公開日: 2023/07/06 (掲載号:No.526)
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法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例53】「建築工事に係る簿外で支出したコンサルタント料の損金性」

筆者: 安部 和彦

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

【事例53】

「建築工事に係る簿外で支出したコンサルタント料の損金性」

 

拓殖大学商学部教授
税理士 安部 和彦

 

【Q】

私は、中国地方の政令指定都市に本社を置き総合建設業を営む株式会社X(資本金2億円で青色申告法人)において、経営企画部長を務めております。首都圏や近畿圏、中京圏といった三大都市圏の政令指定都市ほどではありませんが、中国地方の県庁所在地ではサラリーマン向けのマンション建設が堅調であり、おかげさまでわが社も常に受注工事を抱えている状況であります。

とはいえ、取引金額が大きくなる不動産については、有象無象の輩が介入して分け前をくすねようとする行為が後を絶たず、わが社の場合もその対応には苦慮しております。マンション建設の場合、その敷地として、ある程度まとまった広さの土地が必要となりますが、権利関係が複雑で当事者が多い場合、それらの意向をまとめるまでには紆余曲折があり、担当者はストレスで胃がやられるケースも珍しくありません。また、駐車場へのスムーズな通路確保や接道要件を満たすためにどうしても必要な土地を入手する目的で、その持ち主に対し相場よりも相当高い金額で売却してくれるよう依頼するケースもあります。そのため、蛇の道は蛇ということで、地方ごとに存在する不動産取引のエキスパートと称する仲介者に、コンサルタント料を支払うこともあります。

今回の税務調査で問題となったことの1つは、当該コンサルタント料の支払いのうち1件が帳簿に記載されていた内容(広告宣伝費)と異なるという点についてでした。調査官は、コンサルタント料の支払先に反面調査を行ったものの、契約書記載の住所地には会社は存在せず、また、その代表者にも会えなかったことから、その存在は架空である可能性が高く、そうなると青色申告法人である当社の場合、当該支払いには損金性はないと主張してきました。契約を行った当事者である当社不動産開発部の社員に確認したところ、確かに帳簿に記載されていた内容とは異なるものの、コンサルタント会社の代表と対面で契約を締結し、実際契約書通りの成果(土地の買収)を収めたため、コンサルタント料の支払いには実体があり、損金性は疑いがないと真っ向から反論しております。私としましては社員の肩を持ちたいところですが、税法上はどのように判断するのでしょうか、教えてください。

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法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

【事例53】

「建築工事に係る簿外で支出したコンサルタント料の損金性」

 

拓殖大学商学部教授
税理士 安部 和彦

 

【Q】

私は、中国地方の政令指定都市に本社を置き総合建設業を営む株式会社X(資本金2億円で青色申告法人)において、経営企画部長を務めております。首都圏や近畿圏、中京圏といった三大都市圏の政令指定都市ほどではありませんが、中国地方の県庁所在地ではサラリーマン向けのマンション建設が堅調であり、おかげさまでわが社も常に受注工事を抱えている状況であります。

とはいえ、取引金額が大きくなる不動産については、有象無象の輩が介入して分け前をくすねようとする行為が後を絶たず、わが社の場合もその対応には苦慮しております。マンション建設の場合、その敷地として、ある程度まとまった広さの土地が必要となりますが、権利関係が複雑で当事者が多い場合、それらの意向をまとめるまでには紆余曲折があり、担当者はストレスで胃がやられるケースも珍しくありません。また、駐車場へのスムーズな通路確保や接道要件を満たすためにどうしても必要な土地を入手する目的で、その持ち主に対し相場よりも相当高い金額で売却してくれるよう依頼するケースもあります。そのため、蛇の道は蛇ということで、地方ごとに存在する不動産取引のエキスパートと称する仲介者に、コンサルタント料を支払うこともあります。

