公開日: 2024/05/02 (掲載号:No.567)
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法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例62】「時価を超える対価で購入した土地を売却した場合の売上原価」

筆者: 安部 和彦

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

【事例62】

「時価を超える対価で購入した土地を売却した場合の売上原価」

 

拓殖大学商学部教授
税理士 安部 和彦

 

【Q】

私は、中国地方のある地方都市に本社を置き、不動産の賃貸や売買の仲介等を行う株式会社X(資本金1,000万円で3月決算)に勤務しており、現在経理部長を務めております。私は平成に入ってから不動産業界に入ったため、バブル崩壊前の地価高騰に伴う「おいしい時期」のことを知らない世代ですが、最近コロナ禍を抜けてようやくこの業界にも春が訪れようとしています。

東京近辺では今年は新築マンションの平均売り出し価格が1億円越えと報道されており、インバウンド需要のみならず、ダブルインカムのパワーカップルの購入意欲も引き付けているようで、私の地元とは異次元の世界ではないかとの驚きもあります。とはいえ、この流れは地方の政令指定都市にも及びつつあり、広島や岡山でもマンション価格は着実に上昇しております。

さて、そのような不動産業界の活況に水を差すかのような指摘が、先日の税務調査でありました。地元の税務署の調査官から、わが社が所有する土地の売却について異議を申し立てられたというわけです。その内容は、わが社が広島市内のある企業の社宅跡地を買収し、それをマンション業者に売却するという取引につき、当該敷地の買収価額が時価(鑑定評価額)よりも相当程度高いため、その金額をその後の売買取引の売上原価とすることはできないというものでした。

当該敷地は広島市内では希少なマンション適地であり、また、昨今の土地上昇傾向を勘案すれば、税務署がいう「時価」よりも、資本関係がなく価格に関し操作可能性が生じる余地がないと言える第三者との間の「契約価格」の方が、より公正な「市場価格」に近いと言えるものと確信しております。実際のところ、税法上はどのように考えるべきなのでしょうか、教えてください。

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法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

【事例62】

「時価を超える対価で購入した土地を売却した場合の売上原価」

 

拓殖大学商学部教授
税理士 安部 和彦

 

【Q】

私は、中国地方のある地方都市に本社を置き、不動産の賃貸や売買の仲介等を行う株式会社X(資本金1,000万円で3月決算)に勤務しており、現在経理部長を務めております。私は平成に入ってから不動産業界に入ったため、バブル崩壊前の地価高騰に伴う「おいしい時期」のことを知らない世代ですが、最近コロナ禍を抜けてようやくこの業界にも春が訪れようとしています。

東京近辺では今年は新築マンションの平均売り出し価格が1億円越えと報道されており、インバウンド需要のみならず、ダブルインカムのパワーカップルの購入意欲も引き付けているようで、私の地元とは異次元の世界ではないかとの驚きもあります。とはいえ、この流れは地方の政令指定都市にも及びつつあり、広島や岡山でもマンション価格は着実に上昇しております。

さて、そのような不動産業界の活況に水を差すかのような指摘が、先日の税務調査でありました。地元の税務署の調査官から、わが社が所有する土地の売却について異議を申し立てられたというわけです。その内容は、わが社が広島市内のある企業の社宅跡地を買収し、それをマンション業者に売却するという取引につき、当該敷地の買収価額が時価(鑑定評価額)よりも相当程度高いため、その金額をその後の売買取引の売上原価とすることはできないというものでした。

当該敷地は広島市内では希少なマンション適地であり、また、昨今の土地上昇傾向を勘案すれば、税務署がいう「時価」よりも、資本関係がなく価格に関し操作可能性が生じる余地がないと言える第三者との間の「契約価格」の方が、より公正な「市場価格」に近いと言えるものと確信しております。実際のところ、税法上はどのように考えるべきなのでしょうか、教えてください。

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連載目次

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

▷総論

● 法人税の課税所得計算と損金経理(その1~5)

▷事例解説

● 法人税の損金経理要件をめぐる事例解説【事例1~40】

・・・  以下、順次公開 ・・・

筆者紹介

安部 和彦

(あんべ・かずひこ)

税理士
和彩総合事務所 代表社員
拓殖大学商学部教授

東京大学卒業後、平成2年、国税庁入庁。
調査査察部調査課、名古屋国税局調査部、関東信越国税局資産税課、国税庁資産税課勤務を経て、外資系会計事務所へ移り、平成18年に安部和彦税理士事務所・和彩総合事務所を開設、現在に至る。
医師・歯科医師向け税務アドバイス、相続税を含む資産税業務及び国際税務を主たる業務分野としている。
平成23年4月、国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野准教授に就任。
平成26年9月、一橋大学大学院国際企業戦略研究科経営法務専攻博士後期課程単位修得退学
平成27年3月、博士(経営法) 一橋大学
令和3年4月、国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野教授に就任。
令和5年4月、拓殖大学商学部教授に就任。

【主要著書】
・『事例で解説 法人税の損金経理』(2024年・清文社)
・『三訂版 医療・福祉施設における消費税の実務』(2023年・清文社)
・『改訂 消費税 インボイス制度導入の実務』(2023年・清文社)
・『裁判例・裁決事例に学ぶ消費税の判定誤りと実務対応』(2020年・清文社)
・『消費税 軽減税率対応とインボイス制度 導入の実務』(2019年・清文社)
・『[第三版]税務調査と質問検査権の法知識Q&A』(2017年・清文社)
・『最新判例でつかむ固定資産税の実務』(2017年・清文社)
・『新版 税務調査事例からみる役員給与の実務Q&A』(2016年・清文社)
・『要点スッキリ解説 固定資産税』(2016年・清文社)
・『Q&Aでわかる消費税軽減税率のポイント』(2016年・清文社)
・『Q&A医療法人の事業承継ガイドブック』(2015年・清文社)
・『国際課税における税務調査対策Q&A』(2014年・清文社)
・『消費税[個別対応方式・一括比例配分方式]有利選択の実務』(2013年・清文社)
・『修正申告と更正の請求の対応と実務』(2013年・清文社)
・『税務調査の指摘事例からみる法人税・所得税・消費税の売上をめぐる税務』(2011年・清文社)
・『相続税調査であわてない「名義」財産の税務(第3版)』(2021年・中央経済社)
・『相続税調査であわてない不動産評価の税務』(2015年・中央経済社)
・『消費税の税務調査対策ケーススタディ』(2013年・中央経済社)
・『医療現場で知っておきたい税法の基礎知識』(2012年・税務経理協会)
・『事例でわかる病医院の税務・経営Q&A(第2版)』(2012年・税務経理協会)
・『Q&A 相続税の申告・調査・手続相談事例集』(2011年・税務経理協会)
・『ケーススタディ 中小企業のための海外取引の税務』(2020年・ぎょうせい)
・『消費税の税率構造と仕入税額控除』(2015年・白桃書房)

【ホームページ】
https://wasai-consultants.com

             

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