公開日: 2025/11/06 (掲載号:No.643)
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法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例80】「毛皮製品の輸入及び販売業を営む株式会社に対する推計課税の是非」

筆者: 安部 和彦

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

【事例80】

「毛皮製品の輸入及び販売業を営む株式会社に対する推計課税の是非」

 

拓殖大学商学部教授
税理士 安部 和彦

 

【Q】

私は昨年地元の銀行を退職し、その後すぐに近畿地方のとある県の人口第二の都市に本社を置き、アパレル製品の輸入及び販売業を営むX株式会社(資本金2,000万円の3月決算法人)に再就職し、現在総務部長を務めております。

わが社の社長は、私がかつて勤めていた銀行の大口取引先であった中堅建設業の創業者であり、地方財界の有力者でもあるY氏の次男で、長男が建設業を継いだため、残った次男である社長は自分の趣味であるファッションとかかわる仕事がしたいということで、X社を立ち上げて今年で10年目を迎えたところです。

社長は甘やかされて育った二世特有の、変なプライドの高さが妙に鼻につくのですが、私には未だ自宅の住宅ローンと大学に通う娘の学費負担があるため、面従腹背の心持ちで日々勤務に当たっております。

さて、社長の相手以外は特に問題がなかった総務部長としての私の職務に、突然新たな難題が飛び込んできました。それは、先週から税務署の調査官が国税局の実査官を引き連れてわが社に税務調査のためやってきて、驚くべき事実が明らかになったためです。

調査官の言うところによれば、社長がわが社以外にもう一社(Z株式会社)を設立し、そこを通じてわが社の扱う製品の一部を販売しているようなのですが、わが社とZ社間の取引に関しては簡単な帳簿書類が作成されているのみで、売上や仕入れに関してそれを裏付けるような証憑が保存されていないなど、所得に関する直接的な情報が判然としないため、特にZ社の所得がどの程度であるのか分からないという事実でした。

そのため、まずはZ社の青色申告を取り消して、その後推計課税を行うしかない、と宣告されたわけです。

私のこれまでの経験上、青色申告の取消しなどというのは、脱税するような悪質な企業に限られ、わが社やZ社のような優良企業には無縁だと考えており、ましてやその後推計課税を行うなどというのはあり得ないことで、調査官の主張は極端であると憤慨しているのですが、どのように考えるのが妥当なのでしょうか、教えてください。

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法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

【事例80】

「毛皮製品の輸入及び販売業を営む株式会社に対する推計課税の是非」

 

拓殖大学商学部教授
税理士 安部 和彦

 

【Q】

私は昨年地元の銀行を退職し、その後すぐに近畿地方のとある県の人口第二の都市に本社を置き、アパレル製品の輸入及び販売業を営むX株式会社(資本金2,000万円の3月決算法人)に再就職し、現在総務部長を務めております。

わが社の社長は、私がかつて勤めていた銀行の大口取引先であった中堅建設業の創業者であり、地方財界の有力者でもあるY氏の次男で、長男が建設業を継いだため、残った次男である社長は自分の趣味であるファッションとかかわる仕事がしたいということで、X社を立ち上げて今年で10年目を迎えたところです。

社長は甘やかされて育った二世特有の、変なプライドの高さが妙に鼻につくのですが、私には未だ自宅の住宅ローンと大学に通う娘の学費負担があるため、面従腹背の心持ちで日々勤務に当たっております。

さて、社長の相手以外は特に問題がなかった総務部長としての私の職務に、突然新たな難題が飛び込んできました。それは、先週から税務署の調査官が国税局の実査官を引き連れてわが社に税務調査のためやってきて、驚くべき事実が明らかになったためです。

