識基準について「法的基準」としては「所有権の移転又は役務提供があったとき」としながら、「具体的運用」は「引渡し又は同時履行の抗弁権を失ったとき」としているからです。
税法の法的基準としては、収益の認識基準を「所有権が移転した時」という基準は譲れないが、所得権の移転を「売りましょう」「買いましょう」という意思主義により民法の考え方とするときは、このような法的基準にならざるを得ないでしょう。しかし、品物を引き渡さない段階で代金を請求すると、買い手は「品物を引き渡さない限り代金は払わない」と同時履行の抗弁権を使うでしょう。
このため、通達では収益計上の原則を「引渡基準」としたのです。
ところで、この場合の「引渡し」をどのように認識するかが問題です。
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