公開日: 2020/11/05 (掲載号:No.393)
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法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例23】「土地建物を一括で購入した場合の建物の取得価額と減価償却費」

筆者: 安部 和彦

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

【事例23】

「土地建物を一括で購入した場合の建物の取得価額と減価償却費」

 

国際医療福祉大学大学院准教授
税理士 安部 和彦

 

【Q】

私は、10年ほど前に親から引き継いだ不動産を元手に脱サラして、現在株式会社形態で不動産賃貸業を営む者です。当初は親から引き継いだ貸しビルや賃貸マンションの賃貸借契約を管理するだけの単純な業務でしたが、取引先である信用金庫からの強い要望もあり、当該不動産を担保に融資を受け、新たに都内の駅近マンションや一戸建てをいくつか購入することで、法人の資産を順調に増加させているところです。

最近購入した不動産のうち半数くらいの売主は法人である不動産業者でしたが、残りの半数くらいの売主は個人でした。売主が法人の場合、マンションにしても一戸建てにしても、消費税の金額を明示するため、売買契約書に建物(消費税課税)と土地(敷地部分・消費税非課税)の対価をそれぞれ別に表示してありましたが、売主が個人の場合には、土地建物を一括でいくらと表示してあり、それぞれいくらであるのか売買契約書上は分からない状況にあります。しかし、弊社の法人税の申告上、建物については減価償却を行う必要があるため、その取得価額を決定する必要があります。

そこで、不動産鑑定士に相談したところ、どの物件も駅から徒歩圏内と立地が良いことから、建物の月額賃料を基に評価するのがよいのではないかとのアドバイスを得ました。それに従って土地建物を一括購入したある物件(借地権付建物、取得価額合計額1億8,000万円)を評価したところ、以下のような評価額(下記表のうちの)となりました。

〇 借地権付建物の評価額内訳
借地権 建物 合計 ① 月額賃料に基づく評価額 6,000万円 1億2,000万円 1億8,000万円 ② 固定資産税評価額 3,800万円 2,200万円 6,000万円 ③ ②に基づく按分額 1億1,400万円 6,600万円 1億8,000万円

ところが先日受けた税務調査で、税務署の調査官は、減価償却費計算の基礎となる建物の取得価額は、建物及び借地権の各固定資産税評価額の価額の比を基に算定した価額(上記表の)を用いるべきであり、その結果として減価償却費計上額が過大であるとして、修正申告の勧奨を行ってきました。月額賃料に基づく評価額の方が不動産の鑑定評価の観点からは理論的で、時価を反映しているものと考えますが、課税庁の主張のとおり修正すべきでしょうか、教えてください。

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法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

【事例23】

「土地建物を一括で購入した場合の建物の取得価額と減価償却費」

 

国際医療福祉大学大学院准教授
税理士 安部 和彦

 

【Q】

私は、10年ほど前に親から引き継いだ不動産を元手に脱サラして、現在株式会社形態で不動産賃貸業を営む者です。当初は親から引き継いだ貸しビルや賃貸マンションの賃貸借契約を管理するだけの単純な業務でしたが、取引先である信用金庫からの強い要望もあり、当該不動産を担保に融資を受け、新たに都内の駅近マンションや一戸建てをいくつか購入することで、法人の資産を順調に増加させているところです。

最近購入した不動産のうち半数くらいの売主は法人である不動産業者でしたが、残りの半数くらいの売主は個人でした。売主が法人の場合、マンションにしても一戸建てにしても、消費税の金額を明示するため、売買契約書に建物(消費税課税)と土地(敷地部分・消費税非課税)の対価をそれぞれ別に表示してありましたが、売主が個人の場合には、土地建物を一括でいくらと表示してあり、それぞれいくらであるのか売買契約書上は分からない状況にあります。しかし、弊社の法人税の申告上、建物については減価償却を行う必要があるため、その取得価額を決定する必要があります。

そこで、不動産鑑定士に相談したところ、どの物件も駅から徒歩圏内と立地が良いことから、建物の月額賃料を基に評価するのがよいのではないかとのアドバイスを得ました。それに従って土地建物を一括購入したある物件(借地権付建物、取得価額合計額1億8,000万円)を評価したところ、以下のような評価額(下記表のうちの)となりました。

