山本守之の
法人税 “一刀両断”
【第24回】
「租税法の解釈①」
-租税法律主義とその問題点-
税理士 山本 守之
本号から3回にわたり「租税法の解釈」についての論稿を掲載します。
第1回 「租税法律主義とその問題点」
第2回 「通達の読み方とその問題点(貸倒損失を事例として)」
第3回 「税務形式基準と事実認定」
1 租税法律主義の考え方
租税の賦課、徴収は、必ず法律の根拠に基づいて行われなければなりません。
これを租税法律主義といいます。近代法治主義では、権力の分立を前提とし、公権力の行使は法律の根拠に基づいてこれを認め、それによって国民の自由と財産の保護を保障する政治及び憲法原理ですから、国民の富の一部を国家の手に移す租税の賦課、徴収は法律の根拠なくしてこれをなし得ないのです。
したがって、租税法律主義は租税における近代法治主義の表れといってよいでしょう。
日本国憲法第84条は、「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする」と規定しています。
これは、租税法律主義の諸原則のうちの課税要件法定主義を示したもので、狭義の租税法律主義と考えることもできます。
また、同法第30条では、「国民は法律の定めるところにより、納税の義務を負う」と規定しています。
憲法の下では租税法は侵害規範ですから、納付すべき租税の限界を示したものであり、納税義務はこのような租税法の性格を前提として国民が主体的、かつ、自律的に自らの生活と福祉のために税を負担することを明らかにしたと考えるべきなのでしょう。
また、租税法律主義は、取引を決断するに当たって納税者の課税予測可能性を担保する機能も持っています。
納税者は、取引を行うに当たって、その取引の結果、どの程度の税を負担するかを事前に測定することによって取引を行うか否かを決断するものです。例えば、ある取引を行うに当たって、その取引がどの程度の利益をもたらすかは、税引後の利益をもって測定します。
つまり、その取引についてどの程度の税が課され、その税を納付したとしてもその取引が利益をもたらすか否かを予測した上で取引の決断をするのです。
その意味からすれば、租税が法律によって明確にされ、その課税要件が明らかになっていることが必要となります。
わが国の税実務の中では、法律でもない「通達」が幅を効かせており、通達で課税要件を規定するのを当然と考える向きがありますが、これは違法です。
租税の賦課、徴収は必ず法律の根拠に基づいて行わなければならないという「租税法律主義」は、罪刑法定主義とともに近代民主主義の柱になっています。
また、租税法律主義は、取引を判断するに当たって納税者の課税予測可能性を担保する根拠を持っています。納税者は取引を行うに当たって、その取引の結果、どの程度の税を負担することになるかを事前に測定することによって取引を行うか否かを決断するのです。
2 武富士事件の考え方
租税法律主義を楯に租税回避による贈与税の課税を免れた事件(武富士事件)があります。
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