公開日: 2022/03/03 (掲載号:No.459)
文字サイズ

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例39】「役員退職給与の支払時における損金算入」

筆者: 安部 和彦

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

【事例39】

「役員退職給与の支払時における損金算入」

 

国際医療福祉大学大学院教授
税理士 安部 和彦

 

【Q】

私は、中国地方において海産物の製造・販売業を営む株式会社Aにおいて経理部長を務めております。当社は大正時代に創業し、創業者のBが日本料理の味付けに必須のだしを取るのに便利な削り節を他社に先駆けて製造・販売したことから、戦前・戦後にかけてそれなりの企業規模にまで成長しました。

現在は、上場こそしていませんが、製品の品質について、日本料理のプロからご家庭まで幅広くご支持・ご愛顧をいただいておりまして、お陰様で日本全国のスーパーや百貨店に自社製品を販売しており、業界内では確固たる地位を築いているものと自負しております。

本社は創業の地である中国地方にありますが、工場は全国に3ヶ所、営業所は北海道から九州まで12ヶ所に展開しており、百貨店や駅ビルに直営店も5店舗ほど出しております。

ところで、当社は創業家のCから代々社長を出していますが、創業家は専ら経営に専念しており、自社製品の開発はたたき上げの技術者によって行われております。数年前に、このようなたたき上げの製品開発責任者である取締役Dが退任し、それに際して当社は規定に従い、退職慰労金を支払っております。Dに対する役員退職慰労金は、当社の株主総会決議を経て、取締役会でその金額等に関する決議を行うことで支払うこととなっておりましたが、あいにく取引銀行との間でトラブルがあり、メインバンクを急遽変更することになったため、当初支払う事業年度の翌事業年度に実際の支払いを行うこととなりました。

これ自体はよくあることのように思われますし、租税回避の意図など全くないばかりでなく、源泉徴収も支払時に行っております。ところが、なぜか先週来当社にやってきて税務調査を行っている調査官は、当該役員退職慰労金につき、取締役会の決議により金額が確定した事業年度の損金とすべきと主張して譲りません。当社は当然のことながら、資金繰りがついて実際に退職慰労金を支払った事業年度の損金とすべきと主張しておりますが、これでよろしいでしょうか、教えてください。

この記事全文をご覧いただくには、プロフェッションネットワークの会員(プレミアム
会員又は一般会員)としてのログインが必要です。
通常、Profession Journalはプレミアム会員専用の閲覧サービスですので、プレミアム
会員のご登録をおすすめします。
プレミアム会員の方は下記ボタンからログインしてください。

プレミアム会員のご登録がお済みでない方は、下記ボタンから「プレミアム会員」を選択の上、お手続きください。

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

【事例39】

「役員退職給与の支払時における損金算入」

 

国際医療福祉大学大学院教授
税理士 安部 和彦

 

【Q】

私は、中国地方において海産物の製造・販売業を営む株式会社Aにおいて経理部長を務めております。当社は大正時代に創業し、創業者のBが日本料理の味付けに必須のだしを取るのに便利な削り節を他社に先駆けて製造・販売したことから、戦前・戦後にかけてそれなりの企業規模にまで成長しました。

現在は、上場こそしていませんが、製品の品質について、日本料理のプロからご家庭まで幅広くご支持・ご愛顧をいただいておりまして、お陰様で日本全国のスーパーや百貨店に自社製品を販売しており、業界内では確固たる地位を築いているものと自負しております。

本社は創業の地である中国地方にありますが、工場は全国に3ヶ所、営業所は北海道から九州まで12ヶ所に展開しており、百貨店や駅ビルに直営店も5店舗ほど出しております。

ところで、当社は創業家のCから代々社長を出していますが、創業家は専ら経営に専念しており、自社製品の開発はたたき上げの技術者によって行われております。数年前に、このようなたたき上げの製品開発責任者である取締役Dが退任し、それに際して当社は規定に従い、退職慰労金を支払っております。Dに対する役員退職慰労金は、当社の株主総会決議を経て、取締役会でその金額等に関する決議を行うことで支払うこととなっておりましたが、あいにく取引銀行との間でトラブルがあり、メインバンクを急遽変更することになったため、当初支払う事業年度の翌事業年度に実際の支払いを行うこととなりました。

これ自体はよくあることのように思われますし、租税回避の意図など全くないばかりでなく、源泉徴収も支払時に行っております。ところが、なぜか先週来当社にやってきて税務調査を行っている調査官は、当該役員退職慰労金につき、取締役会の決議により金額が確定した事業年度の損金とすべきと主張して譲りません。当社は当然のことながら、資金繰りがついて実際に退職慰労金を支払った事業年度の損金とすべきと主張しておりますが、これでよろしいでしょうか、教えてください。

