公開日: 2014/11/27 (掲載号:No.96)
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フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第11回】「リース取引(借手)」

筆者: 西田 友洋

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【STEP1】現在価値基準と経済的耐用年数基準

リース取引は大きくファインス・リース取引とオペレーティング・リース取引に分けることができる。ファイナンス・リース取引とは解約不能で、借手がリース物件からもたらされる経済的利益を実質的に享受することができ、かつ、当該リース物件の使用に伴って生じるコストを実質的に負担する(フルペイアウト)ことになるリース取引をいう(基準5)。一方、オペレーティング・リース取引とは、ファイナンス・リース取引以外のリース取引をいう(基準6)。

ファイナンス・リース取引は売買処理に準じた会計処理(基準9)を行い、オペレーティング・リース取引は賃貸借処理に準じた会計処理(基準15)を行う。それぞれで会計処理が大きく異なるため、まず、ファイナンス・リースに該当するかオペレーティング・リースに該当するかを検討する。

具体的には、「現在価値基準」「経済的耐用年数基準」いずれかを満たす場合、解約不能、かつ、フルペイアウトを満たすためファイナンス・リース取引に該当する。いずれも満たさない場合にはオペレーティング・リース取引に該当する。

(1) 現在価値基準

① 解約不能のリース期間中のリース料総額の現在価値の算定

② 見積現金購入価額の算定

③ 判定

(2) 経済的耐用年数基準

① 解約不能のリース期間の算定

② 経済的耐用年数の見積り

③ 判定

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(1) 現在価値基準

現在価値基準の判定にあたっては、「解約不能のリース期間中のリース料総額の現在価値」と「見積現金購入価額」を算定することが必要となる。

① 解約不能のリース期間中のリース料総額の現在価値の算定

解約不能のリース期間中のリース料総額の現在価値を算定する。現在価値を算定するためには、解約不能のリース期間中のリース料の集計と割引率の算定が必要である。

(ⅰ) 解約不能のリース期間中のリース料の集計
全リース期間のリース料ではなく、解約不能のリース期間中のリース料を集計する(適用指針9)。ここで、解約不能のリース期間とは、リース契約書で解約不能のリース期間を明記している場合のそのリース期間や解約時に未経過のリース期間に係るリース料全額を支払う場合のそのリース期間等をいう。

再リース期間については、再リースを行う意思が明らかな場合を除き、解約不能のリース期間には含めない(適用指針11)。

また、リース料に含まれている維持管理費用相当額、通常の保守等の役務提供相当額(以下「維持管理費用相当額等」という)は、原則、リース料総額から控除するのが原則である。しかし、一般的に、契約書等で維持管理費用相当額等が明示されない場合が多く、また、当該金額はリース物件の取得価額相当額に比較して重要性が乏しい場合が少なくない。そのため、維持管理費用相当額等は、その金額がリース料に占める割合に重要性が乏しい場合、これをリース料総額から控除しないことができる(適用指針14)。

さらに、リース契約上に残価保証(リース期間終了時にリース物件の処分価額が契約上取り決めた保証価額に満たない場合に、借手がその不足額を貸手に支払う義務)の取り決めがある場合は、残価保証額をリース料総額に含める(適用指針15)。

(ⅱ) 割引率の算定
現在価値を算出するため割引率が必要となる。割引率は借手が貸手の計算利子率を知り得る場合と知り得ない場合で異なる。

(イ) 貸手の計算利子率を知り得る場合
貸手の計算利子率を知り得る場合、その貸手の計算利子率を用いる(適用指針95)。

(ロ) 貸手の計算利子率を知り得ない場合
貸手の計算利子率を知り得ない場合、借手の追加借入に適用されると合理的に見積もられる利率を用いる。例えば、以下の利率を用いる(適用指針95)。

  • リース期間と同一の期間におけるスワップレートに借手の信用スプレッドを加味した利率
  • リース期間と同一の期間の借入れを行う場合に適用される新規長期借入金等の利率

