公開日: 2017/08/24 (掲載号:No.232)
文字サイズ

山本守之の法人税“一刀両断” 【第38回】「法解釈の基礎を考える」

筆者: 山本 守之

山本守之

法人税 “一刀両断”

【第38回】

「法解釈の基礎を考える」

 

税理士 山本 守之

 

-はじめに-

租税法を解釈する場合、注意しなければならない2つの考え方があります。

1つ目は、私法と税法の考え方について「税法には税法の独自性がある。したがって、税法解釈はあくまで課税目的に従って判断するべきであり、課税目的に反する民事法上の考え方は否認してよい。」とする考え方です。

2つ目は「公法は私法上の権利義務の立場に立って存在するものであり、税法は民事法上の秩序の上に立って存在するので、税法解釈をその課税目的によって解釈することは許さるべきではない。」とする考え方です。

この2つの考え方は、国税通則法を制定する当初から存在していました。

また、租税法の中に包括的否認規定は存在して当然であるというもので、否認規定は具体的なものを明示すべきというものでした。

包括的否認規定は当初、「同族会社等の行為計算否認規定」(法132)だけでしたが、後日「組織再編成に係る行為計算否認規定」(法132の2)及び「連結納税に係る行為計算否認規定」(法132の3)が設けられました。

否認規定は適用に関して最終的な否認要件規定が必要でIBM事件では安易な否認が排除されましたが、後日否認要件を安易に定められた組織再編に関する否認規定(法132の3)を適用したヤフー事件では、その目的通りに課税されてしまいました。

本稿では、このような事件を法解釈のあり方から取り上げてみました。

 

Ⅰ 国税通則法制定時の考え方

1 国税通則法の考え方

現行の国税通則法は昭和37年4月2日に制定されたものです。この基礎となったものが、税制調査会から昭和36年7月5日に出された同法の制定に関する答申です。

この記事全文をご覧いただくには、プロフェッションネットワークの会員(プレミアム
会員又は一般会員)としてのログインが必要です。
通常、Profession Journalはプレミアム会員専用の閲覧サービスですので、プレミアム
会員のご登録をおすすめします。
プレミアム会員の方は下記ボタンからログインしてください。

プレミアム会員のご登録がお済みでない方は、下記ボタンから「プレミアム会員」を選択の上、お手続きください。

山本守之

法人税 “一刀両断”

【第38回】

「法解釈の基礎を考える」

 

税理士 山本 守之

 

-はじめに-

租税法を解釈する場合、注意しなければならない2つの考え方があります。

1つ目は、私法と税法の考え方について「税法には税法の独自性がある。したがって、税法解釈はあくまで課税目的に従って判断するべきであり、課税目的に反する民事法上の考え方は否認してよい。」とする考え方です。

2つ目は「公法は私法上の権利義務の立場に立って存在するものであり、税法は民事法上の秩序の上に立って存在するので、税法解釈をその課税目的によって解釈することは許さるべきではない。」とする考え方です。

この2つの考え方は、国税通則法を制定する当初から存在していました。

また、租税法の中に包括的否認規定は存在して当然であるというもので、否認規定は具体的なものを明示すべきというものでした。

包括的否認規定は当初、「同族会社等の行為計算否認規定」(法132)だけでしたが、後日「組織再編成に係る行為計算否認規定」(法132の2)及び「連結納税に係る行為計算否認規定」(法132の3)が設けられました。

否認規定は適用に関して最終的な否認要件規定が必要でIBM事件では安易な否認が排除されましたが、後日否認要件を安易に定められた組織再編に関する否認規定(法132の3)を適用したヤフー事件では、その目的通りに課税されてしまいました。

本稿では、このような事件を法解釈のあり方から取り上げてみました。

 

Ⅰ 国税通則法制定時の考え方

1 国税通則法の考え方

現行の国税通則法は昭和37年4月2日に制定されたものです。この基礎となったものが、税制調査会から昭和36年7月5日に出された同法の制定に関する答申です。

この記事全文をご覧いただくには、プロフェッションネットワークの会員(プレミアム
会員又は一般会員)としてのログインが必要です。
通常、Profession Journalはプレミアム会員専用の閲覧サービスですので、プレミアム
会員のご登録をおすすめします。
プレミアム会員の方は下記ボタンからログインしてください。

プレミアム会員のご登録がお済みでない方は、下記ボタンから「プレミアム会員」を選択の上、お手続きください。

連載目次

山本守之の法人税“一刀両断”

筆者紹介

山本 守之

(やまもと・もりゆき)

税理士。現在、日本税務会計学会顧問、租税訴訟学会副会長(研究・提言担当)、税務会計研究学会理事、日本租税理論学会理事を務め、全国各地において講演活動を行うとともに、千葉商科大学大学院(政策研究科、博士課程)でプロジェクト・アドバイザー(専門分野の高度な学術研究、高度な実務経験を持つ有識者)として租税政策論の教鞭をとっている。研究のためOECD、EU、海外諸国の財務省、国税庁等を約30年にわたり歴訪。2020年11月29日、逝去。

【著書】
・『時事税談-人間の感性から税をみつめる』(清文社)
・『役員給与税制の問題点-規定・判例・執行面からの検討』(中央経済社)
・『検証 税法上の不確定概念 (新版)』(中央経済社)
・『裁決事例(全部取消)による役員給与・寄附金・交際費・貸倒れ・資本的支出と修繕費』(財経詳報社)
・『法人税申告の実務全書』監修(日本実業出版社)
・『法人税の理論と実務』(中央経済社)
・『体系法人税法』(税務経理協会)
・『税金力-時代とともに「税」を読む』(中央経済社)
・『租税法の基礎理論』(税務経理協会)
他、多数
 

関連書籍

中小企業の事業承継

税理士 牧口晴一 著 名古屋商科大学大学院教授 齋藤孝一 著

現代税法入門塾

石村耕治 編

入門税法

公益社団法人 全国経理教育協会 編

図解 租税法ノート

八ッ尾順一 著

事例で解説 法人税の損金経理

税理士 安部和彦 著

わたしは税金

公認会計士・税理士 鈴木基史 著

組織再編税制大全

公認会計士・税理士 佐藤信祐 著

税法基本判例 Ⅰ

谷口勢津夫 著

社長!税務調査の事前対策してますか

公認会計士・税理士 清原裕平 著

関係者間取引の法務と税務

タックス・ロー合同研究会 編著 土森俊秀 著 角田智美 著 秋山高善 著 永竿敬子 著 滝口利子 著 鈴木 修 著

税法みなし規定の適用解釈と税務判断

税理士 野田扇三郎 著 税理士 山内利文 著 税理士 安藤孝夫 著 税理士 三木信博 著

実務必須の重要税務判例70

弁護士 菊田雅裕 著

国税調査の舞台裏

税理士 小倉敏郎 著

記事検索

メルマガ

メールマガジン購読をご希望の方は以下に登録してください。

#
#