この記事全文をご覧いただくには、プロフェッションネットワークの会員(プレミアム
会員又は一般会員)としてのログインが必要です。
通常、Profession Journalはプレミアム会員専用の閲覧サービスですので、プレミアム
会員のご登録をおすすめします。
プレミアム会員の方は下記ボタンからログインしてください。

プレミアム会員のご登録がお済みでない方は、下記ボタンから「プレミアム会員」を選択の上、お手続きください。

連載目次

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

▷総論

● 法人税の課税所得計算と損金経理(その1~5)

▷事例解説

● 法人税の損金経理要件をめぐる事例解説【事例1~50】

・・・  以下、順次公開 ・・・

筆者紹介

安部 和彦

(あんべ・かずひこ)

税理士
和彩総合事務所 代表社員
拓殖大学商学部教授

東京大学卒業後、平成2年、国税庁入庁。
調査査察部調査課、名古屋国税局調査部、関東信越国税局資産税課、国税庁資産税課勤務を経て、外資系会計事務所へ移り、平成18年に安部和彦税理士事務所・和彩総合事務所を開設、現在に至る。
医師・歯科医師向け税務アドバイス、相続税を含む資産税業務及び国際税務を主たる業務分野としている。
平成23年4月、国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野准教授に就任。
平成26年9月、一橋大学大学院国際企業戦略研究科経営法務専攻博士後期課程単位修得退学
平成27年3月、博士(経営法) 一橋大学
令和3年4月、国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野教授に就任。
令和5年4月、拓殖大学商学部教授に就任。

【主要著書】
・『事例で解説 法人税の損金経理』(2024年・清文社)
・『三訂版 医療・福祉施設における消費税の実務』(2023年・清文社)
・『改訂 消費税 インボイス制度導入の実務』(2023年・清文社)
・『裁判例・裁決事例に学ぶ消費税の判定誤りと実務対応』(2020年・清文社)
・『消費税 軽減税率対応とインボイス制度 導入の実務』(2019年・清文社)
・『[第三版]税務調査と質問検査権の法知識Q&A』(2017年・清文社)
・『最新判例でつかむ固定資産税の実務』(2017年・清文社)
・『新版 税務調査事例からみる役員給与の実務Q&A』(2016年・清文社)
・『要点スッキリ解説 固定資産税』(2016年・清文社)
・『Q&Aでわかる消費税軽減税率のポイント』(2016年・清文社)
・『Q&A医療法人の事業承継ガイドブック』(2015年・清文社)
・『国際課税における税務調査対策Q&A』(2014年・清文社)
・『消費税[個別対応方式・一括比例配分方式]有利選択の実務』(2013年・清文社)
・『修正申告と更正の請求の対応と実務』(2013年・清文社)
・『税務調査の指摘事例からみる法人税・所得税・消費税の売上をめぐる税務』(2011年・清文社)
・『相続税調査であわてない「名義」財産の税務(第3版)』(2021年・中央経済社)
・『相続税調査であわてない不動産評価の税務』(2015年・中央経済社)
・『消費税の税務調査対策ケーススタディ』(2013年・中央経済社)
・『医療現場で知っておきたい税法の基礎知識』(2012年・税務経理協会)
・『事例でわかる病医院の税務・経営Q&A(第2版)』(2012年・税務経理協会)
・『Q&A 相続税の申告・調査・手続相談事例集』(2011年・税務経理協会)
・『ケーススタディ 中小企業のための海外取引の税務』(2020年・ぎょうせい)
・『消費税の税率構造と仕入税額控除』(2015年・白桃書房)

【ホームページ】
https://wasai-consultants.com

             

関連書籍

法人税事例選集

公認会計士・税理士 森田政夫 共著 公認会計士・税理士 西尾宇一郎 共著

重点解説 法人税申告の実務

公認会計士・税理士 鈴木基史 著

「税関の税務調査」と消費税の更正の請求

税理士 八ッ尾順一 監修 税理士 杉澤雄一 著

演習法人税法

公益社団法人 全国経理教育協会 編

【電子書籍版】法人税事例選集

公認会計士・税理士 森田政夫 共著 公認会計士・税理士 西尾宇一郎 共著

事例で解説 法人税の損金経理

税理士 安部和彦 著

原価計算の税務

税理士 鈴木清孝 著

税法基本判例 Ⅰ

谷口勢津夫 著

経営危機に陥った社長さんを守る最後の救済策

公認会計士・税理士 橋口貢一 著

社長!税務調査の事前対策してますか

公認会計士・税理士 清原裕平 著

企業戦略としての役員報酬

弁護士 中西和幸 著

法人の不良債権処理と税務の対応

税理士 内山 裕 著

上手な「値上げ」の仕方・考え方

公認会計士 石王丸香菜子 著

経営危機における企業判断と実務対応

須藤英章 監修 東京富士法律事務所 編著
#