公開日: 2023/06/01 (掲載号:No.521)
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法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例52】「請負契約により取得した機械装置の取得時期」

筆者: 安部 和彦

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

【事例52】

「請負契約により取得した機械装置の取得時期」

 

拓殖大学商学部教授
税理士 安部 和彦

 

【Q】

私は、中部地方において自動車部品の製造業を営む株式会社A(資本金20億円で3月決算)において、経理部長を務めております。中部地方にはわが国を代表する自動車メーカーの工場が多数存在しており、わが社もそれらに属する担当者から要求される厳しい品質基準とコスト管理に音を上げつつも、何とか食らいついて、これまで事業を維持することができてきたところです。

自動車業界は技術革新のスピードが極めて速く、完成品メーカーにその部品を納入する下請けも常にそのような流れの中で、最新の技術に見合う品質と、それと相反する「リーズナブルな」コストとを両立した製品を製造し続けることが求められています。そのため、わが社を取り巻く経済環境が厳しい中、将来の自社の収益源を維持・開拓するため、設備投資への資金投入には余念がないところであります。

そんな中、先日来受けている税務調査でわが社が過去に行った設備投資に関し、調査官から問題が提起されています。すなわち、自動車の完成品メーカーからの要請で、一昨年の事業年度(X1年3月31日決算)終了間際において、新たに納入することとなった部品を製造するのに必要な工作機械を導入したのですが、その導入のタイミングに係る経理処理が間違っていると指摘されました。

わが社は、メーカーの要請に1日でも早く応えるため、事業年度末に近いX1年3月30日に機械の据付工事を終え、直ちにサンプルとなる部品の製造を開始し、翌事業年度であるX1年4月3日にはその第1弾を相手方に提供しております。したがって、わが社の経理上の処理としては、据付工事を終え部品の製造を開始したX1年3月期において当該機械装置に係る減価償却費を損金に計上しております。ところが、調査官は、納入メーカーによる据付工事はX1年3月30日に終了しているとしても、その試運転により当該機械に期待される性能の発揮をわが社が確認したのは早くてX1年4月1日以降であり、事業年度末であるX1年3月31日において機械を取得したというための要件である検収を終えていないため、当該事業年度において減価償却費を損金に計上することはできないと主張しております。このような場合、当該機械装置の取得時期及び減価償却費の損金計上のタイミングはどうなるのでしょうか、教えてください。

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法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

【事例52】

「請負契約により取得した機械装置の取得時期」

 

拓殖大学商学部教授
税理士 安部 和彦

 

【Q】

私は、中部地方において自動車部品の製造業を営む株式会社A(資本金20億円で3月決算)において、経理部長を務めております。中部地方にはわが国を代表する自動車メーカーの工場が多数存在しており、わが社もそれらに属する担当者から要求される厳しい品質基準とコスト管理に音を上げつつも、何とか食らいついて、これまで事業を維持することができてきたところです。

自動車業界は技術革新のスピードが極めて速く、完成品メーカーにその部品を納入する下請けも常にそのような流れの中で、最新の技術に見合う品質と、それと相反する「リーズナブルな」コストとを両立した製品を製造し続けることが求められています。そのため、わが社を取り巻く経済環境が厳しい中、将来の自社の収益源を維持・開拓するため、設備投資への資金投入には余念がないところであります。

そんな中、先日来受けている税務調査でわが社が過去に行った設備投資に関し、調査官から問題が提起されています。すなわち、自動車の完成品メーカーからの要請で、一昨年の事業年度(X1年3月31日決算)終了間際において、新たに納入することとなった部品を製造するのに必要な工作機械を導入したのですが、その導入のタイミングに係る経理処理が間違っていると指摘されました。

