山本守之の
法人税 “一刀両断”
【第33回】
「パーティー費用と祝金・会費」
税理士 山本 守之
1 パーティー費用とお祝金
【事 例】
法人が創立〇周年等を記念したパーティーを催した場合に、支出したパーティー費用から招待客の持参した祝金を控除して交際費等の額を計算すべきか、又はパーティー費用の総額を交際費等とし、収受した祝金は雑益とすべきか。
裁決例、判決例では祝金控除は否定されていますが、一部の識者の間では祝金を控除すべきであるという主張もあります。
例えば、日税研論集第11号(武田昌輔氏稿)では、「創立何十周年等の祝賀パーティーの費用が交際費等に該当することはいうまでもないが、これに伴い収受した祝金を控除するかどうかである。私見としてはこれを支出交際費等から控除することが妥当であると考えるのである。」として次のような理由を挙げています。
① パーティーのためのお祝金は法律上強制はされていなくても、いわば社会的儀礼として、持参しなければならない、いわば社会的債務である。つまり、持寄的性格を有するものであって会費とみられるべきものである。
② 主催者側においても、すでに会費を招待者が持参することを前提として予算を作成しているところである。
③ 祝金は、支出側においても原則として交際費等として取り扱われているところであって、あえて、双方に対して交際費課税をすべきではない。
④ 交際費課税の趣旨からいって、このようなパーティーの費用については、あえて濫費として取り扱うとしても、そのパーティーに実際に要した費用の総額でよいはずであり、そのためには祝金を差し引くべきである。
⑤ 交際費課税の趣旨は、もともと、交際費等は費用であることを認めたうえで税法上の資本蓄積措置(企業優遇税制)に対する見返りとして採られたものであって、交際費課税は現状のような企業優遇税制が縮小されている状況からは、廃止ないし縮小すべきである。
⑥ 祝金を控除したとしても、それは企業が特別に税法上有利となるようなものではない。つまり、これを控除したとしても、課税上特別に有利になるのではなく、これが雑益として課税されることこそ不自然である。
⑦ パーティーの支出金額に対して課税し、祝金は雑益として課税するという考え方は、きわめて単純である。それは、そのパーティーの主催に支出した額は、その総額であるとして形式的に解釈し、これを譲らない。この立場に立てば、その収受した祝金は雑収入となって課税されることになる。そして、他方、会費としての収入の場合は、これを控除することを認めている。すでに述べたように、祝金は会費たる実態を備えている点からは、会費と同列にみて取り扱うことが妥当であると考える。
ただ、現実の税務執行では、祝金の支出とパーティーの開催は並列的に行われた2つの交際行為であり、祝金は記念行事の費用の一部に当てられることが予定されていたものではないので、祝金を控除すべきではないと考えられており、裁決例、判決例でもこの考え方は支持されています。
2 技報堂事件
技報堂事件における判決は次のようなものです。
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