調査官の言うところによれば、社長がわが社以外にもう一社(Z株式会社)を設立し、そこを通じてわが社の扱う製品の一部を販売しているようなのですが、わが社とZ社間の取引に関しては簡単な帳簿書類が作成されているのみで、売上や仕入れに関してそれを裏付けるような証憑が保存されていないなど、所得に関する直接的な情報が判然としないため、特にZ社の所得がどの程度であるのか分からないという事実でした。

そのため、まずはZ社の青色申告を取り消して、その後推計課税を行うしかない、と宣告されたわけです。

私のこれまでの経験上、青色申告の取消しなどというのは、脱税するような悪質な企業に限られ、わが社やZ社のような優良企業には無縁だと考えており、ましてやその後推計課税を行うなどというのはあり得ないことで、調査官の主張は極端であると憤慨しているのですが、どのように考えるのが妥当なのでしょうか、教えてください。

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連載目次

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

▷総論

● 法人税の課税所得計算と損金経理(その1~5)

▷事例解説

● 法人税の損金経理要件をめぐる事例解説【事例1~50】

・・・  以下、順次公開 ・・・

筆者紹介

安部 和彦

(あんべ・かずひこ)

税理士
和彩総合事務所 代表社員
拓殖大学商学部教授

東京大学卒業後、平成2年、国税庁入庁。
調査査察部調査課、名古屋国税局調査部、関東信越国税局資産税課、国税庁資産税課勤務を経て、外資系会計事務所へ移り、平成18年に安部和彦税理士事務所・和彩総合事務所を開設、現在に至る。
医師・歯科医師向け税務アドバイス、相続税を含む資産税業務及び国際税務を主たる業務分野としている。
平成23年4月、国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野准教授に就任。
平成26年9月、一橋大学大学院国際企業戦略研究科経営法務専攻博士後期課程単位修得退学
平成27年3月、博士(経営法) 一橋大学
令和3年4月、国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野教授に就任。
令和5年4月、拓殖大学商学部教授に就任。

【主要著書】
・『新版 修正申告と更正の請求の対応と実務』(2025年・清文社)
・『事例で解説 法人税の損金経理』(2024年・清文社)
・『三訂版 医療・福祉施設における消費税の実務』(2023年・清文社)
・『改訂 消費税 インボイス制度導入の実務』(2023年・清文社)
・『裁判例・裁決事例に学ぶ消費税の判定誤りと実務対応』(2020年・清文社)
・『消費税 軽減税率対応とインボイス制度 導入の実務』(2019年・清文社)
・『[第三版]税務調査と質問検査権の法知識Q&A』(2017年・清文社)
・『最新判例でつかむ固定資産税の実務』(2017年・清文社)
・『新版 税務調査事例からみる役員給与の実務Q&A』(2016年・清文社)
・『要点スッキリ解説 固定資産税』(2016年・清文社)
・『Q&Aでわかる消費税軽減税率のポイント』(2016年・清文社)
・『Q&A医療法人の事業承継ガイドブック』(2015年・清文社)
・『国際課税における税務調査対策Q&A』(2014年・清文社)
・『消費税[個別対応方式・一括比例配分方式]有利選択の実務』(2013年・清文社)
・『税務調査の指摘事例からみる法人税・所得税・消費税の売上をめぐる税務』(2011年・清文社)
・『相続税調査であわてない「名義」財産の税務(第3版)』(2021年・中央経済社)
・『相続税調査であわてない不動産評価の税務』(2015年・中央経済社)
・『消費税の税務調査対策ケーススタディ』(2013年・中央経済社)
・『医療現場で知っておきたい税法の基礎知識』(2012年・税務経理協会)
・『事例でわかる病医院の税務・経営Q&A(第2版)』(2012年・税務経理協会)
・『Q&A 相続税の申告・調査・手続相談事例集』(2011年・税務経理協会)
・『ケーススタディ 中小企業のための海外取引の税務』(2020年・ぎょうせい)
・『消費税の税率構造と仕入税額控除』(2015年・白桃書房)

【ホームページ】
https://wasai-consultants.com

           

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