わが社は、メーカーの要請に1日でも早く応えるため、事業年度末に近いX1年3月30日に機械の据付工事を終え、直ちにサンプルとなる部品の製造を開始し、翌事業年度であるX1年4月3日にはその第1弾を相手方に提供しております。したがって、わが社の経理上の処理としては、据付工事を終え部品の製造を開始したX1年3月期において当該機械装置に係る減価償却費を損金に計上しております。ところが、調査官は、納入メーカーによる据付工事はX1年3月30日に終了しているとしても、その試運転により当該機械に期待される性能の発揮をわが社が確認したのは早くてX1年4月1日以降であり、事業年度末であるX1年3月31日において機械を取得したというための要件である検収を終えていないため、当該事業年度において減価償却費を損金に計上することはできないと主張しております。このような場合、当該機械装置の取得時期及び減価償却費の損金計上のタイミングはどうなるのでしょうか、教えてください。

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連載目次

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

▷総論

● 法人税の課税所得計算と損金経理(その1~5)

▷事例解説

● 法人税の損金経理要件をめぐる事例解説【事例1~40】

・・・  以下、順次公開 ・・・

筆者紹介

安部 和彦

(あんべ・かずひこ)

税理士
和彩総合事務所 代表社員
拓殖大学商学部教授

東京大学卒業後、平成2年、国税庁入庁。
調査査察部調査課、名古屋国税局調査部、関東信越国税局資産税課、国税庁資産税課勤務を経て、外資系会計事務所へ移り、平成18年に安部和彦税理士事務所・和彩総合事務所を開設、現在に至る。
医師・歯科医師向け税務アドバイス、相続税を含む資産税業務及び国際税務を主たる業務分野としている。
平成23年4月、国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野准教授に就任。
平成26年9月、一橋大学大学院国際企業戦略研究科経営法務専攻博士後期課程単位修得退学
平成27年3月、博士(経営法) 一橋大学
令和3年4月、国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野教授に就任。
令和5年4月、拓殖大学商学部教授に就任。

【主要著書】
・『事例で解説 法人税の損金経理』(2024年・清文社)
・『三訂版 医療・福祉施設における消費税の実務』(2023年・清文社)
・『改訂 消費税 インボイス制度導入の実務』(2023年・清文社)
・『裁判例・裁決事例に学ぶ消費税の判定誤りと実務対応』(2020年・清文社)
・『消費税 軽減税率対応とインボイス制度 導入の実務』(2019年・清文社)
・『[第三版]税務調査と質問検査権の法知識Q&A』(2017年・清文社)
・『最新判例でつかむ固定資産税の実務』(2017年・清文社)
・『新版 税務調査事例からみる役員給与の実務Q&A』(2016年・清文社)
・『要点スッキリ解説 固定資産税』(2016年・清文社)
・『Q&Aでわかる消費税軽減税率のポイント』(2016年・清文社)
・『Q&A医療法人の事業承継ガイドブック』(2015年・清文社)
・『国際課税における税務調査対策Q&A』(2014年・清文社)
・『消費税[個別対応方式・一括比例配分方式]有利選択の実務』(2013年・清文社)
・『修正申告と更正の請求の対応と実務』(2013年・清文社)
・『税務調査の指摘事例からみる法人税・所得税・消費税の売上をめぐる税務』(2011年・清文社)
・『相続税調査であわてない「名義」財産の税務(第3版)』(2021年・中央経済社)
・『相続税調査であわてない不動産評価の税務』(2015年・中央経済社)
・『消費税の税務調査対策ケーススタディ』(2013年・中央経済社)
・『医療現場で知っておきたい税法の基礎知識』(2012年・税務経理協会)
・『事例でわかる病医院の税務・経営Q&A(第2版)』(2012年・税務経理協会)
・『Q&A 相続税の申告・調査・手続相談事例集』(2011年・税務経理協会)
・『ケーススタディ 中小企業のための海外取引の税務』(2020年・ぎょうせい)
・『消費税の税率構造と仕入税額控除』(2015年・白桃書房)

【ホームページ】
https://wasai-consultants.com

             

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