今回の税務調査で問題となったことの1つは、当該コンサルタント料の支払いのうち1件が帳簿に記載されていた内容(広告宣伝費)と異なるという点についてでした。調査官は、コンサルタント料の支払先に反面調査を行ったものの、契約書記載の住所地には会社は存在せず、また、その代表者にも会えなかったことから、その存在は架空である可能性が高く、そうなると青色申告法人である当社の場合、当該支払いには損金性はないと主張してきました。契約を行った当事者である当社不動産開発部の社員に確認したところ、確かに帳簿に記載されていた内容とは異なるものの、コンサルタント会社の代表と対面で契約を締結し、実際契約書通りの成果(土地の買収)を収めたため、コンサルタント料の支払いには実体があり、損金性は疑いがないと真っ向から反論しております。私としましては社員の肩を持ちたいところですが、税法上はどのように判断するのでしょうか、教えてください。

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連載目次

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

▷総論

● 法人税の課税所得計算と損金経理(その1~5)

▷事例解説

● 法人税の損金経理要件をめぐる事例解説【事例1~40】

・・・  以下、順次公開 ・・・

筆者紹介

安部 和彦

(あんべ・かずひこ)

税理士
和彩総合事務所 代表社員
拓殖大学商学部教授

東京大学卒業後、平成2年、国税庁入庁。
調査査察部調査課、名古屋国税局調査部、関東信越国税局資産税課、国税庁資産税課勤務を経て、外資系会計事務所へ移り、平成18年に安部和彦税理士事務所・和彩総合事務所を開設、現在に至る。
医師・歯科医師向け税務アドバイス、相続税を含む資産税業務及び国際税務を主たる業務分野としている。
平成23年4月、国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野准教授に就任。
平成26年9月、一橋大学大学院国際企業戦略研究科経営法務専攻博士後期課程単位修得退学
平成27年3月、博士(経営法) 一橋大学
令和3年4月、国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野教授に就任。
令和5年4月、拓殖大学商学部教授に就任。

【主要著書】
・『事例で解説 法人税の損金経理』(2024年・清文社)
・『三訂版 医療・福祉施設における消費税の実務』(2023年・清文社)
・『改訂 消費税 インボイス制度導入の実務』(2023年・清文社)
・『裁判例・裁決事例に学ぶ消費税の判定誤りと実務対応』(2020年・清文社)
・『消費税 軽減税率対応とインボイス制度 導入の実務』(2019年・清文社)
・『[第三版]税務調査と質問検査権の法知識Q&A』(2017年・清文社)
・『最新判例でつかむ固定資産税の実務』(2017年・清文社)
・『新版 税務調査事例からみる役員給与の実務Q&A』(2016年・清文社)
・『要点スッキリ解説 固定資産税』(2016年・清文社)
・『Q&Aでわかる消費税軽減税率のポイント』(2016年・清文社)
・『Q&A医療法人の事業承継ガイドブック』(2015年・清文社)
・『国際課税における税務調査対策Q&A』(2014年・清文社)
・『消費税[個別対応方式・一括比例配分方式]有利選択の実務』(2013年・清文社)
・『修正申告と更正の請求の対応と実務』(2013年・清文社)
・『税務調査の指摘事例からみる法人税・所得税・消費税の売上をめぐる税務』(2011年・清文社)
・『相続税調査であわてない「名義」財産の税務(第3版)』(2021年・中央経済社)
・『相続税調査であわてない不動産評価の税務』(2015年・中央経済社)
・『消費税の税務調査対策ケーススタディ』(2013年・中央経済社)
・『医療現場で知っておきたい税法の基礎知識』(2012年・税務経理協会)
・『事例でわかる病医院の税務・経営Q&A(第2版)』(2012年・税務経理協会)
・『Q&A 相続税の申告・調査・手続相談事例集』(2011年・税務経理協会)
・『ケーススタディ 中小企業のための海外取引の税務』(2020年・ぎょうせい)
・『消費税の税率構造と仕入税額控除』(2015年・白桃書房)

【ホームページ】
https://wasai-consultants.com

             

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