〇 借地権付建物の評価額内訳
借地権 建物 合計 ① 月額賃料に基づく評価額 6,000万円 1億2,000万円 1億8,000万円 ② 固定資産税評価額 3,800万円 2,200万円 6,000万円 ③ ②に基づく按分額 1億1,400万円 6,600万円 1億8,000万円

ところが先日受けた税務調査で、税務署の調査官は、減価償却費計算の基礎となる建物の取得価額は、建物及び借地権の各固定資産税評価額の価額の比を基に算定した価額(上記表の)を用いるべきであり、その結果として減価償却費計上額が過大であるとして、修正申告の勧奨を行ってきました。月額賃料に基づく評価額の方が不動産の鑑定評価の観点からは理論的で、時価を反映しているものと考えますが、課税庁の主張のとおり修正すべきでしょうか、教えてください。

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連載目次

法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

▷総論

● 法人税の課税所得計算と損金経理(その1~5)

▷事例解説

● 法人税の損金経理要件をめぐる事例解説【事例1~40】

・・・  以下、順次公開 ・・・

筆者紹介

安部 和彦

(あんべ・かずひこ)

税理士
和彩総合事務所 代表社員
拓殖大学商学部教授

東京大学卒業後、平成2年、国税庁入庁。
調査査察部調査課、名古屋国税局調査部、関東信越国税局資産税課、国税庁資産税課勤務を経て、外資系会計事務所へ移り、平成18年に安部和彦税理士事務所・和彩総合事務所を開設、現在に至る。
医師・歯科医師向け税務アドバイス、相続税を含む資産税業務及び国際税務を主たる業務分野としている。
平成23年4月、国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野准教授に就任。
平成26年9月、一橋大学大学院国際企業戦略研究科経営法務専攻博士後期課程単位修得退学
平成27年3月、博士(経営法) 一橋大学
令和3年4月、国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野教授に就任。
令和5年4月、拓殖大学商学部教授に就任。

【主要著書】
・『事例で解説 法人税の損金経理』(2024年・清文社)
・『三訂版 医療・福祉施設における消費税の実務』(2023年・清文社)
・『改訂 消費税 インボイス制度導入の実務』(2023年・清文社)
・『裁判例・裁決事例に学ぶ消費税の判定誤りと実務対応』(2020年・清文社)
・『消費税 軽減税率対応とインボイス制度 導入の実務』(2019年・清文社)
・『[第三版]税務調査と質問検査権の法知識Q&A』(2017年・清文社)
・『最新判例でつかむ固定資産税の実務』(2017年・清文社)
・『新版 税務調査事例からみる役員給与の実務Q&A』(2016年・清文社)
・『要点スッキリ解説 固定資産税』(2016年・清文社)
・『Q&Aでわかる消費税軽減税率のポイント』(2016年・清文社)
・『Q&A医療法人の事業承継ガイドブック』(2015年・清文社)
・『国際課税における税務調査対策Q&A』(2014年・清文社)
・『消費税[個別対応方式・一括比例配分方式]有利選択の実務』(2013年・清文社)
・『修正申告と更正の請求の対応と実務』(2013年・清文社)
・『税務調査の指摘事例からみる法人税・所得税・消費税の売上をめぐる税務』(2011年・清文社)
・『相続税調査であわてない「名義」財産の税務(第3版)』(2021年・中央経済社)
・『相続税調査であわてない不動産評価の税務』(2015年・中央経済社)
・『消費税の税務調査対策ケーススタディ』(2013年・中央経済社)
・『医療現場で知っておきたい税法の基礎知識』(2012年・税務経理協会)
・『事例でわかる病医院の税務・経営Q&A(第2版)』(2012年・税務経理協会)
・『Q&A 相続税の申告・調査・手続相談事例集』(2011年・税務経理協会)
・『ケーススタディ 中小企業のための海外取引の税務』(2020年・ぎょうせい)
・『消費税の税率構造と仕入税額控除』(2015年・白桃書房)

【ホームページ】
https://wasai-consultants.com

             

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