借手が貸手の計算利子率を知り得ない場合がほとんどのため、(ロ)の利率を用いることが多い。

(ⅲ) 解約不能のリース期間中のリース料総額の現在価値の算定
(ⅰ)で集計した解約不能のリース期間中のリース料を(ⅱ)で算定した割引率で割引計算を行う。

② 見積現金購入価額の算定

見積現金購入価額は、リース物件の貸手の現金購入価額又は借手に対する現金販売価額(以下、「貸手の現金購入価額等」という)が借手において明らかな場合と明らかでない場合で異なる(適用指針95)。

(ⅰ) 借手において明らかな場合は、貸手の現金購入価額等を用いる。

(ⅱ) 借手において明らかでない場合は、適当と認められる方法により現金購入価額を見積る。例えば、メーカーからの見積書等を入手して見積もることが考えられる。

貸手の現金購入価額等は、通常、借手は知り得ないため(ⅱ)を用いることが多い。

③ 判定

以下の算式で算定された割合が概ね90%以上の場合、ファイナンス・リース取引に該当する(適用指針9(1))。ファイナンス・リース取引に該当した場合、【STEP2】を検討する。

概ね90%未満の場合、次に解説する(2)の経済的耐用年数基準を検討する。なお、90 %を大きく下回る場合、フルペイアウトの要件を満たさないことから、オペレーティング・リース取引に該当する(適用指針9(2))ことになるため、(2)の検討は不要となり、【STEP7】を検討する。

なお、適用指針では「概ね90%以上」とされているため、90%未満であるからといって必ずしもファイナンス・リース取引に該当しないわけではない。例えば、89%、88%である場合など、90%未満であっても実質的にフルペイアウトと考えられる場合にはファインス・リース取引に該当する(適用指針94)。

 

(2) 経済的耐用年数基準

経済的耐用年数基準の判定にあたっては、「解約不能のリース期間」と「経済的耐用年数」を算定することが必要となる。

① 解約不能のリース期間の算定

解約不能のリース期間とは、上記(1)①(ⅰ)の解説のとおりである。なお、再リース期間については、再リースを行う意思が明らかな場合を除き、解約不能のリース期間には含めない(適用指針12)。

② 経済的耐用年数の見積り

経済的耐用年数は物理的使用可能期間ではなく経済的使用可能予測期間に見合った年数である。なお、経済的使用可能予測期間と著しい相違がある等の不合理と認められる事情のない限り、税法耐用年数を用いることができる(適用指針96)。

③ 判定

以下の算式で算定された割合が概ね75%以上の場合、ファイナンス・リース取引に該当する(適用指針9(2))。ファイナンス・リース取引に該当した場合、【STEP2】を検討する。

概ね75%未満の場合、オペレーティング・リース取引に該当することになるため、【STEP7】を検討する。

なお、適用指針では「概ね75%以上」とされているため、75%未満であるからといって必ずファイナンス・リース取引に該当しないわけではない。例えば、74%や73%である場合など、75%未満であっても実質的にフルペイアウトと考えらえる場合には、ファインス・リース取引に該当する(適用指針94)。

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フロー・チャートを使って学ぶ会計実務

【第11回】

「リース取引(借手)」

 

仰星監査法人
公認会計士 西田 友洋

 

【はじめに】

今回は、リース取引の借手の会計処理について解説する。

借手におけるリース取引の会計処理は以下の8つのSTEPで検討することになる。なお、本解説では企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」(以下「基準」という)及び企業会計基準適用指針第16号「リース取引に関する会計基準の適用指針」(以下「適用指針」という)適用前のリース取引の会計処理については解説していない。

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連載目次

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務

第1回~第30回

筆者紹介

西田 友洋

(にしだ・ともひろ)

公認会計士

2007年に、仰星監査法人に入所。
法定監査、上場準備会社向けの監査を中心に様々な業種の会計監査業務に従事する。
その他、日本公認会計士協会の中小事務所等施策調査会「監査専門部会」専門委員に就任している。
2019年7月退所。

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