公開日: 2024/10/03 (掲載号:No.588)
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法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例67】「医療法人が給食材料費名目で支払った金銭の損金性」

筆者: 安部 和彦

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

【事例67】

「医療法人が給食材料費名目で支払った金銭の損金性」

 

拓殖大学商学部教授
税理士 安部 和彦

 

【Q】

私は、関東地方のある県庁所在地で病院や医療関連施設を運営する医療法人X(3月決算法人)において、事務長を務めております。

ご承知の通り医療法人は営利法人と同様に法人税が課税されますが、法人の根拠法である医療法上は非営利の団体とされており、その収入の大半を占める社会保険診療報酬は公定価格で、保険診療を行っている各医療機関が勝手に価格を決定することはできないという大きな制約の中で事業を行っております。そのため、同業他医療法人との差別化を図ることは非常に困難なのですが、わが医療法人の場合、多角化によりグループ全体の収益力向上を推し進めることで、厳しい経営環境の中、何とか生き残りを目指して奮闘しているところです。

そのようなわが法人グループの血のにじむような経営努力に対し、先日来受けている税務調査で、水を差すような指摘を受け、法人の理事長は大変憤りを露わにしております。すなわち、わが法人グループの中核である病院における入院患者に対する給食事業につき、これまでグループ外部の業者に委託しておりましたが、別途理事長やその親族が出資する株式会社を通じて行うように変更したことが問題だというのです。わが法人グループの事業をどのように行おうが経営陣の裁量の範囲内であり、税務署に口出しされるいわれはないと思うのですが、税務署は「給食事業のノウハウのない法人を契約書もなく関与させるのは医療法人の悪質な利益調整であり、当該法人への支払いは寄附金に該当する」として課税すべきとし、かつ重加算税も賦課すると主張します。税務署のこのような主張は私人への不当な介入であり、重加算税の賦課などはもってのほかと考えますが、税法上はどのように考えるのでしょうか、教えてください。

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法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

【事例67】

「医療法人が給食材料費名目で支払った金銭の損金性」

 

拓殖大学商学部教授
税理士 安部 和彦

 

【Q】

私は、関東地方のある県庁所在地で病院や医療関連施設を運営する医療法人X(3月決算法人)において、事務長を務めております。

ご承知の通り医療法人は営利法人と同様に法人税が課税されますが、法人の根拠法である医療法上は非営利の団体とされており、その収入の大半を占める社会保険診療報酬は公定価格で、保険診療を行っている各医療機関が勝手に価格を決定することはできないという大きな制約の中で事業を行っております。そのため、同業他医療法人との差別化を図ることは非常に困難なのですが、わが医療法人の場合、多角化によりグループ全体の収益力向上を推し進めることで、厳しい経営環境の中、何とか生き残りを目指して奮闘しているところです。

そのようなわが法人グループの血のにじむような経営努力に対し、先日来受けている税務調査で、水を差すような指摘を受け、法人の理事長は大変憤りを露わにしております。すなわち、わが法人グループの中核である病院における入院患者に対する給食事業につき、これまでグループ外部の業者に委託しておりましたが、別途理事長やその親族が出資する株式会社を通じて行うように変更したことが問題だというのです。わが法人グループの事業をどのように行おうが経営陣の裁量の範囲内であり、税務署に口出しされるいわれはないと思うのですが、税務署は「給食事業のノウハウのない法人を契約書もなく関与させるのは医療法人の悪質な利益調整であり、当該法人への支払いは寄附金に該当する」として課税すべきとし、かつ重加算税も賦課すると主張します。税務署のこのような主張は私人への不当な介入であり、重加算税の賦課などはもってのほかと考えますが、税法上はどのように考えるのでしょうか、教えてください。

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連載目次

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

▷総論

● 法人税の課税所得計算と損金経理(その1~5)

▷事例解説

● 法人税の損金経理要件をめぐる事例解説【事例1~50】

・・・  以下、順次公開 ・・・

筆者紹介

安部 和彦

(あんべ・かずひこ)

税理士
和彩総合事務所 代表社員
拓殖大学商学部教授

東京大学卒業後、平成2年、国税庁入庁。
調査査察部調査課、名古屋国税局調査部、関東信越国税局資産税課、国税庁資産税課勤務を経て、外資系会計事務所へ移り、平成18年に安部和彦税理士事務所・和彩総合事務所を開設、現在に至る。
医師・歯科医師向け税務アドバイス、相続税を含む資産税業務及び国際税務を主たる業務分野としている。
平成23年4月、国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野准教授に就任。
平成26年9月、一橋大学大学院国際企業戦略研究科経営法務専攻博士後期課程単位修得退学
平成27年3月、博士(経営法) 一橋大学
令和3年4月、国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野教授に就任。
令和5年4月、拓殖大学商学部教授に就任。

【主要著書】
・『事例で解説 法人税の損金経理』(2024年・清文社)
・『三訂版 医療・福祉施設における消費税の実務』(2023年・清文社)
・『改訂 消費税 インボイス制度導入の実務』(2023年・清文社)
・『裁判例・裁決事例に学ぶ消費税の判定誤りと実務対応』(2020年・清文社)
・『消費税 軽減税率対応とインボイス制度 導入の実務』(2019年・清文社)
・『[第三版]税務調査と質問検査権の法知識Q&A』(2017年・清文社)
・『最新判例でつかむ固定資産税の実務』(2017年・清文社)
・『新版 税務調査事例からみる役員給与の実務Q&A』(2016年・清文社)
・『要点スッキリ解説 固定資産税』(2016年・清文社)
・『Q&Aでわかる消費税軽減税率のポイント』(2016年・清文社)
・『Q&A医療法人の事業承継ガイドブック』(2015年・清文社)
・『国際課税における税務調査対策Q&A』(2014年・清文社)
・『消費税[個別対応方式・一括比例配分方式]有利選択の実務』(2013年・清文社)
・『修正申告と更正の請求の対応と実務』(2013年・清文社)
・『税務調査の指摘事例からみる法人税・所得税・消費税の売上をめぐる税務』(2011年・清文社)
・『相続税調査であわてない「名義」財産の税務(第3版)』(2021年・中央経済社)
・『相続税調査であわてない不動産評価の税務』(2015年・中央経済社)
・『消費税の税務調査対策ケーススタディ』(2013年・中央経済社)
・『医療現場で知っておきたい税法の基礎知識』(2012年・税務経理協会)
・『事例でわかる病医院の税務・経営Q&A(第2版)』(2012年・税務経理協会)
・『Q&A 相続税の申告・調査・手続相談事例集』(2011年・税務経理協会)
・『ケーススタディ 中小企業のための海外取引の税務』(2020年・ぎょうせい)
・『消費税の税率構造と仕入税額控除』(2015年・白桃書房)

【ホームページ】
https://wasai-consultants.com

             

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