公開日: 2020/02/06 (掲載号:No.355)
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法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例14】「分掌変更により支払う役員退職給与の損金性」

筆者: 安部 和彦

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

【事例14】

「分掌変更により支払う役員退職給与の損金性」

 

国際医療福祉大学大学院准教授
税理士 安部 和彦

 

【Q】

私は関東地方のとある県の県庁所在地で、自動車用のプラスチック製品の製造販売を行っている株式会社Xに、高校卒業後35年間勤務しており、現在経理部長を務めております。わが社は前会長Aが約50年前に創業した会社で、株式会社化した40年前からAが代表取締役を務めていました。

Aも高齢となり事業を後継者に任せるため、平成30年5月末の取締役会で、その娘婿であるBに代表取締役の地位を譲り、相談役に退きました。それに伴い、報酬の額は代表取締役の時の3分の1にまで減額されております。同時に、それまでのわが社に対する多大な貢献に報いるため、規定に基づきAに対し役員退職慰労金1億5,000万円を支給する旨を取締役会で決議し、翌月末に同額をAに対して支給したところです。株式会社Xは、平成31年3月期の法人税に関し、当該役員退職慰労金を全額損金の額に算入し、確定申告書を所轄税務署に提出しております。

ところが、今般受けたわが社に対する税務調査で、Aは代表取締役退任後も引き続き相談役としてX社の経営に関与し、対内的にも対外的にもX社の経営上の重要な地位を占めているものと判断されることから、実質的にX社を退職したと同様の事情にあったとは認められないとして、Aに対する役員退職慰労金の損金算入は認められない旨を調査官から伝えられました。

わが社は今回のAの相談役就任による役員退職慰労金の支給について、代表権の返上や報酬の激減といった事実を踏まえ、法人税基本通達9-2-32を根拠に、具体的には、「その分掌変更等によりその役員としての地位又は職務の内容が激変し、実質的に退職したと同様の事情にあると認められることによるものである場合」に該当するため、損金算入可能な退職給与として取り扱うべきと考えていることから、調査官の指摘は到底納得いくものではありません。経営陣とも相談の上訴訟も辞さない覚悟ですが、我々の主張が認められる余地はあるのでしょうか、教えてください。

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法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

【事例14】

「分掌変更により支払う役員退職給与の損金性」

 

国際医療福祉大学大学院准教授
税理士 安部 和彦

 

【Q】

私は関東地方のとある県の県庁所在地で、自動車用のプラスチック製品の製造販売を行っている株式会社Xに、高校卒業後35年間勤務しており、現在経理部長を務めております。わが社は前会長Aが約50年前に創業した会社で、株式会社化した40年前からAが代表取締役を務めていました。

Aも高齢となり事業を後継者に任せるため、平成30年5月末の取締役会で、その娘婿であるBに代表取締役の地位を譲り、相談役に退きました。それに伴い、報酬の額は代表取締役の時の3分の1にまで減額されております。同時に、それまでのわが社に対する多大な貢献に報いるため、規定に基づきAに対し役員退職慰労金1億5,000万円を支給する旨を取締役会で決議し、翌月末に同額をAに対して支給したところです。株式会社Xは、平成31年3月期の法人税に関し、当該役員退職慰労金を全額損金の額に算入し、確定申告書を所轄税務署に提出しております。

ところが、今般受けたわが社に対する税務調査で、Aは代表取締役退任後も引き続き相談役としてX社の経営に関与し、対内的にも対外的にもX社の経営上の重要な地位を占めているものと判断されることから、実質的にX社を退職したと同様の事情にあったとは認められないとして、Aに対する役員退職慰労金の損金算入は認められない旨を調査官から伝えられました。

わが社は今回のAの相談役就任による役員退職慰労金の支給について、代表権の返上や報酬の激減といった事実を踏まえ、法人税基本通達9-2-32を根拠に、具体的には、「その分掌変更等によりその役員としての地位又は職務の内容が激変し、実質的に退職したと同様の事情にあると認められることによるものである場合」に該当するため、損金算入可能な退職給与として取り扱うべきと考えていることから、調査官の指摘は到底納得いくものではありません。経営陣とも相談の上訴訟も辞さない覚悟ですが、我々の主張が認められる余地はあるのでしょうか、教えてください。

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連載目次

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

▷総論

● 法人税の課税所得計算と損金経理(その1~5)

▷事例解説

● 法人税の損金経理要件をめぐる事例解説【事例1~40】

・・・  以下、順次公開 ・・・

筆者紹介

安部 和彦

(あんべ・かずひこ)

税理士
和彩総合事務所 代表社員
拓殖大学商学部教授

東京大学卒業後、平成2年、国税庁入庁。
調査査察部調査課、名古屋国税局調査部、関東信越国税局資産税課、国税庁資産税課勤務を経て、外資系会計事務所へ移り、平成18年に安部和彦税理士事務所・和彩総合事務所を開設、現在に至る。
医師・歯科医師向け税務アドバイス、相続税を含む資産税業務及び国際税務を主たる業務分野としている。
平成23年4月、国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野准教授に就任。
平成26年9月、一橋大学大学院国際企業戦略研究科経営法務専攻博士後期課程単位修得退学
平成27年3月、博士(経営法) 一橋大学
令和3年4月、国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野教授に就任。
令和5年4月、拓殖大学商学部教授に就任。

【主要著書】
・『事例で解説 法人税の損金経理』(2024年・清文社)
・『三訂版 医療・福祉施設における消費税の実務』(2023年・清文社)
・『改訂 消費税 インボイス制度導入の実務』(2023年・清文社)
・『裁判例・裁決事例に学ぶ消費税の判定誤りと実務対応』(2020年・清文社)
・『消費税 軽減税率対応とインボイス制度 導入の実務』(2019年・清文社)
・『[第三版]税務調査と質問検査権の法知識Q&A』(2017年・清文社)
・『最新判例でつかむ固定資産税の実務』(2017年・清文社)
・『新版 税務調査事例からみる役員給与の実務Q&A』(2016年・清文社)
・『要点スッキリ解説 固定資産税』(2016年・清文社)
・『Q&Aでわかる消費税軽減税率のポイント』(2016年・清文社)
・『Q&A医療法人の事業承継ガイドブック』(2015年・清文社)
・『国際課税における税務調査対策Q&A』(2014年・清文社)
・『消費税[個別対応方式・一括比例配分方式]有利選択の実務』(2013年・清文社)
・『修正申告と更正の請求の対応と実務』(2013年・清文社)
・『税務調査の指摘事例からみる法人税・所得税・消費税の売上をめぐる税務』(2011年・清文社)
・『相続税調査であわてない「名義」財産の税務(第3版)』(2021年・中央経済社)
・『相続税調査であわてない不動産評価の税務』(2015年・中央経済社)
・『消費税の税務調査対策ケーススタディ』(2013年・中央経済社)
・『医療現場で知っておきたい税法の基礎知識』(2012年・税務経理協会)
・『事例でわかる病医院の税務・経営Q&A(第2版)』(2012年・税務経理協会)
・『Q&A 相続税の申告・調査・手続相談事例集』(2011年・税務経理協会)
・『ケーススタディ 中小企業のための海外取引の税務』(2020年・ぎょうせい)
・『消費税の税率構造と仕入税額控除』(2015年・白桃書房)

【ホームページ】
https://wasai-consultants.com

             

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